yoga school kailas

至高者の祝福(8)「聖マイトレーヤ、宇宙創造の真理を説く」

第二章 第3話 聖マイトレーヤ、宇宙創造の真理を説く

 聖シュカは続けました。
「クリシュナへの信仰心で心を清めたヴィドラは、ハリドワールに住む底知れぬ智慧の持ち主、聖マイトレーヤのもとを訪れ、彼の持つ徳を見て喜ぶと、次のような質問をしたのです。

『人は誰もが皆幸福を求めますが、誰一人として真の幸福を獲得できず、また苦しみを終わらせることもできません。むしろ彼らは自分たちの行為の結果、幾度となく苦しみを味わうのです。それゆえ、尊敬すべき聖者よ、このような惨めなわれわれに、助言となる言葉を語っていただきたいのです。
 それを聞くなら心はバクティで清められ、心に主が住まれ、真理と智慧が授けられ、主が喜んでくださる、そのような祝福に満ちた道を、ああ、最高の聖者よ、どうか私に教えてほしいのです。』

 このような言葉で始まり、ヴィドラは聖マイトレーヤに、様々な質問をしました。すると聖マイトレーヤは、ヴィドラに大いなる敬意を示して、こう答えたのでした。

『ああ、敬虔なるヴィドラよ。あなたはまことに人類のためになるすばらしい質問をされました。あなたの心はすでに感覚で捉えられぬ主に固定されています。やがてあなたの名声は全世界に広まっていくでしょう。
 ヴィドラよ、あなたは永遠に、主ご自身と、さらに主の信者たちからも愛されています。そこで主はこの世を去るにあたり、この私に、あなたに智慧を授けるよう命じられたのです。
 それゆえ私はいまから、あなたの質問に対して、順を追って説明していきましょう。

 すべての創造以前には、すべての魂の支配者、純粋真我である主だけが存在しておられました。そこに主体と客体はありませんでした。そのとき、主の意識は目覚めていましたが、その持たれる力はすべて仮眠状態にあったのです。
 主の持つ力である知覚力、これこそがマーヤーと呼ばれるもので、これは原因と結果という二つの相を持ちます。全能の主はこのマーヤーの助けを借りて、この宇宙を創造されたのです。
 このマーヤーを構成する三グナの平衡がカーラ(時)によって乱されたとき、すべてを超越される主は、ご自身の一部を、ここの魂という姿の種子として、そのマーヤーの中に置かれたのです。
 マーヤーがカーラに促された結果、それはマハト・タットヴァ(宇宙的理性の原理)を生み出します。そしてマハトは、宇宙を創造しようとして変異を始め、そこから自我意識が生まれてきます。そして地・水・火・風・空の五大元素、五つの感覚器官と五つの行為器官、そして感覚意識などが、その自我意識から生まれるのです。
 
 これらのもろもろの原理を支配する神々は、カーラの「変化」という特性、マーヤーの「迷わせる」という特性、ジーヴァの「意識ある」という特性をすべて共有しており、彼らは至高者の光の一部なのです。しかし異質なもの同士であった彼らは、宇宙創造という強調的な作業ができませんでした。そこで彼らは、全能の主に手を合わせて、こう祈られたのです。

「主よ、あなたの蓮華の御足に、私たちはひれ伏すでしょう。あなたは、嘆願する者の苦しみを取り除き、あなたを頼って努力する生き物を守ってくださるのです。
 ああ、宇宙の創造者よ。この世界に住むすべての生き物は、絶えず三重の苦しみにさいなまれ、心の安らぎなどはとうてい望めません。それゆえ私たちは、ああ、主よ、すべての智慧の宝庫である、あなたの御足にすがるのです。
 私たちが庇護所とするその御足は、聖性の宿りし場所なのです。そして隠棲した先見者たちは、あなたの口から出る神聖なマントラを唱えて、その御足を求めるのです。また罪を清めるガンガーの流れは、あなたの御足から始まるのです。
 その蓮華の御足が載る足台に、私たちは助けを求めるのです。あなたを信じる者は、あなたの御名と栄光を歌って、崇拝と信仰で自身を清めるでしょう。そして心にその足台を瞑想することにより、離欲を伴った智慧とともに、自分たちの心を支配できるのです。
 ああ、主よ、あなたの蓮華の御足を瞑想するなら、魂は恐れなき境地を手にできるのです。それゆえ私たちは、あなたの御足に庇護を求めるのです。
 あなたの蓮華の御足に、私たちは永遠に帰依するでしょう。内制者としてあなたがおられるのに、肉体が自分だと、また所有物は自分のものだという、そんな間違った観念を持つ者には、あなたの御足に近づくことはできないでしょう。
 心を感官に惑わされ、無価値な対象の間をさまよう人々には、ああ、世界の主よ、あなたの足跡を見て喜ぶ信仰者の気持ちなど、とうてい理解できるはずがありません。
 しかし、あなたの物語という甘露を飲み、バクティにて心を清めた人は、離欲を本質とする智慧を手に入れ、ああ、主よ、まことにたやすく、あなたの永遠の世界へとたどり着くのです。
 また、真我に心を集中するヨーガによって、マーヤーを克服しようとする賢者も、多大な困難を伴うものの、至上の大霊であるあなたに到達することでしょう。けれども、あなたをあがめるというこのバクティの教えは、それはまことにたやすき道なのです。

 ああ、太初の真我よ。この宇宙を発生させるため、三グナによって、私たちは次から次へと創造されました。しかし異なった性質を持つゆえに、私たちは統一されることがなく、あなたがリーラー(神の遊戯)をされる宇宙を、あなたに提供できずにいるのです。
 不変で太初の真我であるあなただけが、すべての根本原因なのです。ああ、至上の大霊よ、われら神々は、あなたのために何をすればいいのでしょう? 私たちはあなた様に仕えるために、こうして生まれてきたのです。どうか主よ、この創造行為を完成させるため、神聖な智慧と創造力を、私たちにお授けください。私たちにとっては、ただあなたの慈悲だけが頼りなのです!」

と。』

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする