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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(99)

◎頭のきれるラマ

 パトゥルはカムを通って旅をしており、故郷のザチュカへと続いている道を歩いていた。ゴサ僧院からそう遠くないところに来たときに、パトゥルは、偶然、不安そうな表情で、キョロキョロしながら茂みの中に何かを捜しているラマに出会った。
 これを見て、パトゥルはそのラマに「どうされましたか?」と尋ねた。
 そのラマは名をドチュ・ゴメといい、ゾモが一頭逃げて行ったので、捜しているのだとパトゥルに言った。
 二人は共に旅をし、ゴサ僧院の方向へとゆっくりと歩を進めていった。そのラマはあちこちを捜しながら、そしてパトゥルはゆっくり堂々と歩いて行った。
 最終的に、彼らはそのラマの家に着いた。
 そのとき、パトゥルは彼に、一晩泊めてくれないかと丁寧に尋ねた。ドチュ・ゴメは言うまでもなく、放浪ラマをもてなすことができることを喜んだ。

 翌朝、大雪が降った。ドチュ・ゴメは客人の靴がひどく擦り切れていることに気づいた。皮は薄くなっているし、靴底は穴だらけで、このような天候には不向きであった。ラマは、自分が余分に靴を持っているということをパトゥルに伝え、客人であるパトゥルに靴を布施した。パトゥルはそれを受け取って、その”良い靴”を履き、古いボロボロの靴は捨てた。
 パトゥルは暇を告げる際に、ゴメに、二人は以前に会ったことがあるかどうかを尋ねた。ゴメはこう答えた。

「いいえ、ありませんが、もしかすると、あなたはパトゥル尊者ではありませんか? もしよろしければ、わたしのために何か祈りを捧げていただけませんか?」

 パトゥルは同意し、ドチュ・ゴメをすっかり幸せな気持ちにしてから、去って行った。ゴメは、願いが叶ったために喜んだ。――それは、ゾモが見つかったということではない。実は最初から、ゾモは迷子になどなっていなかったのだ!
 ゴメは、偉大なるパトゥルがゴサの付近を通り過ぎているということを耳にした。そして、正面切ってパトゥルをもてなそうとしても十中八九拒否されるだろうと考え、風変りな作戦を考え出したのだった。ゴメはわざとパトゥルの行く手を遮るように道に出て行き、かわいそうな迷子のゾモを捜しているという話を作り上げた――それはすべて、パトゥルを自分の家へといざない、パトゥルが彼のもてなしを受け入れるように仕向けたものであった。そしてその計画は成功したのだった!
 それだけでなく、ドチュ・ゴメは、自分の新しい靴をパトゥルの古い靴を取り替えて、パトゥルの古い靴を捨てるふりをしたが、実際はそのパトゥルの靴を確保しており、大聖者の正真正銘の聖遺物として一生大切にした。そういったことをしなければ、パトゥルは間違いなくその行為を許さなかったであろう!

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