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至高者の祝福(11)「ブラフマー神による主の賛美」

第二章 第6話 ブラフマー神による主の賛美

 ヴィドラはさらに数々の質問をし、マイトレーヤはそれに答えて言いました。

『宇宙の創造に当たり、ブラフマー神は、苦行に励んだ結果、至高者の完全なお姿を眼にすることができました。そこで彼は、至高者に心を固定して、次のように主を賛美し始めたのでした。

「かくも長き時を経て、ようやく私はあなたを知ることができたのです。
 生き物が主の本質を悟れぬとは、なんと恥ずべきことでしょう。宇宙にはあなた以外に何一つ存在せず、存在すると見えてもそれは真実ではないのです。
 ただ一者であるあなただけが、グナの平衡が崩れたときに、多くの姿となられるのです。

 喜びに満ちた智慧の光は、常にあなたにおいて顕現し、無智の闇は決してあなたに近寄れません。
 ああ、祝福の根源たるお方よ。私は幾度もあなたに礼拝を捧げます。あなたを軽んずるような者は、感官の楽しみにふける、地獄の住人に等しき者だけです。

 人々は絶えず恐れ、嘆き、悲しみ、苦しみ、貪欲となり、節度なく欲望を持ち続けます。これらは自分の所有物や親族への愛着ゆえであり、それらを自分のものと思うことが悲しみの根源なのです。そしてすべての恐怖から自由なあなたの御足に庇護を求めぬ限り、その苦しみは永遠に続いていくでしょう。
 あなたへの帰依こそが、すべての悪を滅ぼしてくれるのです。それに関心を持たぬ者は、智性を奪われ、罪深い行ないに専念し続けるでしょう。そして感覚的な楽しみに心を奪われ、絶えず不幸に見舞われるのです。
 ああ、計り知れなき力を持つ至高者よ。執着や怒りや悪業による苦しみにさいなまれるこれらの人々を見ると、私の心は痛むのです。
 感覚器官とその対象というあなたのマーヤーに欺かれて、自分は主と離れた存在だと考える限り、ああ、主よ、彼らは輪廻で苦しみ続けるのです。輪廻は仮のものとはいえ、それは悲しみの温床として、彼らが目覚めぬ限り、永遠に続いていくのです。
 
 もしあなたに心を向けないなら、輪廻を抜け出すことはできないでしょう。心と感覚を、現世的満足の追求に費やし、昼も夜も世俗の思いにまみれて苦しむでしょう。
 あなたへと通じる道は、あなたの誉れを聞き、あなたに帰依することで、見出せるでしょう。そしてそのようなバクティによって清められた信仰者の心の蓮華に、あなたは住まわれるのです。
 
 あなたこそが、すべての衆生の私心なき友であり、またすべての衆生の内なる真我なのです。

 それゆえ、行為に対する最高の報いとは、ああ、主よ、それはあなたが喜ばれることなのです。
 供養や布施、苦行、戒律の遵守などをあなたに捧げるならば、それらは決して滅びはしないのです。

 死後、もはや意識がないときに、あなたを思い出し、あなたのすばらしさを思い出し、それを称えて、あなたに帰依し、あなたの御名を唱えるなら、彼はマーヤーのかなたに輝くブラフマンと一体になれるのです。それゆえ、ああ、不生のお方よ、私はあなたに庇護を求めるのです。

 宇宙の大樹としてあらわれるあなたに、私は帰依いたします。それは宇宙の創造・維持・破壊を担う私(ブラフマー)、ヴィシュヌ、シヴァという三本の幹となって、その後、多くの枝や幹へと分かれていくのです。
 あなたを崇拝することこそが、人の果たすべき義務であり、また幸福を生み出すものだと、あなたはそう宣言されるのです。それゆえ、私はあなたに帰依するのです。
 
 あなたは五つの無明(根本無明、自我意識、愛著、嫌悪、生存欲)から衆生を救い、全世界を自らの腹部に納めて、安らかに眠られています。そんなあなたの中で眠ることで、衆生は安心を与えられているのです。
 ああ、まことにすばらしき主よ。あなたの臍の蓮より生まれた私は、あなたの慈悲によって、三界を創る仕事を命じられたのです。かくも永きに渡って宇宙を腹部に保たれたあなたは、今その蓮華のような眼を開くことで、深遠な眠りの終焉を告げられたのです。ああ、そのあなたに、私は帰依いたします。
 あなたは、衆生の幸福を願うまことの友人であり、嘆願する者に慈悲を授ける、ただ一人のお方なのです。
 あなたは無限の慈悲を持たれる、太古の真我なのです。愛に満ちた笑みを浮かべて、どうかその蓮華のような眼をお開きください。そして宇宙創造のために起き上がり、あなたの甘美なお言葉で、失意から私を救ってほしいのです!」

 ブラフマー神は、苦行と崇拝と深遠な瞑想によって、至高者の姿を見ることができたのでした。そして可能な限りの心と言葉で主を賛美すると、その後、沈黙したのでした。
 宇宙崩壊時に広がった海を見て、ブラフマー神は途方にくれてしまい、いかにして種々の世界を創造すべきか、全く困惑していたのでした。そしてその様子を見られた至高者は、彼の弱気を取り除こうと、厳かな口調で、次のように言われたのです。

「失意に心を乱してはならない。ヴェーダの宝庫たるブラフマーよ。あなたは創造の為に、さらに努力をし続けるがよい。私はあなたが求めるすべてのものを、すでに用意してあるのだ。
 あなたはさらに苦行を行ない、マントラを唱えて、私をあがめるがよい。
 そしてバクティと心の集中によって、あなたは全宇宙とあなた自身に、私が遍満するのを悟り、またすべての世界とすべての魂が、この私の中に休息するのを見るだろう。
 すべての中に私が遍満していることを知る者は、直ちに誤謬から解放されるのである。
 そして自我意識を持つことなく、この私と自分が一体であるのを悟るなら、その者は解放を手にすることができるだろう。
 宇宙を創造するに当たり、あなたは決して心配するに及ばないだろう。なぜなら私はあなたに、限りなき慈悲を示しているのだから。
 あなたは、悪しきグナの働きに縛られることはないだろう。なぜなら、創造の仕事に没頭しようとも、あなたの心は私と強くつながったままであるのだから。
 
 あなたが私に賞賛を捧げ、そして苦行によって信仰を深めたのも、すべて私の慈悲によるのである。
 あなたが成功するように祈っている。あなたはかくも熱心に私を賛美し、また、グナを持つように振舞う私を、グナを持たぬ者と正しく宣言した。そのあなたに、私は大いに満足したのだ。
 すべての願望、すべての祝福の施与者である私を、毎日そのように賛美して崇拝するなら、私はその者に満足するであろう。
 慈善行為、苦行、供養、布施、ヨーガの実習、瞑想、それらのすべては、主である私を満足させるためなのだと、真理を悟った者はそのようにみなすのである。
 ブラフマー神よ。私はすべての魂の内なる真我である。それゆえ人は、ただ私にのみ、愛を捧げるべきなのである。その者にとって肉体やその他のものは、ただ私ゆえに愛しく思えるのである。
 さあ、今からあなたは、宇宙崩壊前のカルパに存在したがままに、再び、三界と、私の中に隠れるすべてのものを、創造していくがよいだろう。」

 このように言った後、至高者はブラフマー神に宇宙創造の方法を教えると、その神聖なお姿を消されたのでした。

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