マルパの生涯(3)
インドに到着し、マルパはパンディタたちとシッダ・グルに会い、聖なるダルマの重要な教えを受ける
マルパとニュは、ネパールに到着しました。ある日、山の中で大勢の人たちがうろついているのを見て、「何かあるんですか?」と尋ねると、誰かが答えてこう言いました。
「主ナーローパのネパール人の二人の弟子、チテルパとパインダパがここにいる。女性の献身者がガナチャクラをおこなっているところだ。あなたたちもチベット人だから、そこに行けば何か食べ物と飲み物をもらえるかもしれないよ。」
主ナーローパの名前を耳にしただけで、マルパの中で前生からの縁が目覚め、計り知れない懐かしさがこみ上げてきました。これ以上の機会はないと思い、マルパはニュに言いました。
「どんなことがあっても、絶対に行かなければならない。」
二人は見物に行き、宴の捧げもののおさがりをもらいました。
ちょうど、ネパール人のチテルパがグヒャサマージャの教えを説いているところで、二人はそれに耳を傾けました。
チテルパはパインダパに言いました。
「このチベット人たちは、まだアビシェーカを受けていないかもしれない。(彼らに教えを聞かせると、)我々は秘密を漏らして、サマヤ戒を破ることになってしまうかもしれない。」
パインダパは言いました。
「彼らには我々のネパール語の説法は理解できないよ。チベット人なんて牛みたいなもんだ。」
ニュはネパール語が理解できたので、これを聞いて怒りました。彼は説法を聞くのをやめ、背を向けると、マントラを唱えていました。
次の日、マルパは言いました。
「今日もまた捧げもののおさがりをもらい、ダルマを聞きに行こう。」
ニュは言いました。
「行きたいなら行けばいいさ。私は、私のことを牛呼ばわりするような奴らのところには行きたくない。そういうネパール人たちこそ、本当の牛だ。」
そこでニュは残り、マルパはダルマを聞きに行きました。
チテルパが言いました。
「昨日ご一緒だった友達はどこですか?」
マルパは答えました。
「彼はネパール語が分かるので、昨日のグル・パインダパの発言に怒ってしまいました。だから今日は来ませんでした。」
チテルパは言いました。
「彼と私にはカルマの縁がありませんでした。しかしあなたが来てくださって良かった。」
マルパは、シュリー・チャトゥピータと意識の放出の口頭の教え、そしてヴェーターリー女神の許可と祝福を受けました。
マルパはパインダパに言いました。
「サンスクリット語を少ししか知らないので、もっと翻訳の勉強をしたいと思います。しかし、あまりたくさん金を持っていないのです。」
マルパは二人に1サンずつの金を差し出し、彼らを喜ばせました。
二人は言いました。
「金をあまり持っていないのなら、主ナーローパのもとへ行くべきです。あのお方は、金を要求せずにダルマを説き明かしてくださる唯一のグルです。」
彼らは、主ナーローパがどれほど偉大であるか、どれほど素晴らしい長所をそなえているかについて語りました。そしてさらにこう言いました。
「我々はあなたを、われらのグルのもとへ送り出しましょう。彼はまさに第二の仏陀のようなお方です。暑さになじむために、しばらくの間、ここにおとどまりなさい。」
彼らは親切なアドヴァイスをたくさんしてくれました。
マルパは二人に対して計り知れないほどの信頼を感じました。そして、「自分が死のうと生きようと、そんな希望や恐怖は捨て去らねばならない。そしてナーローパのもとへ行かねばならない」と思いました。
二人がアドヴァイスしてくれたとおりに、マルパは暑さになじむためにスワヤンブーナートに三年間とどまりました。そしてその間に、知っておかなければならないダルマをすべて、ナーローパの系統から学びました。
三年が経過したとき、ダルマの兄弟である二人はマルパに手紙を持たせ、ナーローパのシュラーマネーラ(少年出家者)の一人であるプラジュニャーシンハに渡すように言いました。それにはこう書かれていました。
「このチベットの方にぜひダルマを説くべきです。この方を間違いなく主ナーローパのもとへお連れしなさい。」
さらなる助言ももらった後、マルパは、ゾキの旅仲間とニュとともに、出発しました。そして彼らは多大な困難にあいながら、インドまで旅をしました。
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