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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(78)

◎パトゥルが心を乱し、姿を消す

 ジャムヤン・キェンツェー・ワンポは往々にして、パトゥルとは違う考えを持っていた。ときにはパトゥルのことを「気狂い」と呼ぶこともあった。それでもなお、パトゥルのことを深く尊敬していた。
 尊敬の現われとして、ジャムヤン・キェンツェー・ワンポは、パトゥルを讃嘆し、パトゥルの生涯の物語を詠った長い祈りの詩を書いた。ケンポ・クンペル著のパトゥルの伝記「信の錬金薬」は、この非常に長い祈りの詩を基にして書かれた。
 ジャムヤン・キェンツェー・ワンポは、多くの聖骨と薬草を混ぜ合わせ、一週間儀式の間中ずっと聖別していた特別な薬メンドゥプと共に、この詩を手紙でパトゥルに送った。
 パトゥルはキェンツェーの手紙が届いたとき、説法をしている真っ最中であった。聴衆の人々は、パトゥルがメンドゥプをいくらか飲み、手紙を読んでいるのを見ていた。
 読み終わると、パトゥルは急に心を乱し、叫んだ。

「あのジャムヤン・キェンツェー・ワンポは恐ろしいラマだ!」

 パトゥルは、全く彼らしくもなく、突然説法を中断して、数日間姿を消した。
 やっとパトゥルが帰ってきて、説法を再開しようとしたとき、聴衆たちは手紙の中の何がパトゥルの心をあのように乱したのかを知った――それは、キェンツェーのパトゥルに対する讃嘆の言葉であった。
 キェンツェーのメンドゥプを、そこにいたすべての人たちに分配しながら、パトゥルはジャムヤン・キェンツェー・ワンポの限りない善の性質を称賛した。それからパトゥルは、称賛と名誉が、ダルマを説く者に大変な障害をもたらすということを指摘した。パトゥルは、ジャムヤン・キェンツェー・ワンポが書いた彼への讃嘆の詩を読んだあと、内省して、そのような惜しみない讃嘆を受けて慢心が生じていないかどうかを確かめるために時間が必要だったのだ、と説明した。
 この長い讃嘆詩の中の一節は、現在でもよく用いられている。

 外的には、あなたは菩薩シャーンティデーヴァ
 内的には、あなたは成就者たちの王シャヴァリパ
 秘密には、あなたは苦しみの至高なる自性解放、アヴァローキテーシュワラそのもの
 ジグメ・チョーキ・ワンポよ、わたしはあなたに懇願します。

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