要約・ラーマクリシュナの生涯(13)「結婚およびドッキネッショルへの帰還」
13 結婚およびドッキネッショルへの帰還
ゴダドルの母チャンドラデーヴィーと兄のラメシュワルは、ゴダドルが発狂し、祭祀の仕事を辞めたというしらせを聞いて、非常に狼狽し、心配した。そこでチャンドラデーヴィーは、ゴダドルをカマルプクルの家に呼び戻した。これは1858年の後半のことであった。
そばに置いてみてチャンドラデーヴィーは、ゴダドルの世間への無関心、放心状態、落ち着きのなさに気づき、また彼が繰り返し「母よ、母よ」と悲しげに叫ぶのを聞き、それらを治療するために、薬や儀式など、様々な手段を執った。それらの治療自体は効き目はなかったが、結果的にこの時期に、ゴダドルは健康を取り戻し、また悲しげに泣くこともなくなった。
当時23歳になろうとしていたゴダドルは、この時期、カマルプクルの西の端と北東の端にある、ブティルカルとブドゥイ・モロルという二つの恐ろしく寂しい火葬場に行き、瞑想して長い時を過ごすようになった。ゴダドルはそれらの場所に行くときには、新しい器に菓子やその他の食べ物をいっぱいに詰めて家を出た。火葬場に住むジャッカルや半神たちに食べさせるためである。それらの食べ物が彼らに捧げられると、器は虚空に飛び上がって消えた。そしてゴダドルは時々、それらの半神たちの姿を見ることができた。
今やチャンドラデーヴィーたちは、ゴダドルの様子や健康状態が普通に戻って来たのを喜んだが、しかし相変わらず彼が世俗には全く無関心で内観的であることを心配した。それにより再び病気が再発するのではないかと考えたからである。そこでチャンドラデーヴィーたちは、ゴダドルの心を世俗に結びつけるために、ゴダドルを結婚させようと考えたのであった。
それを知るとゴダドルは、反対するどころか、むしろ家に祝い事があるときに喜んではしゃぐ子供のように振る舞った。
しかしゴダドルの良い結婚相手はなかなか見つからなかった。候補者がいても、相手の家族が高額な結納金を要求するので、貧乏なゴダドルの家では無理だったのである。
そんなある日、ゴダドルが突然バーヴァ・サマーディに入って、
「あちこち探すのは無駄だ。ジャイラムバティの村のラームチャンドラ・ムコパッダエの家へ行って探しなさい。花嫁は藁で印をつけられて保護されている」
と言った。
母と兄はゴダドルのこれらの言葉をそのまま信じることはできなかったが、一応調査をしてみたところ、たしかにそこには花嫁候補としてふさわしい少女がいたが、年齢が五歳とあまりにも若いということが分かった。しかし他に候補が見つからなかったので、1859年5月、ゴダドルはこの少女と結婚式を挙げた。しかし少女はまだ幼かったので、結婚後すぐにジャイラムバティの実家に帰った。
そしてゴダドルは、母親の意向に応じてしばらくカマルプクルにとどまったが、約1年7ヶ月後に、ついにドッキネッショルのカーリー寺院に帰り、再びカーリー女神の祭祀を引き受けたのだった。
ゴダドルは、すべてを忘れてカーリー女神の祭祀に没頭した。彼の心のすべてを占める唯一の思いは、どのようにしたらあらゆるものの中に常に母なる神を見ることができるかということであった。絶えざるジャパと瞑想と神への思いに没頭し続けることで、ゴダドルの胸は再び赤みを増した。世間とそれに関する話とは、彼には致命的な毒薬のように思われた。皮膚の焼けるような感じが、再び彼を襲った。夜も全く眠ることはできなかった。
フリドエはゴダドルを、カルカッタの有名なアーユルヴェーダ医師であるガンガープラサードのもとへとたびたび連れて行った。医師は様々な薬を処方したが、効き目はなかった。
ある日またフリドエがラーマクリシュナをガンガープラサードのもとに連れて行った。ガンガープラサードはゴダドルを注意深く診察した後、新しい薬を処方してくれた。そのときそこに、東ベンガルから来た別の医師が居合わせていた。彼はゴダドルの顔つきに心を惹かれ、しばらく熟考した後、こう言った。
「お見受けした徴候から見て、彼は神に酩酊した状態にあるようだ。これは薬で治せるものではない。」
ラーマクリシュナは後によく、病気のように見えたこれらの症状の真の意味を理解することができた最初の人はこの医師であった、と言った。しかし当時は、この医師の言葉を信じる者は誰もいなかった。
ゴダドルが再び心身の異様な状態に悩まされているというニュースはカマルプクルにも伝わり、チャンドラデーヴィーは息子の回復を願って、シヴァ大神の聖堂で命をかけた完全な断食をおこなった。すると二、三日経ったころ、彼女の夢に銀色に輝くシヴァ大神が現れ、こう言った。
「恐れるな。そなたの息子は気が狂ったのではない。彼の内部に神の霊の巨大な目覚めが起こったのだ。そのためにあのような状態にあるのだ。」
このように神の啓示によって保証を得たチャンドラデーヴィーは、信仰によって清められた心でシヴァ大神に礼拝を捧げ、家に帰ると、息子の心の平安を祈って、シータラーとラグヴィールに専心奉仕した。
当時の出来事を回想して、後にラーマクリシュナは弟子たちにこう言った。
「普通の人々の心身にあの通りの変化どころかその四分の一でも起こったなら、彼らは間違いなく死ぬ。私は昼も夜もおおかた、何かの形の母なる神のヴィジョンを見続けていた。それが事態を救ったのだ。そうでなかったら、この鞘(肉体)にとって、生き延びることは不可能だったであろう。六年という長い年月、私は全く眠らなかったのだ。目は瞬く力をうしなった。どんなに努力しても、目を閉じることができなかった。時の経過がわからなかったし、肉体の意識は全くなかった。たとえほんの少しでも注意が『母』から肉体の方にそれると、『自分はキチガイの瀬戸際にいるのだろうか』と考えて心配になった。私は鏡の前に立って、瞼が閉じるかどうか見るために、目の中に指を入れてみた。そのようにしても瞼は瞬く事ができないのを知って、私は心配になり、泣きながら『母』に訴えた。
『母よ、これがあなたにおすがりしてきた事の結果なのですか。私が完全にあなたに頼った結果として、あなたはこの肉体にこんな恐ろしい病気をお与えになったのですか』と。
そして次の瞬間にはこう言った。
『この肉体には何でも起こしてください。肉体は、もし必要なら死なせてください。しかしどうか、私を見捨てないでください。御自らを私に示し、お慈悲をお与えください。なぜなら母よ、私は本当にあなたの蓮華の御足のみにことごとく保護を求め、あなた以外には全く支えを持たないのですから。』
いつもこのようにしてしばらく泣いていると、私の心はまた、たとえようのない法悦に満たされるのだった。肉体はつまらないもの――注意を払う価値もないものに見えた。すると『彼女』のヴィジョンに恵まれ、彼女の言葉によって恐怖からの解放を保証されるのだった。」
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