(4)サンジヴィニの秘法
(4)サンジヴィニの秘法
天界(デーヴァ)と阿修羅(アスラ)は、定期的に激しい戦争を繰り広げるといわれています。
あるとき、この両者の長い戦争が続いていました。
天界・阿修羅ともに、それぞれ精神的指導者がついていました。天界にはプリハスバティ師、阿修羅界にはシュクラ師という賢者がついていました。天界と阿修羅界は戦争をしていましたが、このプリハスバティ師とシュクラ師は、ともに賢者としてお互いを認め合っていました。
この二人の賢者はお互いに同じくらいに偉大な賢者だったのですが、阿修羅界の側についているシュクラ師のみが持っている秘法がありました。それは死んだ者をたちまちのうちに生き返らせることができる「サンジヴィニの秘法」でした。この秘法があるために、阿修羅の側は、殺されても何度も生き返り、これによって戦況は阿修羅界有利に運んでいました。
そこで天の神々は一計を案じ、プリハスバティ師の息子であるカチャに、シュクラ師に弟子入りして、何とかしてサンジヴィニの秘法を伝授してもらってきてくれ、と頼みました。カチャは了承し、シュクラ師のもとへ行って、弟子入りを懇願しました。シュクラ師は、プリハスバティ師に敬意を表していたので、その息子であるカチャの弟子入りを、喜んで認めました。
シュクラ師には、デーヴァヤーニーというかわいい一人娘がいました。カチャは、シュクラ師に一生懸命仕えるとともに、デーヴァヤーニーのためにも一生懸命尽くしたので、デーヴァヤーニーはカチャに恋心を抱くようになっていきました。
ところで阿修羅たちは、カチャがシュクラ師に弟子入りしたといううわさを聞いて、これはきっとシュクラ師のサンジヴィニの秘法を盗みに来たに違いないと思い、カチャを暗殺してしまいました。カチャに対して強い愛着があったデーヴァヤーニーはこれを大変悲しみ、父のシュクラ師に懇願したので、シュクラ師はサンジヴィニの秘法で、カチャを生き返らせました。
同じことが何度も繰り返され、そのたびにカチャは生き返ってくるので、阿修羅たちは一計を案じました。カチャを暗殺し、その死体を焼き、その灰を酒に混ぜて、その酒をシュクラ師に飲ませてしまったのです。
またもやデーヴァヤーニーが、カチャを生き返らせてくれるようにシュクラ師に頼みましたが、シュクラ師は次のように言いました。
「娘や、これは困ったことになった。阿修羅たちの策略によって、私はカチャの死体を焼いた灰を飲んでしまった。今、カチャの身体を復活させたとしたら、カチャは私の腹を割いて出てこなければいけないので、私のほうが死んでしまうだろう。つまり、私が死ぬことによってのみ、カチャを生き返らせることができるというわけじゃ。」
しかしデーヴァヤーニーにとっては、カチャを失うことも、父を失うことも、どちらも耐え難いことでした。そこで思索した結果、シュクラ師はカチャに次のように言いました。
「カチャよ。デーヴァヤーニーのために、私はお前を生き返らせなければならぬし、同様に私自身も死ぬことはできぬ。
そこでたった一つの方法は、お前が私の腹を突き破って生き返った後、今度はお前が私を生き返らせてくれ。そのためにお前にサンジヴィニの秘法を伝授するしかない。」
こうしてシュクラ師は、まずカチャの意識だけをよみがえらせて、カチャに「サンジヴィニの秘法」を伝授すると、カチャの身体を生き返らせました。カチャはシュクラ師の腹を突き破って出てくると、約束どおり、今度はカチャが「サンジヴィニの秘法」を使い、シュクラ師をよみがえらせました。
カチャはシュクラ師に礼をして、「あなた様は無智な私に多くの知識を授けてくださったので、私の父親も同然でございます。さらに私はあなた様の腹から出てきましたので、あなた様は私の母親も同然でございます。」と言って敬意を表し、以前にもましてシュクラ師にかいがいしく尽くしました。
数年後、いよいよカチャが天界に戻るときがやってきました。カチャがシュクラ師に別れを告げ、出発しようとしたとき、デーヴァヤーニーが、自分を妻としてもらってくれるよう、カチャに懇願しました。しかしカチャは、
「シュクラ師は、私にとって父であり母であるような方です。私はシュクラ師のお腹から出てきたので、私はあなたの弟のようなものなのです。だから私はあなたと結婚することはできないのです。」
と言って、やんわりと断り、去っていきました。シュクラ師は、悲しむデーヴァヤーニーを慰めました。
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