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マハープルシャ・シヴァーナンダの生涯(長編)(16)

 インドは、数多くの聖地が蜂の巣のように点在し、大小の文化の中心として神や聖者に捧げられた特定の寺院や聖廟は重要性を増しつつあった。スワミ・シヴァーナンダも他の兄弟弟子達と同じように、これらの聖地の多くを放浪修行者として訪れた。正確な情報がないので、われわれには、年代順に系統立った彼のこの時期の人生や巡礼について記述することはできない。スワミが、ブッダガヤーとヴリンダーヴァン、ヴァーラーナシー、アラハバード等の北インドの様々な聖地を訪れたことは既に述べてある。

 1889年初頭、スワミは、僧院から離れて無執着の放浪修行者として生きたいという渇望を強く感じた。
 そして彼は、ヒマーラヤの二大聖地、ケーダルナートとバドリーナーラーヤンへの巡礼の旅に出た。標高12000フィートのケーダルナートの神聖な雰囲気は独特で、彼を大いに感動させ、生きた至高者の存在を感じた。
 寺院の礼拝の儀式を取り仕切っていた僧侶は、スワミの神的光輝と内省的な様子に畏敬の念を抱き、あらゆる面から彼への援助を惜しまなかった。その地に数日滞在した後、スワミはさらに標高の低いバドリーナーラーヤンへと旅路を続けた。

 バドリーナーラーヤンについて、マハープルシャはスワミ・ブラフマーナンダにこう語った。

「アラカーナンダ河の河岸沿いにあり、雪に覆われた山々の山頂に囲まれた美しい地バドリーナーラーヤンに着いて四日が過ぎようとしている。ここでは、アラカーナンダが雪を貫いて流れ出でている。
 一部の場所では、河が完全に雪に覆われていて水が全く見えない。バドリーナーラーヤンに来る道中、私は雪の上を歩かなければならなかった。ときにはその距離は半マイルにも及んだ。にも関わらず、この地はケーダルナートほどのすごい寒さではないように感じる。」

 バドリーナーラーヤンでは、スワミは主バドリーナーラーヤン(ヴィシュヌ)の寺院に数日滞在し、礼拝と瞑想を楽しんだ。

 神的高揚の記憶に満たされつつ、それからスワミはヒマーラヤの町アルモーラまで下り、そこで休養と充電のための数ヶ月を過ごした。
 アルモーラでの滞在中、スワミは真摯な真理の求道者たちに出会い、彼らと神や彼の師のメッセージについて語り合った。彼の神聖な性格に感銘を受けた彼らのうちの何人かは、彼の信奉者となった。
 ここで、地元の成功者として大変尊敬されていた商人ララ・バドリシャ・トゥルゴリアの名前をあげておこう。ララジはスワミを敬愛し、彼を自宅へ招いた。スワミの滞在中、彼はあらゆる機会を見つけてはスワミと付き合い、彼に奉仕した。バドリシャは跡継ぎの息子がいないことで、彼の死と共に彼の家系は途切れてしまうのだと大変悲しんでいた。
 ある日、彼はまるで素朴な子供のように、マハープルシャに歩み寄り、胸の内を吐露し、彼が息子に恵まれるよう祝福を与えてくれるよう懇願した。男の真剣な嘆願に心を動かされたスワミは、神に祈った。奇妙なことに思えるが、そのうちバドリシャの妻は息子を産み、彼らはその息子を、スワミの祝福と祈りに感謝を込めて、シッダダース(成就者のしもべ)と名付けた。

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