幸せだ
親族を捨ててしまったから、幸せだ。
郷里への愛着を捨ててしまったので、幸せだ。
この場に頓着しないため、幸せだ。
僧の高貴な衣装を着ないので、幸せだ。
家と家族に愛着を持たないで、幸せだ。
あれかこれかの必要がない、それで幸せだ。
大いなるダルマの富を持つゆえ、幸せだ。
財産の心配をしないから、幸せだ。
何を失う恐れもない、それで幸せだ。
消耗を恐れないので、幸せだ。
心の精髄を円満に理解して、幸せだ。
無理に施主を喜ばせる必要がなく、幸せだ。
疲れることもなく、退屈もせず、幸せだ。
何に対しても準備する必要がなく、幸せだ。
行ないのすべてダルマにかなっているので、幸せだ。
決して動きたいと思わぬから、幸せだ。
死を思っても恐れがないので、幸せだ。
山賊も泥棒も悪党も、決してわたしを悩ますことはできない。
それでいつでもわたしは幸せだ。
ダルマを修める至高の状態を勝ち得て、幸せだ。
悪業をやめ、罪をおかすことから離れ、幸せだ。
徳の道を踏みしめ、憎しみや害心から離別し、幸せだ。
一切のプライドと嫉妬をなくし、幸せだ。
八つのこの世の風の悪を理解して、幸せだ。
静かで、平静さに浸り、幸せだ。
心に心を見はらせて、幸せだ。
希望も恐れもなく、私は永遠に幸せだ。
執着のない輝きの領域にあって、幸せだ。
ダルマダートゥの無分別の智慧そのものが、幸せだ。
内在という自然な領域に落ち着き、幸せだ。
六つの意識の集成を通り過ぎさせ、幸せだ。
輝く五つの感覚の門はすべてが、わたしを幸せにする。
去来する心を止めることは喜び。
わたしはかくもたくさんの幸福と喜びを持つ。
これはわたしが歌う喜びの歌。
これはグルと三宝への感謝の歌。
他の幸せはわたしは望まない。
ブッダとグルの祝福を通して
食べ物と衣服が、後援者から与えられる。
いかなる悪行も罪もなく、喜びに満ちてわたしは死のう。
あらゆる善行や徳が、生きている間、幸せをもたらす。
ヨーガを楽しみ、わたしは真実最高に幸せだ。
――ミラレーパ