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敬信

 パトゥル・リンポチェのグルはジクメ・ギャルウェ・ニュグといった。ジクメ・ギャルウェは何年ものあいだ山中の洞窟で一人リトリートの生活を送っていた。ある日のことだった。穴から出てくると、さんさんと降り注ぐ明るい日差しに誘われて、彼は思わず空を見上げた。雲が一つ、彼の師ジクメ・リンパの住んでいる方向に向かってゆっくりと動いていた。「あそこにグルがいるんだなあ」という思いが彼の心に浮かんだ。すると、その思いと共に、グルへのあこがれと敬信の感覚が津波のように彼を襲った。それがあまりに強烈で圧倒的だったために、彼は気を失った。意識を取り戻したとき、師の智慧の心の加護があますところなく彼に伝わっていたのである。彼は最高の悟りに、私たちが【現象的現実の消滅】と呼ぶ境地に達していたのである。

(「チベットの生と死の書」より)

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