yoga school kailas

2011年インド修行旅行記(5)

 翌朝、我々は希望と共に再びハリドワールに向けて出発しましたが、ほどなくして再び障害にぶつかりました笑。
 ある場所で、通行止めになっているのが見えます。また土砂崩れかと思っていましたが、「道がない」という情報が入ってきました笑。どういうことだろうと思って徒歩で見に行くと、なんと本当に、50メートルくらいに渡って、もともとあったアスファルトの道が、ゴソッと削られてなくなっているのです笑。そして崖の下を見ると、そのアスファルトの残骸と思われるものが落ちていました。
 土砂崩れなら土砂を取り除けばすみますが、道がなくなっているとなると、もう絶望的に思えました。しかしインド人達は逞しく、なんと重機を使って、なくなった道の上のほうに、新たな道を造り始めたのです笑! しかもそれは急ピッチで進んでいき、その日のお昼頃には開通してしまいそうな勢いでした。

 私はその作業を見ていたのですが、不思議なことに気づきました。重機には運転手と共にもう一人作業員が乗っているのですが、彼は特に何もせず、ただじっと山側を見ているのです。そして土砂を取り除く作業の影響で、上から石や土が落ちてくると、あるときは何もせず、あるときは合図を送って、重機を後退させます。つまり新たに土砂崩れが起きないか、監視する役割のようでした。
 しかしその基準が、よくわかりませんでした。というのは、けっこう激しく石などが落ちてきても逃げないのに、本当にわずかにパラパラと小石が落ちてきただけで、猛烈な勢いで重機がバックしたりするのです。何も知らずに見ている側としては、「あれくらいで逃げるなんて、臆病だなあ」という感じに見えていました。
 そしてまた、パラパラと、本当にわずかに小石が落ちてきたかと思うと、猛烈な勢いで重機がバックし始めました。「また、何でこれくらいで逃げるんだろう?」と思って見ていると、その直後、何と今まで重機がいた場所に、ものすごい
勢いでものすごい量の土砂が落ちてきたのです! もしあのまま重機がそこにいたら、運転手達は生き埋めになっていたか、崖下に落とされていたでしょう。さすがベテランの作業員たちは、石の落ち方のわずかな変化で、それが致命的な土砂崩れにつながるものかどうかをしっかり読んでいたのでした。

 しかし感心している場合ではありませんでした笑。新たに大量の土砂が落ちたおかげで、昼頃には終わりそうだった開通作業が、また振り出し、いや、振り出し以上に戻ってしまったのです笑。再び地道な作業が再開されました。

 ところでここで、Sさんの不思議な夢の話を聞きました。Sさんは以前から、ある同じ夢を繰り返し見ていたのだそうです。それは、まさにこのヒマラヤのような場所で、今回のようにまさに道がなくなっていて、そしてみんなでその道の上の方を徒歩で通って山を超えていくという夢だそうです。
 実際、インド人達は、徒歩で山越えをしている人達もいました。我々はその夢の話を聞いて、「そういうことになることもあるかもしれないなあ」くらいには思いましたが、それはあまり現実的ではないように思われました。というのは、振り出しに戻ったとはいえあと数時間すれば道は開通しそうに思えたし、またその徒歩の山越えのルートはなかなか大変そうであり、その道を行くにはバスを捨てなければなりません。また今回、日本語を話せるインド人ガイドとしてミスラさんという方を旅行会社が同行させてくれたのですが、彼はまあ責任もあるので保守的な感じで、あまりそういう冒険をしたくないような感じでした。

 そこで我々は、「そのうち通るだろう」と楽観的な感じで、このすがすがしいヒマラヤの風景を楽しみつつ、のんびりと待っていました。お昼には、全く具のないビリヤーニ(インド風炊き込みご飯)にふりかけをかけて食べたり、物売りから買ったマンゴーなどをおいしくいただきつつ。

 しかしなかなか開通作業は進まず、夕方近くなってきました。実は今回、このヒマラヤを降りたら日本に帰る予定の人達も何人かいて、彼らは明日中にデリーの空港に行かなければならないので、夜になって作業が中断し、明日以降まで作業が長引いてしまうと、日本に帰れなくなる危険性が出てきます。そこで彼らだけでも徒歩で山越えをしようかという案を画策していました。

 そして夕方、突然、事態が急転しました。徒歩の山越えに反対していたミスラさんが、「みんなが望むなら、徒歩で山越えをしてもいい」と言い出したのです。皆、早く現状を打開したいと思っていたので、喜んで賛成しました。そしてまた我々は、結局Sさんの夢の通りになったことを驚きました。

 こうして我々は、重い荷物を抱えつつ、山越えをすることになりました。今回、ゴームク登山はできませんでしたが、こんなところで激しい登山をすることになったのです笑。
 「激しい登山」と書いたのは、その山越えの道が、ジャングルのようなすごい道だったからです笑。あまり体力のない人や体調の悪い人達もいたのですが、体調の悪い人の荷物は元気な人が持つなど、皆で協力し合いつつ、何とか我々は全員無事に山越えを果たしました。全員が山を越えた時、見物していたインド人達も大喜びで祝福してくれて、大騒ぎになりました笑。

 こうして我々は山を越えて、寸断された道の向こう側へ着き、そこからジープで数時間かけてハリドワールへと向かいました。
 途中、ほんの少しだけ休憩した場所で空を見上げると、プラネタリウムのような、ものすごく美しい、ヒマラヤの星空が広がっていました。しかしそれも休憩が終わる頃、たった数分後には雲で覆われてしまいました。まるでヒマラヤがくれたプレゼントのようでした。

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