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ヨーガヴァシシュタ・サーラ 第二章『世界の幻影の本性』

第二章
『世界の幻影の本性』

 聖仙ヴァシシュタは言いました。

1.神話にあるマンダラ山の静寂のように、心が調御されていれば、かき乱された海の波も平穏になる。

2.思考の波の浮き沈みは、世界の出現と消失を引き起こす。それゆえ、プラーナと欲望をコントロールして、心の動揺から自由になりなさい。

3.この世界は想像の産物である。妄想を止めれば、この世界は間違いなく無に還る。

4.描かれた蛇が本物であるという誤った概念は、それはただの絵であるという認識によって崩れ去る。同様にして、世界もまた打ち砕かれる。

5.人の誤った思考の産物――この永続的苦痛に満ちた世界――は、亡霊のようである。それは真の実在と非実在の識別吟味によって取り除くことができる。

6.おおラーマよ、マーヤーが破壊されるとき、我々の中に聖なる至福が生じるのだ。マーヤーを見、知ろうとするいかなる試みも失敗に終わる。故に、マーヤーの本性は見られることはなく、知られることもない。

7.愛しきラーマよ、この世界の魅惑的なマーヤーがどのように素晴らしいかを知りなさい! (マーヤーの魔術のもとで)人は、身体に広がる真我を知ることさえできない。

8.ガンダルヴァによって作られた(偽の)町や、蜃気楼の中の水のように、この目に見える世界は非現実である。それは確かに存在していないのだ。

9.非常に近くにありながら目の当たりにすることのできないそれは、絶えず「ここ」に存在する。それはサット(永遠の実在)、真我と呼ばれている。

10.湖の岸辺に立つ木の姿が反射した水面のように、目に見えるすべての事物は永遠なる自己存在の智慧の鏡に映る、ただの投影である。

11.ロープが生み出す蛇の錯覚のように、宇宙意識の単なる振動であるこの創作物は、神の実在に対する認識の不完全性から生じている。それは完全なる神の叡智によって姿を消す。

12.感覚対象への欲望によってこの世の幻影なる束縛は強くなる。そのような欲望が減少すれば、束縛も弱まる。

13.海の波のように騒がしい心は、永遠に穏やかで平安な、偉大なるパラマートマン(至高の真我)より生じる。

14.思考は常に勢いよく、故意に様々な想像にふける。このような想像力が、美しいこの世界を心に呼び起こす。

15.子供が、自分の空想で創った幽霊に苦悩するように、この非実在の世界も、無智な者には実在として映る。[そして死ぬまで苦しめられる。]

16&17.黄金の概念を持たない者は、ただ黄金の腕輪の形状のみを認識する。「黄金」というものについてのわずかな認識さえ持たない。同様に、無智な者は、町や家、山や蛇などを実在として認識する。彼は認識している対象物は非実在であり、純粋観照者のみが実在だと気付かない。究極の実在を見ることができないが故である。

18.無智な者の世界は苦悩に満ちている。智慧ある者は、この世を至福の海だと考える。盲目な者には暗闇の世界も、視力を授かった者には素晴らしい現れとなる。

19.青空に突然現れた雲が徐々に散っていくように、この全宇宙も真我の中に現れ、消滅する。

20.太陽光線が太陽と同一であると知る者にとって、光は太陽そのものである。彼はすべての選択肢を超越している。

21.布を分析すれば、それは糸から出来ていることが分かる。同様に、この世界もブラフマンに他ならない。

22.甘露のような意識[ブラフマン意識]の海から、やがてはそこにおさまりゆく多種多様な万物の波動が生じる。世界が存在する間も、ブラフマンでないものがあるだろうか?

23.泡や波、氷や気泡が水と何ら変わらないように、真我から生まれた世界も、永遠に真我と変わることはない。

24.粘土の中には壷は見えないように、また波は水に消え、金の耳飾りは金に溶けて無くなるように、この世界も真我の中に溶けてゆく。

25.ロープに対する無智が幻の蛇を生み、ロープを認識すればその幻影は消える。真我への無明によりこの世界は実在して見え、真我の明智を得るとそれは消滅する。

26.おおラーマよ、不可視である真我への記憶の喪失により、世界は実在して見える。ロープが幻影の蛇を生むように、神(パラメーシュワラ)によりこの世界は明らかになる。

27.目覚めている時の経験は夢の中では非実在であり、記憶がある時でさえその存在はない。死は誕生の時に存在せず、生は消滅の時に存在しない。

28.ブラフマンのみが、唯一の実在である。原因と結果のカルマの法則は、ブラフマンには生じない。
 動いて見える映画は、真実にはスクリーンでしかない。映画の中で誰かが行ったり来たりしても、それは真実ではない。ただスクリーンのみが実在している。
 同様に、すべての土台・基礎であるブラフマンのみが、唯一の実在なのである。

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