yoga school kailas

ヨーガの基礎(10)

◎ベースの呼吸法

 はい。じゃあ、呼吸法にいきます。呼吸法もヨーガの呼吸法はいろんな呼吸法がありますが、そのまず一番ベースになる呼吸法をいきます。これはやったことがある方もない方もいると思いますが、簡単に言いますと、一:四:二の割合で息を吸って、止めて、吐くを繰り返します。
 で、これを原則的には右手を使ってやります。疲れてきたら左手を使ってもいいけど、原則としては右手を使って、指の使い方は好きでいいんだけど、例えば一例としてはこういう感じ。右の親指を右鼻にあてて、人差し指を眉間にあて、中指と薬指で左鼻を閉じるとかね。もう好きなやり方でいいです。こういう感じで右手を操作してどちらかの鼻を開けて息を吸います。両鼻を閉じて息を止めます。で、逆の鼻から息を吐きます。そしたらこの吐いた方の鼻でまた息を吸います。で、また閉じて止めて、逆で吐きます。つまり左で吸って、止めて、右で吐く。右で吸って、止めて、左で吐く。この繰り返し。吸った方と逆の鼻で吐きます。吐いた鼻で吸って、逆の鼻で吐きます。この繰り返しを一:四:二で行います。
 これは理想はですね、だいたい四:十六:八くらいができたら理想です。でも初めての人はちょっときついかもしれないので、その場合は三:十二:六くらいでいいです。つまり四秒で息を吸って、十六秒止めて、八秒で吐くということです。これがきつかったら、三秒で吸って、十二秒止めて、六秒で吐く。で、もしこれもきつかったら一:二:二に変えてもいです。つまり三秒で吸って、六秒で止めて、六秒で吐くでも構いません。で、これもできなかったら全体的にもっと落としてもいです。つまり二:四:四にするとかね。自分のできるペースで全く構いません。
 で、これがすべてのヨーガのいろんな呼吸法のベースになります。これプラスいろんな要素が加わった呼吸法がありますが、これが一番のベースですね。

◎呼吸法の意味

 呼吸と精神状態の関係っていうのはさっき言いましたが、簡単に言うとね、みなさんが例えばこういうみんながいる場所じゃなくて、一人だけの部屋で、自分がリラックスできる部屋にゆったりと座ったりしてて、ゆったりと普通に何も考えないで、普通に無意識に呼吸してる呼吸数がどれくらい呼吸してるか、一分間に何回呼吸してるか。これ暇なときに計ってみてください。一説によると平均十六回といわれています。一分間に人間の平均の呼吸の回数が十六回。単純に言いますと、十六回よりもし多かったら、ちょっと精神不安定です。で、逆に十六回よりも少ないほど精神は安定しています。簡単にいうとね。
 つまり単純にいうと、人間の精神がちょっとこう安定していないときっていうのは、呼吸が浅く速くなる。これはみんな分かると思う。緊張してるときっていうのはとても呼吸がしづらい。あるいは呼吸がちょっと速くなる。逆にリラックスしてるときっていうのは呼吸がゆったりとする。さっきも言ったようにその相関関係を逆手にとってるんです、これは。つまり意識的にこの、例えばこれでいったら四秒で吸って、十六秒止めて、八秒で吐くっていうことは、一分間に二回ぐらいしか呼吸しないわけです。で、これを永遠にやり続けるのは無理だとしても、例えば五分なり十分なりこれをやることで、非常にゆったりした心の安定が生み出される。
 で、もう一つ言うと、じゃあなぜ鼻を交互に使うのか。これも簡単にだけ言いますが、さっき人間の体中を気の流れが通ってるって言いましたが、この気の流れは全体で――まあ、ヨーガの計算では七万二千本あるといわれています。しかしその七万二千本がおおまかに右系か左系かに分かれるんです。その右系か左系かっていうのは、実はこの右鼻と左鼻も関係してるんです。つまり簡単にいいますと、右鼻で呼吸すると体の右にエネルギーが偏ります。左鼻で呼吸すると左に偏ります。
 で、さらにいうと、右のエネルギーっていうのは、現代的にいうと交感神経と関係があります。逆に左っていうのは副交感神経。つまり右でばっかり呼吸してると体は熱くなって、心は興奮してきて、ちょっとハイな感じになります。逆に左でばっかり呼吸してると体が冷えてきて、ちょっと怠け者になるっていうか、やる気がなくなってきて、ちょっと体が重くなってきます。
 で、その人の性質によって、右が詰まりやすいとか、左が詰まりやすいとか、あるいは一日の中でも鼻がどっちか――例えば夕方は右が詰まってて、朝は左が詰まるとかいろいろあると思うんだね。それに左右されちゃうんだね。だからそうじゃなくて意識的に十分に、例えば左だけで吸って右で吐く。右だけで吸って左で吐くっていうのをバランス良く繰り返すことで、左右のエネルギーのバランスをとろうとしてる。こういう意味があります。

