yoga school kailas

要約「シクシャー・サムッチャヤ」(13)「罪悪と浄化」

第四章 罪悪と浄化

◎根本罪

 また経典には、大いなる罪悪について説かれている。アーカーシャガルバ・スートラには次のように説かれている。

「王よ、あなたが根本罪を犯すならば一切の善根は滅し、悪趣に落ち、天界等の一切の楽から遠ざかる。根本罪とは何か。

 真理の法を誹謗し、隠ぺいすること、これは根本罪である。

 出家修行者を還俗させること、あるいは出家修行者を殴打し、牢屋に入れ、あるいは殺すこと、これは根本罪である。

 父母を殺すこと、解脱者を殺すこと、出家修行者教団を分裂させること、悪心をもってブッダの体から血を流すこと、これらは無間地獄に落ちるといわれる根本罪である。
 
 カルマの法則などないと言って来世を恐れず、自ら十悪を行じ、あるいは他人にそのように説いて人々に十悪を行なわせること、これは根本罪である。」

◎初心の菩薩の八つの根本罪

「また次に、大乗の菩薩道に入ったばかりの菩薩には、八つの根本罪がある。
 もし菩薩がこれらの根本罪を犯すならば、一切の善根は滅し、悪趣に落ち、天界の楽や菩薩の楽から遠ざかり、長い間、輪廻の中で素晴らしい師に出会うこともできなくなる。八つの根本罪とは何か。

◎初心の菩薩の第一の根本罪

 ある衆生が悪しき時代に生まれ、わずかな善根によって素晴らしい師に親しみ近づき、深遠なる大乗の法を聞くことができ、浅い智慧ながらも菩提心を発する。そして深遠なる「一切は空である」と説く経典を読む。しかし彼は智慧が浅いので、その深遠なる教えを、相手をわきまえずに広く説いてしまう。凡夫や外道たちはその教えを聞いて心に恐怖を生じさせる。それによって彼らは菩提心を捨て、小乗の道に入る。これが初心の菩薩の第一の根本罪である。
 この罪を犯すならば、一切の善根は滅し、悪趣に落ち、天界の楽や菩薩の楽から遠ざかり、菩提心も壊れる。ゆえに菩薩は、他の衆生の心の深さ、志や願望に応じて、相手に合った法から段階的に法を説くべきである。

◎初心の菩薩の第二の根本罪

 また次に、初心の菩薩がこのような言葉を言ったとする。
『汝は六つのパーラミターの行を修習することはできない。また無上の最正覚を得ることはできない。ゆえに汝は小乗の道に進むべし。汝は小乗の道によって、速やかに生死輪廻から解脱せよ。』
 このように言うならば、一切の善根は滅し、悪趣に落ち、天界の楽や菩薩の楽から遠ざかり、菩提心も壊れる。これが初心の菩薩の第二の根本罪である。

◎初心の菩薩の第三の根本罪
 
 また次に、初心の菩薩がこのような言葉を言ったとする。
『汝はなぜ、プラーティモークシャや、原始仏教の戒や律を守っているのか。そんなものに意味はない。ただ菩提心を発して、大乗の経典を読むべし。これによって身口意の煩悩や悪業はあまねく清浄になるのだ。』
 このように言うならば、一切の善根は滅し、悪趣に落ち、天界の楽や菩薩の楽から遠ざかり、菩提心も壊れる。これが初心の菩薩の第三の根本罪である。

◎初心の菩薩の第四の根本罪
 
 また次に、初心の菩薩がこのような言葉を言ったとする。
『声聞乗の法を聞いたり読んだりすることをやめ、また他者にも声聞乗の教えを説いてはいけない。なぜならば声聞乗においては果報を得ることはできず、煩悩を断ずることはできないからである。
 故に、大乗の経典を信じ、学び、読み、他者のために大乗の法を説くべし。これによって一切の悪道のカルマを取り除き、速やかに無上の最正覚を得ることができる。』
 このように言うならば、一切の善根は滅し、悪趣に落ち、天界の楽や菩薩の楽から遠ざかり、菩提心も壊れる。また、これを聞いた者がそのような見解に陥るならば、説いた者も聞いた者もともに罪を得る。これが初心の菩薩の第四の根本罪である。

◎初心の菩薩の第五の根本罪
 
 また次に、初心の菩薩が、利得と供養を得たいがために、大乗経典を広大に称賛し読誦し、他者にその意味を解説する。そして『われは大乗を修する者なり』と言い、他者が利得を得るのを見て嫉妬を抱き、また他者が所得を得るのを見て誹謗し、軽蔑し、侮蔑する。嫉妬心によって自らの身を高く見せ、『われは最上の法を得た。大乗の素晴らしい至福を獲得した』と吹聴する。
 このような人は大重罪を積むこととなり、悪道に向かい、すぐれた世界から落っこちる。
 たとえばそれは、宝の島に到達したいと思い、船を使って大海に出航したが、自らその船を壊し、命を失うようなものである。大乗の海に出向しても、嫉妬のゆえに嘘のカルマを作り、信という船を自ら破壊し、智慧という命を失うのである。
 この初心の菩薩のような愚かで子供じみたもろもろの劣った菩薩は、嫉妬によってこのような大重罪を作るのである。これが初心の菩薩の第五の根本罪である。

