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至高者の祝福(7)「クリシュナの指示」

第二章 第二話 クリシュナの指示

『ヤドゥとボージャ族の若者たちは、あるときドワーラカーの都で遊ぶうちに、さる聖仙たちを激怒させてしまい、彼らの呪いを受けました。
 その呪いの力により、後にひどく酒に酔って思考力を失い、お互いに殺し合いを始めました。
 実はこの一連の出来事も、クリシュナの力によるものだったのです。計画通りに一族が滅亡するのを見ると、クリシュナはサラスワティー河の水を口に含み、川辺に立つ木の根元に座られました。
 
 この事件が起こる少し前、一族を滅ぼす決心をされたとき、クリシュナはこの私に、バダリーヴァナへと行くようにと命じました。
 私は主の意図を理解していたものの、主との別離に耐え切れず、主のもとへと戻っていきました。
 愛する主を探しまわった私は、やがてサラスワティーの岸辺で、ただ一人で座っている主を見つけました。
 主は、蓮華のごとき右足を左腿の上におかれて、菩提樹を背に座られていました。そして主は感覚の喜びを放棄し、内なる完全なる喜びに満たされていたのでした。

 まさにそのとき、完全な悟りを得た聖者マイトレーヤが、様々な世界を放浪した後、偶然その場にやってこられたのです。

 優しく微笑みつつクリシュナがマイトレーヤに語りかけると、マイトレーヤは喜びと感動で恍惚となり、頭を低く下げて、クリシュナの言葉を聴くのでした。
 そしてその後、主は私にこう語られたのです。

「私はあなたの心に住んでいるので、あなたの望むすべてを知っているのだ。
 それゆえ、他の者にはまことに得がたきものを、あなたに与えることにしよう。
 心清らかなる者、ウッダヴァよ。私の慈悲を受けたがゆえ、あなたにとっては、この人生が最後の転生となるだろう。わたしが物質界を去らんとする今、あなたはその純粋な信仰によって、人目につかぬこの場所で、こうして私と会うことができたのだ。
 さあ、今から私は、わが栄光を現わす最高の叡智を、あなたに伝えよう。」

 このように主から告げられると私は、あふれる愛に身体の毛は逆立ち、眼からは涙が流れ落ちて、両手を合わせ、口ごもりながらこう返事したのです。

「ああ、わが主よ、あなたの御足に仕えるなら、手にできぬものなどがあるでしょうか?
 ああ、完全なるお方よ、けれども私は何もほしいとは思わないのです。私の唯一の願いとは、ただあなたの御足をあがめることだけなのです。
 あなたは行為をなさぬのに行為をされんとして、不生であるのにこの世に降誕され、また真我に満足されているのに一万人以上の乙女たちを妻とされました。そのようなあなたの振る舞いに、物事を知る者はとても惑わされるのです。
 あなたが限りなき叡智を持たれて、誰にも妨げられず、疑いや誤謬から自由であられ、常にすべてを悟っておられます。そのようなあなたが、ときには無学な私のような者にも相談された。そのことに、ああ、光り輝く主よ、私たちは惑わされてしまうのです。
 それゆえ、わが主よ、かつてあなたがブラフマー神に教えられた、あなたという神秘を解き明かす、完全で最高の智慧を、もし私に資格があるなら、どうかこの物質界の悲しみを超えられるよう、私に教えていただきたいのです。」

 こうして私が自分の思いを告げたとき、蓮華の眼をされる至上の主は、ご自身の超越的な神性を、この私に現わしてくださったのです。
 わが尊敬するグル・クリシュナから、こうして唯一の真実である、神の悟りに至る道を学んだ私は、尊敬の念を込めて主の周りをめぐり、その御足にお辞儀をすると、主との別れに悲しみながら、ここにやってきたのです。
 ああ、ヴィドラよ、そして私は今から、主の愛された隠棲地、バダリカーシュラマに行こうと思うのです。』

 
 クリシュナとその一族の死という耐えがたき知らせを聞いて、賢明なるヴィドラは、こみ上げる悲しみを、自らの智慧の力によって何とかこらえました。
 そして主の献身者ウッダヴァが旅立たんとしたとき、愛の思いに満たされたヴィドラは、彼に次のように話しかけたのです。
『ヨーガの大師であり神であるクリシュナが語られた、主の本質を表わす神秘に満ちたその最高の智慧を、どうかこの私に教えてください!』

 ウッダヴァは答えました。
『その真理について知りたいなら、あなたは聖マイトレーヤに仕えるべきでしょう。主はこの世を去るにあたり、彼にこのことを指示されたのです。』

 ウッダヴァはその後、クリシュナのすばらしさをヴィドラと語り合うことで、主と別れた悲しみを癒しました。そして翌朝早く旅立っていったのです。」

 パリークシット王は言いました。
「クリシュナも、クリシュナの一族の者たちも、また他の重要な多くの王族たちも肉体を捨てられたのに、どうしてウッダヴァだけが生き残ったのでしょうか?」

 聖シュカは答えました。
「クリシュナは、ご自身の一族を滅ぼされた後、自らの肉体を捨てるときに、こう考えられたのです。
『いまや私がこの世を去るにあたり、悟りを得た最高者ウッダヴァこそが、私の真理を知るに相応しいだろう。
 ウッダヴァは非常に賢明で、またよく自分自身を修め、感官の対象にも心を乱すことはない。それゆえ彼をこの地上に残して、私についての真理を世界に知らしめることにしよう』
と。
 そしてウッダヴァはその後、クリシュナの指示通りにバドリカーシュラマへと向かい、その地で、深遠なる瞑想によってクリシュナを礼拝したのです。
 ただリーラー(神の遊戯)として人間となられた至上の大霊、クリシュナのすばらしき行ないと、クリシュナが肉体を捨てられたその様子を、また主がこの世を去られるときに自分のことを考えてくださったことを聞くや、ヴィドラは感動に圧倒されてしまったのです。そして主の献身者ウッダヴァと別れなければならないことに、彼は泣いたのでした。
 その後ヴィドラは、ヤムナー河の岸辺を出発すると、数日をかけて、聖マイトレーヤの住むガンガーの岸辺に到着したのでした。」

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