要約・ラーマクリシュナの生涯(22)「アクシャイとモトゥルの死」④
◎モトゥルの深い信仰
あるときモトゥルは、関節にできた腫れ物のために、寝たきりになってしまった。モトゥルはラーマクリシュナに会いたがったが、それを伝え聞いたラーマクリシュナはフリドエに言った。
「私が行って何になるのか。私に腫れ物を治すことができるとでもいうのか。」
しかしモトゥルは何度も使者を送り、どうかラーマクリシュナが来てくださるようにと懇願し続けた。ついにラーマクリシュナも折れて、ある日病床のモトゥルのもとにやってきた。モトゥルの喜びはたとえようもなかった。モトゥルは苦労して何とか体を起こすと、『父よ、少しばかり、御足の塵を頂かせてください』と言った。
ラーマクリシュナは言った。
「私の足の塵が何の役に立つものか。それで腫れ物が治るとでもいうのかね?」
するとモトゥルは答えて言った。
「父よ、私はそれほど卑しい人間でしょうか? 腫れ物を治すためにあなたの御足の塵を欲しがっているとでもいうのでしょうか。私は、世間という海を渡りきるために、あなたの御足の塵を欲しているのです。」
モトゥルがこの言葉を言い終わるより早く、ラーマクリシュナは法悦状態に入った。モトゥルは自分の頭をラーマクリシュナの御足につけ、それによって無上の幸せを感じた。至福の涙が両目から流れ落ちた。
この後間もなくして、モトゥルの病気は癒された。
モトゥルは師ラーマクリシュナに対する不動の信仰心と、気高い献身の心を持っていた。
ラーマクリシュナは以前モトゥルに、大勢の信者たちが集まってくるだろうと言っていたが、この頃はまだそれは実現していなかった。それについてモトゥルがラーマクリシュナに尋ねると、ラーマクリシュナは言った。
「いつになったら<母>が彼らを連れてきてくださるのか、私は知らないのだ。しかし<母>ご自身が私にそのようにお示しになったのだよ。彼女がお示しになった他の事は全部、次々と実現した。なぜこれがまだ実現しないのか、私にはわからない。」
こう言いながらラーマクリシュナは憂鬱な様子になった。それを見てモトゥルは心を痛め、そんな話題を取り上げた自分の愚かさを悔いた。そしてこう言った。
「父よ、彼らが来ようが来まいが、私がここにおります。常にあなたに従いたてまつる、あなたの信者です。私は一騎当千の信者です。ですから<母>が、『大勢の信者たちが来る』とおっしゃったのでしょう。」
◎モトゥルの死
1871年に突然モトゥルは腸チフスにかかった。病は急速に悪化し、一週間のうちにはものを言う力も失った。ラーマクリシュナはすでに、モトゥルの寿命がもう長くはないことを知っていたので、毎日フリドエを見舞いに行かせたが、自分は一度も様子を見に行くことはしなかった。
そうしてついに最期の日がやってきた。その日ラーマクリシュナは、毎日行かせていたフリドエもモトゥルの元へ行かせず、自分は午後の2、3時間、深いサマーディに入った。ラーマクリシュナはそのとき、肉体はドッキネッショルに横たえたままで、光の道を通ってモトゥルのもとへ行き、自らその手を取って、莫大な徳を積んで初めて行くことができる領域へと、モトゥルを導いていったのだった。
ラーマクリシュナがバーヴァ・サマーディから戻って来たのは午後五時過ぎだった。ラーマクリシュナはフリドエに言った。
「モトゥルは、母なる神の侍女たちに親切に助けられて天上の馬車に乗り、彼の魂はデーヴィーの世界に行ったよ。」
そして夜が更けてからフリドエは、ラーマクリシュナがそう話した時間、ちょうど夕方五時頃にモトゥルが亡くなったということを、モトゥルの元から戻ってきた寺の職員たちから聞かされたのだった。