ラクシュミーンカラー
ラクシュミーンカラーは、ウディヤーナという地のサンボーラという町のインドラブーティ王の妹であり、幼い頃からその高貴な位の利点を大いに享受していました。偉大なシッダ・カンバラから教えを学び、またタントラの経典について多くの事を知っていました。
兄のインドラブーティ王は、彼女をランカープラの王ジャレーンドラの息子のもとへ嫁がせました。迎えの使者が来たとき、清浄な財産とともに、彼女は一連のダルマについての多大な知識を持って、ランカーへと赴きました。
ランカーの町に着いたとき、出会った多くの人々はみな非仏教徒であったので、彼女は大変悲しくなりました。「惑星や星の配置が悪い」ということで王宮に入れてもらえず、町にとどまっていたとき、王子の側近者たちが肉をたくさん持って狩りから戻り、ラクシュミーンカラーの前にやってきました。それを見て彼女は言いました。
「な、何ですか、これは! 誰がそれらの動物を殺したのですか。どこから持ってきたのですか。何なのですか。」
「我々は狩りに行って来たのです。あなたの夫である王子が、野に入ってこれらを射止めました。」
彼女は、狩りの話と、また、ただ胃を満たすためだけに食べることに、大変な嫌悪を感じました。
「私の兄はダルマを保護している王であるのに、このような仏教を信奉しない人のもとに、どうして嫁いでいることができようか。」
このように思い、彼女は気を失いました。意識を取り戻したとき、彼女は、財はその町の市民に、装飾品は従者たちに渡し、宮殿に行きました。
それから後、十日間、誰も中に入らないように言って、ラクシュミーンカラーは引きこもりました。髪を切り、衣装を脱ぎ捨てて裸になって、身体に灰やごま油を塗り、気の触れたように振る舞いましたが、彼女は心の目指す精髄のところに向かって、確実な一歩を踏み出していました。
ジャレーンドラ王たちは悲しみに踏みにじられました。医者に薬を持って行かせましたが、近づく者を彼女はみな、真鍮の装身具を振り回して追い出しました。兄のインドラブーティ王のもとにも使者が送られましたが、彼女の心は依然として変わりませんでした。
王女は脱走を考えました。彼女の心は法楽の中に安住し、輪廻に失望していたからでした。彼女は気が狂った苦行者のように振るまい、ランカーの宮殿を脱出して、残飯を食べ、死体捨て場で眠り、精髄の意味を体験し、七年で成就を得ました。
ジャレーンドラ王に仕える掃除夫が彼女に奉仕し、教えを授けられました。彼は、いくつかの功徳を得、さらに他の経験のために修行をしていました。他の人たちはそれを知りませんでした。
そんなある日、ジャレーンドラ王が従者を連れて狩りにやってきました。王は道に迷い、ついに森から抜け出せず、その夜は自分の家に戻ることができませんでした。王が休憩する場所を探していたところ、ラクシュミーンカラーが寝ている洞窟に来ました。
「このキチガイ女が、また何をしているのだろう?」
そう思いながら覗いてみると、中にはまばゆい光がありました。そして無数の天女がすべての方向から彼女を礼拝し、供養をしていました。王は正しい浄信を生じ、その夜はそこへ泊まり、その後、自分の宮殿へと帰っていきました。
そして再び王はラクシュミーンカラーの洞窟へ戻り、彼女に礼拝しました。
「なぜ、わたしのような女に礼拝するのか。」
とラクシュミーンカラーは尋ねました。王は教えを願いましたが、ラクシュミーンカラーはこう言いました。
輪廻のすべての衆生は、苦悩を有している。
幸福や至福は何もない。
誕生と老いと死などに襲われ、
輪廻の最高位である神々でさえも、
それらから逃れることはできない。
三つの悪い世界は苦しみである。
あちらこちらで食べても常に飢えており、
熱さと寒さに限りなく苦しめられる。
それ故に、王よ! 解脱の大楽を求めなさい。
「あなたはわたしの弟子ではない。あなたのところのある掃除夫がわたしの弟子であり、彼があなたの師となるだろう。」
「掃除夫はたくさんいます。どのように見分ければいいでしょうか。」
「彼は人々に食べ物を施しているだろう。夜、彼のところへ弟子入りしなさい。」
王はそのような掃除夫を見つけ、注意深く観察し、呼び寄せました。彼を玉座につけ、礼拝し、教えを求めると、掃除夫は精神的な祝福を与えるアビシェーカを伝授しました。
その後、掃除夫とラクシュミーンカラーの二人は、ランカープラで神変を示した後、ヴァジュラヴァーラーヒーの生起次第と完成次第のステージを示し、そしてその身のままでダーカの領域へ行きました。
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