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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(89)

◎ルントクが師のもとを去る

 ルントクが五十歳のとき、師パトゥルと共にマモスの平原の近くで暮らしていたが、パトゥルは、ルントクの母はもうじき死ぬだろうと予言した。パトゥルは弟子(ルントク)に、死ぬ前に母親のもとへ行ってやりなさいと言った。

「故郷へ帰り、そこで暮らし、資格ある弟子たちに教えを説きなさい。」

 ルントクは、二十八年間そばで暮らし、まるでオイルランプの炎が灯芯を頼りにするかのように頼りにしてきた最愛の師匠と別れるということを考えると、ショックで悲しみに打ちひしがれた。
 ルントクが去るときがやって来ると、パトゥルは互いの額をつけて、優しくルントクを撫でながら、こう言った。

「ルントクや、悲しむ必要はまったくないのだぞ。今生、わたしは偉大なるクンキェン・ロンチェンパと会うことは叶わないが、おまえは会う――間違いなくな。」

 ルントクはパトゥルと別れることに耐えることができず、進行方向に向きを変えながら泣いた。
 しかし数歩歩くと、また振り返って師のところへ戻ってきた。そしてパトゥルの胸に顔を寄せて泣いた。手で優しくルントクの頭を撫でながら、パトゥルは、ルントクがヴィマラミトラの転生者と会い、その転生者が彼の弟子となるであろうということを言って、ルントクを説得した。
 ルントクはそれでも悲しみに打ちひしがれながら、やっと立ち上がり、再び出発したが、立ち止まり、振り返ってまた戻ってきた。
 再び、パトゥルはルントクを慰め、ルントクの頭を優しく愛情深く撫でながら、こう言った。

「明らかなサインが現われて、きっと彼を認識できる。おまえが持っている教えをすべて、彼に伝授しなさい。衆生を利すること以外、何もしてはいけない。そうすれば、十分以上のことができるだろう。彼ただ一人に教えを伝授すればよい。そうすれば、おまえのダルマは果たされる。」

 三度パトゥルのところに戻ってきて、同じように慰められたのち、遂にルントクは師匠のもとを去っていったのだった。
 そしてこの師匠と弟子の二人は、もう二度と会うことはなかった。

 ルントクはパトゥルに言われた通りに行動した。母親が死ぬ前に母親と再会し、ザチュカの信心深い人々からもらった施物を母親にあげることができた。
 そのときから、パトゥルの指示に従って、ルントクは故郷に留まり、パトゥルが予言したヴィマラミトラとロンチェンパの転生者、若きケンポ・ンガワン・パルサンを含む無数の弟子たちに教えを説いた。
 師が虹の身体になったあとも、偉大なヨーギー、ニャラ・ペマ・ドゥンドゥの弟子たちに教えを説いた。
 最終的に、ニョシュル・ルントクは五人の偉大な弟子――二人のリンパ(テルトン)と三人の偉大なケンポ――を持った。その中でもンガワン・パルサンが最高の弟子であった。
 ニョシュル・ルントクは、パトゥルの弟子の中で最も高い悟りを得た弟子であった。パトゥルの霊性の系統に関係するザチュカには、こういう言葉が伝わっている。

「ルントクなくしては、パトゥルに息子なし」

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