◎初心の菩薩の第六の根本罪
 
 また次に、初心の菩薩が、深遠なる空の教えなどを説く大乗の経典を、広く人のために説く。そしてそしてこのように言ったとする。
『われは自ら悟ったことを、慈悲によって汝のために説く。常にこれを修習すべし。汝もまた私のように、この深遠なる法を悟るべし』
と。彼は実にこのように説くが、利得と供養を求めるが故に、自分が得ていない深遠な悟りを『得ていない』とは説かない。そして、『私は過去・現在・未来のブッダの悟りを得た。どのような菩薩も聖者も、われに勝る者はない』と嘘をつき、大重罪を積む。すなわちこれによりもろもろの神や人々を騙すことになるため、このような人は声聞乗においてすら悟りを得ることはできない。いわんや大乗の悟り、および無上の最正覚を得るにおいておや。
 たとえばそれは、飢餓に迫られて飲食物を探している者が、色・香り・美味などをみな具足した果実を捨て、自ら毒の樹の下に赴き、毒の果実を食い、即死するようなものである。人身を得、素晴らしい師をよりどころとして大乗の法に出会ったにも関わらず、利得と供養をむさぼるが故に、己の徳を宣伝し、他人を批判する。そのようにして大重罪を得、悪道に赴くのである。
 このような人は、一切の智者が捨て去る悪友であるがゆえに、皆、親しみ近づいてはならない。
 これが初心の菩薩の第六の根本罪である。

◎初心の菩薩の第七の根本罪
 

 また次に、国王に教えを説く師の役割をする初心の菩薩がおり、彼は愚かなるがゆえに、自ら明智を得たと言い、慢心に陥る。大財宝を得て、それによって布施等を行なうが、それにより一層慢心を増大させ、国王に向かって出家修行者の過ちを報告する。そして王の力を借りてもろもろの出家修行者を非合理にとらえ、罰を与える。さらにはもろもろの出家修行者に対して破戒を勧める。
 これが初心の菩薩の第七の根本罪である。

◎初心の菩薩の第八の根本罪

 また次に、国王に教えを説く師の役割をする初心の菩薩がおり、彼は王や大臣に対して自らに恭敬供養をさせ、またもろもろの出家修行者たちのもろもろの過失を説いて、王の力を借りて出家修行者たちにもろもろの制限を設け、また出家修行者のために用意されたもろもろの布施物を横取りする。
 また彼は、出家修行者に誤った教えを説く。すなわち、彼は非法を法なりと説き、法を非法なりと説き、もろもろの三蔵経典を捨て、ウパデーシャをよりどころとせず、プラジュニャー・パーラミターその他の経典を捨てる。この教えを受けた出家修行者は、心が極めて散漫となり、智慧が断たれる。すなわち、シャマタとヴィパシャナーを捨て、修行以外のことを多く行なうようになり、所得が増大する。彼は煩悩を征服することがない。彼は多くの過ちを犯し、出家修行者といえないにも関わらず自らを出家修行者といい、また禁欲をしていないのに自らを禁欲行者という。
 この初心の菩薩も、その影響を受けたこの出家修行者も、ともに重罪を得る。
 なぜならば、本来、出家修行者は善き福田であり、在家の信者たちのよりどころであり、サマーディやもろもろの智慧を獲得することができる器であり、世界の光明となり正道を開示し、カルマと煩悩の世界からもろもろの衆生をニルヴァーナに向かわせることができる者である。そのような出家修行者をそのように堕落させた者も、堕落した者も、ともに重罪となるのである。
 これが初心の菩薩の第八の根本罪である。」

◎罪を浄化する方法

 これらの罪より脱却する方法は、同じくアーカーシャガルバ・スートラに、次のように説かれている。

「もしもろもろの菩薩が、アーカーシャガルバ(虚空蔵菩薩)の名前を聞き、疑念なく、アーカーシャガルバを見神したいと欲するならば、悪道に堕することを恐れて、過去に積んだ重罪を懺悔し、アーカーシャガルバの名前を唱え、恭敬し、礼拝する。
 するとその人の前には善き師が現われる。あるいはその本性をあらわし、あるいはブラフマ神の姿で、あるいは普通の人間の姿をしてあらわれ、初心の菩薩が犯した罪をあまねくみな懺悔させ、深遠なる大乗の行を説き、不退転の境地に住せしめる。

 もしそのような善き師が現われなかった場合、東方のアルナ天に向かって香を焚き、次のように言うべし。
『大慈悲あり、大威徳をそなえ、ジャンブ州を照らし、衆生を哀れむアルナ天よ。速やかにアーカーシャガルバを勧請し、大慈悲によってわれを悟りに導きたまえ。夢の中において、私が犯した罪の果報をあらわしたまえ。われに懺悔と聖なる大乗の智慧方便を与えたまえ。』
と。するとかのアルナ天がアーカーシャガルバとともにやってきて、彼の夢の中にあらわれ、彼の重罪を懺悔させ、大乗の智慧と方便を与える。こうしてこの初心の菩薩はサマーディと菩提心を守り、これによって大乗に堅固に住することができる。」

 また、同じアーカーシャガルバ・スートラには、マントラによる罪の浄化法も説いている。寂静の地において香を焚き、十方にあまねく礼拝し、合掌して、以下のマントラを唱える。

 タディヤター スムリシャ スムリシャ カールニカ 
 チャラトゥ チャラトゥ ヴィチャラ 
 サンチャラ カールニカ 
 ムララ ムラヴァ 
 ヴェーガダーリ ナムチャメー ブジャヤタ カールニカ 
 チンターマニ プーラヤ カールニカサルヴァーシャーン メー 
 スターパヤ アージュニャーダーリー
 スプグ スプグ ラティヴィヴェーカグ ドリシュティヴィヴェーカグ 
 プーラヤ カールニカ プーラヤントゥ ママーシャーン サルヴァター
 チャショーカガティ チャショーカガティ スワーハー

 また、ふだんから戒を守っている者、過失のない者は、繰り返し師やブッダの名を唱えることで、自己を常に反省し、悪を犯すことに対して恐れを生じ、もろもろの悪業を滅することができる。

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする