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第三章 無上の正しい覚醒を得るための条件――師

 人間に生まれ、修行する条件が整っていたとしても、縁ある師と出会い、師に導いてもらわなかったら、菩薩道に入ることは難しいのです。それは、過去に積んだ悪しき習性の力が強いからです。
 よって、縁ある正しい師に親しみ近づかなければなりません。

 無上の正しい覚醒を現実に得たいならば、まず最初に、師に帰依し、親しみ近づくことが重要です。
 無上の正しい覚醒を得るには、功徳と智慧を積み重ね、煩悩と無明を取り除いていかなければなりませんが、その方法を教えてくれて、導いてくれるのが、縁ある正しい師なのです。

 師は、
①知らない道を行くときの道案内のようなものであり、
②恐ろしい地域に行くときの警護のようなものであり、
③大きな河を渡るときの船頭のようなものであるといわれます。

①道案内

 知らない道を行くとき、道案内がいなかったら、道に迷ったり、道を間違ったりしてしまうでしょう。
 同様に、無上の正しい覚醒を得るための道に入ったなら、大乗の師という道案内が必要です。正しい大乗の師を道案内とすれば、彼は正しく、菩薩の道に弟子を入れてくれます。間違った道に入ってしまったり、声聞・独覚の道に落ち込んでしまう危険性はなくなるでしょう。

②警護

 盗賊や猛獣などがいる恐ろしい地域を行くとき、警護がなかったら、身体や命や財産に危難が生ずるでしょう。しかし強固な警護を伴っているなら、その心配はありません。
 同様に、菩薩道に入って功徳と智慧の糧を積み、全智の都を目指すには、師という警護が必要です。正しい師という警護がなければ、自己の煩悩や、悪魔や、間違った師などによって、善という財宝を奪われ、善趣という命を絶たれる危険性があるのです。
 菩薩の功徳は、師により守護されているのです。

③船頭

 激しい流れの大きな河を渡ろうとするとき、そのような流れに慣れていない者が一人で船やいかだで渡ろうとしても、水に流されてしまったり、沈んでしまったりして、向こう岸に到達することはできないでしょう。しかし熟練した船頭に頼るなら、無事に向こう岸にたどり着くことができます。
 同様に、輪廻の海を渡るとき、船頭に似た正しい師がいなければ、真理の船に乗ったとしても、また輪廻に沈み、輪廻の流れに流されてしまうことでしょう。
 仮に、覚醒を得るに必要な功徳のすべてを完成させたとしても、向こう岸に正しく導いてくれる船頭のような師がいなかったら、無上の正しい覚醒にたどり着くことはできないのです。

 よって、道案内のようであり、警護のようであり、船頭のようである正しい師に、親しみ近づき、帰依するべきなのです。

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