パドマサンバヴァの秘密の教え(25)「ボーディチッタ」
3.ボーディチッタ
道としてボーディチッタを生起させる教え
偉大なグル・パドマカラは、アミターバ如来の放射から生まれた方である。彼は数多くの大乗経典によって自らの心を訓練し、一人子を愛する母のように、すべての衆生を愛する。彼は常に他者の幸福のために行動し、輪廻を流転する生き物達すべてをニルヴァーナに連れていく船頭である。彼は請われなくても、育てるべきすべての人々に教えを与える。大いなる慈悲を備えた彼は、すべての菩薩の王なのである。
師がモンカのセンゲ・ゾンの洞窟に滞在していたとき、私、カルチェンの王女ツォギャルは、菩提心を生起させ、心は至高の悟りの状態に置かれた。
私は偉大な師に貴重な物質で作った曼荼羅を捧げ、このように教えを請うたのである。
「エマホ! 偉大な師よ、すべての生き物に対する慈愛と慈悲を育てたならば、大乗の教えで唯一重要なことはボーディチッタ(菩提心)の訓練をすることだと、あなたは教えて下さいました。そうであるなら、いかにしてボーディチッタの訓練を修習すべきなのでしょうか?」
師はこうお説きになった。
「ツォギャルよ、もし大乗の道に入ってボーディチッタを修習しないならば、あなたは小乗に落ちてしまうだろう。ゆえに常に心を至高の悟りの状態に置き、そして他の人々に利益を与える訓練に尽力することが不可欠なのだ。
これに関する説明は、大乗経典やタントラに無数に詳述されている。これらの教えに即してボーディチッタを簡潔に説明すると、それは三つの部分に分けられている。外側の訓練と、内側の訓練と、秘密の訓練である。」
◎ボーディチッタの外側の訓練
王女ツォギャルは師にこう尋ねた。
「外側の訓練の方法とはどのようなものでしょうか?」
師はこうお説きになった。
「ボーディチッタの外側の訓練には、12のポイントがある。
①ボーディチッタの訓練の要点
②その分類
③その定義
④修行者人物の素質
⑤誓願の対象
⑥それを受けるための儀式
⑦訓練の利点
⑧訓練をする理由
⑨訓練をしないことで生じる不利益
⑩指針
⑪それを失うことと保つことの境界線
⑫損なわれたときの修復方法」
王女ツォギャルは師に尋ねた。
「師がお説きになったこれらのポイントは、どのようなものなのですか?」
①ボーディチッタの訓練の要点
師はこうお説きになった。
「ボーディチッタを生起させる要点は、すべての衆生を輪廻から解放するために、至高の悟りを得ようという誓いをもって願うことである。」
②分類
「経典には多くの分類が説かれているが、簡単に分けると、二種類ある。つまり大志と実践である。
大志は衆生の幸福を達成させる願いであるが、それだけでは不十分である。すべての衆生を幸福にするために実際に行動することが大切なのだ。
自己中心癖から解放されていない、偏見のある人にとっては、ボーディチッタを生起させることはかなり困難だろう。」
③定義
「ボーディチッタの定義は、以前には生起したことのなかった全幅の信頼の態度が自ずと生起することである。これは、功徳の堆積を集めるのを怠った者には生起しないだろう。」
④修行者の素質
「ボーディチッタの訓練を修習する者は、一定の素質をもっていなくてはならない。
声聞や独覚とは違い、大乗の教えに対して大志を抱く者でなくてはならない。
偉大な智性によって、その者は完全に疑念から解放されていなくてはならない。
師と三宝に帰依し、間違った、あるいは劣った教えに対して飽き飽きする感情を持っていなくてはならない。
その者は自ずと平和的であり、穏やかである。
チベットの人々はダルマに対し敵意を持ち、大臣達の心は邪悪で、王は騙されやすい。大乗の教えを受けるに足る人はほんの数人だけである。ツォギャルよ、友や敵に向ける偏愛から解放されなさい。」
⑤誓願の対象
「ボーディチッタの誓いを立てる対象は、大乗の大志を抱き、その心は慈愛と慈悲にあふれている師であらねばならぬ。その師は一瞬たりとも自利のために振舞うことなく、自らの教えを逸脱することなく遵守する師でなくてはならない。
この闇の時代においては、資質をそなえた師に従わない者は、マーラの手に落ちるであろう。」
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