パドマサンバヴァの秘密の教え(125)「道の最大の障害」
◎道の最大の障害
ツォギャルは再び尋ねた。
「道を修習する際の最大の障害とはなんでしょうか?」
師はお答えになった。
「道に入って最初の時は、あなたの心を道から外すものは何であれ障害である。
特に、女性は男性にとって最も大きな魔であり、女性にとって男性は最も大きな魔である。
一般的には、食べ物と衣服が主な魔である。」
ツォギャルは再び尋ねた。
「カルマムドラーは、道を強化するものではありませんか?」
師はお答えになった。
「実際に道を強化するようなムドラーの配偶者は、黄金よりも稀である。
悪業を持った女性は、好色な男性に献身を捧げる。
あなたは自分の純粋な概念を恋人に重ねて見る。
あなたは自分の積んだ功徳をあなたの恋人に捧げる。
あなたはあなたの忍耐力を家族に向ける。
あなたはあなたの情熱をあなたの子供に与える。
あなたの嫌悪は神聖なダルマに向けられる。
あなたの日々の修習は、強い欲望を助長する為のものである。
あなたの真髄のマントラは、わいせつな会話に携わることである。
あなたの忠誠を示すしぐさは、異性の気を引くしぐさをすることである。
あなたの周行(ストゥーパの周りを廻る礼拝)は、気まぐれに町をうろうろすることだ。
あなたの不屈の精神は、あなたが夢中になっている現世的な事に向けられる。
あなたはあなたのあなたの妄想を、下半身によって破壊しようとする。
あなたは自分の信頼を秘密の恋人に寄せる。
あなたの感謝の気持ちは、誰であれ最も激しい性行為を行う者へのためのものである。
あなたの経験とは、性行為について語り合うことである。
あなたは、もし犬がなすがままになるなら、犬とさえ性行為を行うだろう。
あなたの揺ぎない究極の目的は、愛著に耽ることである。
あなたは今、悟りを得ることよりも、あともう一度楽しむことを選ぶ。
あなたの信は単なる決まり文句で、あなたの献身は偽善的だが、あなたの貪欲さと嫉妬は強い。
あなたの信頼と寛容さは脆弱だが、あなたの敬意を欠いた態度と疑いは巨大である。
あなたの慈悲と知性は脆弱だが、あなたの慢心と自尊心は卓越している。
あなたの献身と忍耐力は脆弱だが、あなたは人を間違った方向へ導くことと、真実を歪めて解釈することには長けている。
あなたの純粋な概念と勇気は小さい。
あなたはサマヤ戒を守れず、適切な奉仕を捧げることもできない。
高みに上がる為の助力者であるというよりは、あなたは修行者を引きずり下ろす鉤である。
あなたは歓喜を増大させないが、偏見と苦難の先駆者である。
愛情を通して解脱することを期待して配偶者を得ることは、嫉妬と心を乱す感情を増大させる原因となる。
健康改善の支えになることを望んで配偶者を得ることは、ただサマヤ戒を破ったけがれた者を覆い隠すということになる。
サマヤ戒を噂守しない女性は、修行者にとっての魔である。」
「では、資格のある配偶者というのはどのようなものでしょうか?」
と、彼女は尋ねた。
師はお答えになった。
「一般的に言って、それは今述べられた欠点を持たない者だ。
特に、ダルマに関心を抱いており、知的で良い性格を持ち、偉大な信と慈悲の心を持ち、完全な六つのパーラミターを有し、師の言葉を破らず、修行者への尊敬の念を持ち、秘密のマントラを自らの目で注意深く遵守し、完成の域に達し、性的に乱れておらず、清潔に暮らしている者である。
このような配偶者を見つけることは、道を歩む上での助けとなる、しかしながらそのような存在はチベットでは稀である。
それはまさに王妃マンダーラヴァーのような者である。」
ツォギャルは再び尋ねた。
「完成の域に達する前に性的に乱れることの最大のデメリットはなんでしょうか?」
