マチク・ラプドンマ
自分の身体を切り刻んで仏陀、神々、悪魔、その他すべての衆生に供養するという「チュー」の瞑想法を確立した、チベット仏教の代表的な女性修行者。
仏教はインドで生まれ、進化し、他の国々に移入された。チベットには地球上で唯一、完成期のインド仏教のほとんどすべてが移入されたが、この「チュー」は唯一、チベットからインドに逆輸入されてインドでも行なわれるようになった修行法であるといわれる。
「チュー」はすべての衆生に自分の体を供養するが、特に魔的な存在に自分の体を捧げることがクローズアップされ、またチューを行なう場所も悪霊が出そうなおどろおどろしい場所が良いとされるため、単なる悪魔払いの技法であると勘違いされることもあるが、実際は「チュー」は「般若経」に基づいた「空」の思想と、慈悲の心に基づいた修行法である。
修行途上で、魔的な存在は様々なかたちでやって来る。目に見えないかたちで心に忍び込んで来ようとする魔には念正智して常に注意しなければならないが、実際にヴィジュアル的にやってくる場合も多々ある。わたしも若いころ、様々な魔的な存在と遭遇した。そのとき、まだこのチューの瞑想をよく知らなかったにも関わらず、自分の体を切り刻んで魔に与える瞑想を自然に行なっていた。「この体が欲しいのか? じゃああげるよ」という感じだ。
昔、あまりヴァイブレーションがよくない場所に滞在していたとき、魔的な存在がよくやって来ていたことがあったが、このときもこの瞑想をよくやっていた。そうすると魔的な存在に対しても余裕が出てくる。あるとき寝ていると二人組の魔がやってきたのがわかった。それは背の小さい、かわいいマスコットのような感じだった。彼らはわたしを脅そうとして来たようだったが、わたしはそのとき魔に対して余裕があったので、「おお、よく来たな。ゆっくりしていけよ」と呼び掛けた。すると彼らは動揺し、つむじ風のようになって窓から去って行った笑
しかし魔といってもいろいろある。こういうかわいい魔ばかりではなく笑、実際に恐ろしい強力な魔もいろいろいるので、常に神仏や師への帰依、そして他者への慈悲・四無量心の修習を怠らないことだ。心が強力な帰依心や四無量心で満ちている者には、魔は近づくことができない。