ヨーガの基礎(12)
◎マントラ
はい、続いて瞑想に入りましょう。瞑想ももちろんいろんな瞑想があります。そのうちまず今日はマントラね。マントラをつかった瞑想を少しだけいきましょう。
マントラっていうのは、まあこれも聞いたことある人もない人もいると思いますが、日本ではね、真言といわれますね。真言宗とかの真言と同じです。マントラ。これはつまり何かというと、音というのは全て意味がある。簡単にいうと、例えば精神をいらつかせる音もあれば、安らがせる音もある。
西洋では昔からクラシック音楽とかで音楽療法とかもありましたけども、インドでは人間の発する音の中で、この音の出し方をすると心が安定するとか、この音の出し方をすると精神が非常に清らかになるとか、いろいろそういうのを考えだしてきたっていうか、発見してきたんですね。その音の組み合わせがマントラです。つまりわれわれに非常に良い影響を与える音の組み合わせです。
だけどこのマントラは本来意味はないです。言葉じゃないので意味はありません。つまり良い音を合わせてるだけなんだね。だからこれはお経じゃないです。お経っていうのはもともとは意味のある言葉を読んでるだけなんで。
例えばね、みんな知ってると思うけど、有名なお経でいうと般若心経がありますね。般若心経でいうと、最後の一文だけがマントラです。つまり最初の「かんじーざいぼーさつ」とかいうところはあれは全部お経だけども、最後の「がーてーがーてー」以下、あれは全部マントラです。
で、般若心経をこの中で知ってる人もいると思いますが、例えば「ぎゃーてーぎゃーてー」のマントラね。あれは中国語訛りなんです。つまり漢字に当てはめてるから、本来のマントラの意味がちょっと失われています。ちょっと中国訛りの般若心経のマントラ、ちょっと私も忘れちゃったけど、確か、
「ぎゃーてーぎゃーてーはーらーぎゃーてーはらそーぎゃーてーばじそわかー」
か。これ中国語読みね。でも本来本当のマントラは、
「ガテー・ガテー・パラガテー・パラサンガテー・ボーディ・スワーハー」
っていうんだね。こっちの方がきれいでしょ? ちょっと言い方の問題かもしれないけど(笑)。 もう一回言うよ。中国語のパターン。
「ぎゃーてーぎゃーてーはーらーぎゃーてーはらそーぎゃーてーばじそわかー」。
で、もともとのマントラは、
「ガテー・ガテー・パラガテー・パラサンガテー・ボーディ・スワーハー」。
ちょっと私の心もこもったかもしれないけど(笑)。
例えばさ、最後だけとっても、「ばじそわかー」ですよ。「ばじそわかー」。本当は「ボーディ・スワーハー」なんです。「ボーディ・スワーハー」が漢字に当てはめられちゃって「ばじそわかー」になっちゃった(笑)。だからちょっとマントラの力が落ちてるんだね。
だからマントラっていうのは意味じゃないので、本来の音のヴァイヴレーションをできるだけ忠実に唱えなきゃいけない。
◎お経とマントラ
で、もう一つ、じゃあお経は何なんだと。例えば般若心経にしろ、いろんな日本で唱えられてるお経っていうのは、あれははっきり言うとあまり意味がない。あまり意味がないっていうのはどういうことかっていうと、お経っていうのは、例えばですよ、インドでサンスクリット語でお釈迦様の教えや、あるいはヨーガの聖者の教えがいっぱい説かれました。それが例えば中国に渡った段階で、当然中国人はサンスクリット語を読めないので、中国語に訳しました。あるいはチベットに渡ったら、当然チベット人はチベット語に訳しました。中国人のために中国語に訳されたお経が日本に入ってきました。なぜか日本人は中国語で読んでる(笑)。
お経は読んでありがたがるもんじゃないんです。お経はマニュアルなんです。つまりお経っていうのは読んで、例えばお釈迦様はこう言いました。「こうです、こうです、こうです」。「ああ、なるほど。このように考えればいいのか」っていうのをちゃんと理解して――つまりわれわれが数学を学ぶときに数学の本を読むように、野球を学ぶときに野球の入門書を読むように、そのように読まなきゃいけないんだね。
で、マントラはそうじゃない。マントラは意味がある言葉ではなくて、音のヴァイヴレーションなので、今度これは正確に音を学んで、音を表現しなきゃいけない。
まあ、いろんな考え方があるから別の考え方があってもいいのかもしれないけど、一応オーソドックスなことを言うと、そういうことです。
つまりわたしが思うのは、お経を唱えるんだったら、日本語に訳した分かりやすい翻訳文を読んだ方が良いです。で、マントラを唱えるんだったら、できるだけ正確な音を調べて唱えた方がいいです。
◎最も基本的なマントラ
で、今日はそのマントラをいきますが、このマントラの中でも一番基本的なマントラね。これはですね、まずちょっと日本語にはない音なんですが、「オ」と「ア」の中間の音。だから「アー」じゃなくて「オー」でもなくて、「アー」って感じです。まあ自分なりにでいいけど。「オ」と「ア」の中間の「アー」って音。これを長ーく出します。で、これがちょっと息が続かなくなってきたら途中で「ウー」に変えます。つまり「アーウー」。で、最後は鼻から抜く感じで、「ンー」ってこう消えていく感じです。だからちょっと短くやってみると「アーウーンー」これですね。これをもうちょっと「アー」を長くやります。これを自分のペースでいいので、「アーウーンー」と一息で、終わったらまた息を吸ってまた繰り返します。で、これを別にみんなで声合わせなくていいです。自分のペースでまったく構いません。これを何度か繰り返しましょう。はい、じゃあやってみましょう。
(アウムのマントラ実習中)
はい。ではいったん止めましょう。このマントラもさっきも言ったように、いろんな組み合わせがあるので、無数のマントラがあります。今日はまあこれだけですが、普段からこれも唱えるとね、とてもいいですね。われわれの音の世界を浄化してくれるので。
ただ環境的に声が出せないときってあると思うので、そういうときはね、心の中でやる方法でもいいです。出せるときは出した方がいいんだけど、出せないときは心の中でこの「アーウーンー」を唱えてみる。これを何度か繰り返すのも良い方法です。