◎腹胸式呼吸

 それから呼吸の仕方は腹胸式呼吸が理想です。腹胸式っていうのは、まず腹式呼吸っていうのは息を吸ったときにおなかが膨らむ。吐いたときにへこむ。これが腹式ですね。で、胸式っていうのは吸ったときに胸が膨らむ。吐いたときに胸がしぼむ。これが胸式。じゃなくて、理想は腹胸式。腹胸式っていうのは前半でお腹が膨らみます。後半で胸も膨らみます。つまりこれは何を言ってるのかというと、腹式呼吸っていうのは、よく考えてみてください。お腹で呼吸するわけないじゃないですか(笑)。つまりエネルギー的にはもちろんお腹に行ってるんだけど、酸素がお腹に入るわけがない。つまりこれは横隔膜を下げることによって肺の下の方を使ってるんです。腹式呼吸の場合はね。で、胸式呼吸の場合は意識的に横隔膜を上げることによって肺の上部を使ってるんだね。つまり腹胸式っていうのは肺全部使っちゃうっていう呼吸法です。つまり前半でまずお腹を意識的にグーッと出すことによって、横隔膜を下げて肺の下の方に空気を入れます。で、後半で胸を上げることによって上の方にも空気を入れてあげます。
 つまりそれを例えば四秒だったら、この四秒を使ってやるわけだね。つまり前半の二秒でお腹を膨らませ、後半の二秒で胸を膨らませる。
 で、これね、できない人はその真似事だけでもいいです、最初は。というのはまだ内蔵であるとか、横隔膜が硬い場合、自分で意識的に腹式とか胸式とかできない場合があるから、できる人はやってください。できない人は真似事的に――つまりイメージ的にお腹にまず入って、次に胸に入るような感じで吸ってください。この秒数は正確じゃなくてもいいです。自分の心の中のカウントでいいです。それが時計のカウントと比べて若干早かろうが、遅かろうがあまり問題じゃない。このバランスが大事なので。自分の中のカウントで構いません。

(呼吸法の実習)

◎呼吸法の重要性

 大雑把に言うと、ヨーガっていうのは体操と呼吸法と瞑想の三つがあります。で、理想はもちろん毎日体操やって、呼吸法やって、瞑想もやる。これが理想なんだけど、どうしても現代の場合、時間がないとか、あとたまに、今日はちょっとやる気がないとか、いろいろあると思います。その場合、優先順位としてはまずは呼吸法です。
 つまりどういうことかというと、どんな日も、他のことをやらない日があっても、呼吸法だけは毎日やった方がいいです。
 ヨーガのコツは、例えばですよ、「一週間に一回、滅茶苦茶たくさんヨーガします」と。「でも毎日はやりません」――よりも、「毎日五分しかやっていませんが、毎日やってます」の方が、ヨーガは進みます。で、その中でも呼吸法を優先させたら良いです。
 というのは、呼吸法っていうのはすべてに関わってる。呼吸がしっかりできるとアーサナも効果を増すし、瞑想も効果を増します。特に現代のわれわれっていうのは呼吸が浅くて、しかもちょっとせわしなくなっちゃってるので、その改造っていうかな。深くてゆったりとした呼吸。そしてそれに伴う気の流れをまず体に覚えこませるのが先決なんですね。
 だからちょっとこう、時間がないときでも――だから五分でもいいです。まあ、あるいは三分でもいい(笑)。あるいは、よくね、朝が本当は一番良いんだけど、「いやー先生、朝起きれないんです」っていう人がいるんだけど、最悪っていうか、最低、寝ながらでも良いです。
 あのさ、逆に変に真面目な人って、「さあ、ヨーガだ!」って言って、しっかりと環境を整えないとできないって人がいるけど、何もやらないよりは、寝ながらでもやった方が良い。つまりベッドの中で、朝起きて、「ああ、朝だ」って思って、「もうちょっと寝てたいな」と。で、寝ながら、四:十六:八ってやっても全く構わない。
 あるいは手を使わない方法だったらどこでもできる。例えば電車に乗りながらでも、あるいは歩きながら――歩きながらはちょっと辛いけど、歩きながらでも両鼻でいいので、吸って止めて吐いて。これを一:四:二で繰り返す。これでも立派に呼吸法になります。
 だから本当にどんな形でもいいので、ちょっとでも呼吸法は毎日やると良い。
 で、もうちょっとやる気のある人。もうちょっとやる気のある人の場合は、理想の呼吸法はもっとコンスタントに。もっとっていうのは、一日に四回やるといいといわれます。四回というのは、まず朝、昼、夕方そして真夜中。この四回。もうちょっとリアルに言うと、日の出、真昼、日が沈む頃、真夜中。この四回ね。これはできる人はやってください。これも一回の一セットは短くていいです。五分でもいいです。朝起きて五分間呼吸法する。昼休みに五分間呼吸法する。夕方、日が沈む頃に五分間やる。夜寝る前に五分間やる。これでかなり進みます。ヨーガ全体がね。
 これがすべてのベースで、それプラスいろんなことを狙った呼吸法がありますが、それはまた――これから何回かやるうちにその先のものもいろいろ指導していきたいと思います。

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