師はお答えになった。
「たとえ完成の域に達した後でさえ、師の許可なしに性的なことを楽しむのは適切ではない。
師が力を与えることを除いては、ダルマの仲間や家族にとって、修行者と性的な行為を楽しむのは不適切である。
もし彼がそうすれば、今生におけるサマヤの絆がけがれたものになり、ダーキニーによって不吉さと短命をもって罰せられる。
ダルマの守護者は彼から離れ、彼は成就を得ず、あらゆる種類の障害に出くわすであろう。
女性は来生、激しい渇望の地獄へと再生するであろう。
故に女性は、性的な乱れから注意深く身を守らなければならない。
男性が、ヴァジュラの師から二つか三つの段階の教えを保持しているとされている配偶者と、あるいはサマヤ戒を持つ法友の女性と性的な行為を楽しむことは、導管を毒すると呼ばれ、地獄への転生を逃れる術はない。
たとえ普通の人との性行為を楽しんだとしても、非常に厳しい結果をもたらす。
力を与えられた時には、たとえそれが法友の女性とであっても問題はない。
あなたがサマヤ戒をこのように守るなら、あなたは速やかに秘密のマントラのすべてを成就する。
ツォギャルよ、あなたがマントラの門をくぐった後、サマヤ戒を遵守しないなら、悟りへの覚醒は期待できない。
私はチベット中を見渡したが、あなたをおいて他にサマヤ戒を守れる者は見つからなかった。」
ツォギャルは再び尋ねた。
「ダルマの修習において、食べ物や衣服、身体への利己的な執着が多大な障害となるというのでしたら、その三つをどうやって放棄するのかお教えください。
師はお答えになった。
「ツォギャルよ、遅かれ早かれこの身体は滅びる。
人の人生の長さというのは既に決まっている。しかしながら、我々は自分が若くして死ぬのか老いて死ぬのか分からない。
すべての者は死ななければならない。そして、私は今までに一度も、自分の身体に執着することによって死から逃れた者は見たことがない。
すべての利己的な身体への愛情を捨てなさい。そして山の隠遁地に留まりなさい。
衣服に関しては、簡単な羊の皮のマントでさえ十分である。人はたとえ石や水の中でさえ住む事ができるのに、チベット人修行者にはそうでないらしい!」
◎封印の指示と予言
ツォギャルは再び尋ねた。
「あなたが仰った事すべてを書き留めておくべきでしょうか?」
師はお答えになった。
「もし書き留めたなら、後の世代のために役立つだろう。」
彼女は尋ねた。
「では、それは伝播されるべきでしょうか? それとも封印されるべきでしょうか?
それはどのように役に立つのでしょう?
誰が役立てるのでしょう?」
師はお答えになった。
「この教えを広める時は未だ訪れていない。よって、それは封印されるべきである。
王の娘、ペマサル王女の頭上に、心の真髄の経典を入れた宝石箱を置いた際、私はそれが彼女に分け与えられた教えとなることを強く願った。
彼女が死んで何生か後、彼女は再びこの教えに出会うであろう。
この目的のために、あなたはそれをテルマの宝として封印しなくてはならない。
ヴィマラミトラが、心の真髄の教えの数々を守るであろう。
彼の弟子たちのために時が満ちた。
この教え、私の心の真髄という教えが、初期の解釈が堕落し姿を消そうという時に、現れる。
それは、ものすごく拡がり栄えるであろう。しかしながらそれは短期間の間である。
一般的に、闇の時代の教えは広く栄えるが、ほんのつかの間しか続かない。
この時代の終わりに、人々の平均寿命が五〇年になる頃、王女は人間に転生し、ニャンラル(ニマウーセル)によって、王ティソン・デツェンの生まれ変わりと認められるであろう。
王の生まれ変わりである、師チョワンの人生の後半に於いて、彼女は再びダルマとつながるであろう。
