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解説「王のための四十のドーハー」第二回(8)

 はい。で、さらにもうちょっと深い意味で言うと、これは瞑想経験のことも指しています。瞑想経験っていうのは、われわれが修行を進めると、さまざまな瞑想経験をします。で、最終的にわれわれは心の本質にたどり着くわけだけど、その前段階で、さまざまな、なんていうかな、経験をする。で、まあ、よくいわれるように、その一つ一つには――もちろん、なんていうかな、例えば経験がなかった人が経験をしたら、それはそれで喜んでもいいんだけど、でも、とらわれてはいけない。そこはまだ、本質的な、最終的な答えではない。
 瞑想経験にはいろんなタイプがあります。一つは、そうだな、完全な錯覚の場合があります。錯覚っていうのは、例えばですよ、「ああ、光が見たいな、光が見たいな」と思って、自分でその光のイメージをつくり出してしまう。「あ、光が見えた」――でもそれは自分の願望でつくり出しただけとかね。ただまあこれは、あえてそれをやる場合もあるよ。例えば観想の瞑想みたいに、あえて神々のイメージをしていくとか。これはこれでもちろん、いろんな狙いがあるからいいんだけど、じゃなくて自分でなんかつくり出しちゃう場合がある。これはもちろんあんまり良くはないっていうか、それだけのイメージ力があるのはいいことだけど、本質的ではない。
 で、次に、つくり出したわけじゃないんだが、ただのけがれにすぎないっていうのがあります。――これはね、何かのときにも言ったけど、われわれがいろんな経験するときっていうのは、ナーディーの詰まりである場合が多い。どういうことかっていうと、例えば、腕のこの部分が詰まってたとするね。で、エネルギーがいっぱい通ってますと。で、エネルギーが非常に強くなってきて、普段はあまり引っ掛からない詰まりにガーンと引っ掛かったと。ガーンと引っ掛かったときに、その詰まりがヴィジョンとして見えます。あるいはヴィジョンじゃなくて音で聞こえるかもしれない。そのときに、「ああ、おれはいい経験をした」って考えるかもしれない。でもそれはただのけがれです。もちろん、普通の人が経験できない詰まりっていうものを経験できたっていう意味ではいいかもしれない。でもそれくらいのもんだね。うん。経験できたことはいいんだけど、その経験したものには意味がない。意味がないっていうか、ただのけがれにすぎない。ここでいうけがれっていうのは、ほんとに気持ち悪いもののときもあるし、そうじゃなくて美しく見えるもののときもある。でもそれもけがれなんだね。それはただの詰まりだと。だからそれにもとらわれてはいけない。
 で、次に、そういった詰まりではない、もうちょっと本質的な経験があります。これはつまりグーッと心の奥に入っていったときに経験する、いろんな素晴らしい経験があります。いろんな光が見えたり――この光っていうのも、単なる詰まりの場合と、そうじゃない、もうちょっと本質的な場合があるんだけど。その本質的な光、あるいは本質的な至福感、あるいは本質的な心の透明な状態、あるいは心が止まったように感じられる状態。これは素晴らしい経験です。しかし、素晴らしいけど、これにもとらわれてはいけない。まだゴールではない。しかし――ゴールではなくて、逆に言うとそれらは方法なんだね。それらの道を通ってゴールに向かってるんです。しかしわれわれは、その方法にとらわれてしまう場合がある。つまり何をやろうとしてるのかっていうのが分かってないと、その方法論として生じてるさまざまな経験を本質だと思ってとらわれてしまう。何度も言うけど、経験そのものは別にいいです。で、その経験を喜んでもかまわない。「瞑想でこういう経験をするようになった。ああ、素晴らしい。わたしは進歩した」――これは喜覚支としていいことだね。しかしとらわれてはいけない。とらわれなければ、どんどん進みます。
 これはいつも言うように、修行ってだいたいそうなんだけどね。とらわれると止まります。とらわれなければどんどん進むんです。これはいろんな現象的なこともそうだよ。現象的にわれわれが、例えば修行が進んで徳が高まってきて、人から尊敬されるようになってきた。あるいはいろんなことがうまくいくようになってきた。何があってもとらわれないで謙虚に、ただ同じように、なすべきことをなし続けてたら大丈夫なんだけど、とらわれた瞬間から崩れだします。あるいは進歩が止まります。だからこれは高度な意味で言うと、そういう意味もありますね。つまり高度な意味で言うと、ここでいってるその「感覚的刺激の喜びを求めて」云々っていうのは、別に欲望とかじゃなくて、瞑想における段階的ないろんな経験ね、これにとらわれてしまうと、真の至福のゴールを見失いますよと、いうことですね。

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