彼女のその後の人生において、彼女はこの心の真髄の口頭による教えを抱するテルマの宝に巡りあうであろう。
そのときは修習の時期なので、人々の為になる活動は何も存在しないであろう。
この者は59年間生きるであろう。
彼は様々な善と悪のカルマ的なつながりを持つであろう。
彼の弟子の幾人かは歓喜の領域に行き、他の者はそれより低い領域に転生するであろう。
これはけがれたサマヤ戒の結果を表しており、彼が50代で死ぬ可能性もある。
彼はサマヤ戒のけがれに対して注意を払うべきで、懺悔を行うべきである。
そうすることによって、彼は天寿をまっとうすることが可能になる。
この時点で、五つの階級のダーキニーに祝福を受けた女性が現れる可能性がある。
もし彼女が現れ、彼が彼女を伴侶とするならば、彼は長寿を願って祈るべきである。そうすれば、50年以上生き延びることが可能になる。
彼は、運命付けられた印のほくろを持つ少女の弟子を持つであろう。そして、もし彼がすべての教えを与えるなら、彼女はある程度人々を救済する活動を行うことができるだろう。
もし彼女がその人生において現れなければ、彼女は次の生で彼の弟子となり、速やかに悟りを得るだろう。
もし彼がブムタンの低部にこれらの教えをもたらさず、元々テルマがあった所か、神や悪魔によって移動され得ない場所の石の中に封印しておくなら、彼はそれを次の転生で見つけるだろう。
その転生の次の生で、彼はしばらくの間サンボーガカーヤの領域を徘徊するだろう。そしてその後、ブムタンのターパリンに転生するだろう。
15歳の時から人々に恩恵を与え、多くのテルマを発見し、あらゆるタイプの奇跡を行うだろう。
彼は70代まで生きるだろう。
彼は伴侶として女性を装った五人のダーキニーを得ることで、彼の人々に恩恵をもたらす行為は勢いを増す。
彼はハヤグリーヴァの放射体であるダワ・ドラクマという、人々に恩恵を施す息子を持つ。
彼はブッダのダルマを90年間維持するだろう。
これは彼に分かち与えられた教えなので、テルマの宝として封印しなさい。」
これを聞くにあたって、ツォギャルは、無数の礼拝と周行(ストゥーパの周りを廻る礼拝)を行い、これを書き留めることに身をつやした。
秘密にせよ、封印せよ、封印せよ!
私のように無智な女性ツォギャルが,純粋な憧れによってニルマーナカーヤに出会うとは、素晴らしいことだ!
私の純粋なサマヤをもって、教えの真髄を受け取った。
私の奉仕を捧げることで、彼は私を慈愛を持った目で見て下さった。
私を受け取るに値する者と見なし、彼は私にマントラの真髄を託された。
至上で真髄的な心の真髄を私に授けられた。
それを、時機を逸したやり方で説くことなく、私はテルマの宝として隠した。
この質疑応答の形を取った黄金の甘露の花輪が、完全な印を有した人に出会いますように!
秘密にせよ。
深遠なる封印をせよ。
宝の封印をせよ。
読むに適さないことを封印せよ。
厳格なる封印をせよ。
闇の時代には、この神髄の教えの秘密の循環は、酉年生まれの、水元素のタイプで、ウッディヤーナの心の息子、隠された運命を携え、聖職者ではないが本物の智性をそなえ、すべての力はその人生では花開かないが隠された生活様式に従い、自由で、偽善からは無縁で、力強い能力を持っているがそれが明らかになっておらず、身体にはほくろによって印が付けられた、そのような運命付けられた者に託される。
彼の弟子は、五つの階級のダーキニーの子供達で、寅年、酉年、戌年、辰年、丑年に生まれ、彼の系統を保ち、天界へと進むだろう。
誰であれ、彼の系統を持つ者は一生で仏性を得、彼らは最後の転生においてヨーガ修行者であろう。
イティ、高潔であれ!