パトゥル・リンポチェの生涯と教え(52)
◎「それだ!」
パトゥルが、ルントクの母が送ってきた特別なバターの供養をルントクの強い懇願によって受け取ってから、数日が経過した。突然、パトゥルはルントクにこう言った。
「母親と会えなくて寂しいか?」
「そうでもないです。」
ルントクは答えた。
「アーディ!」
パトゥルは言った。
「それは、お前が慈悲を培っていないからだ!」
パトゥルは続けた。
「あの、向こうにあるヤナギ林に言って、七日間修行を行ないなさい。すべての衆生を自分の母として受け入れ、彼らから受けた恩を想うのだ。それが終わったらまた戻ってきなさい。」
ルントクは七日間、すべての衆生が、ある過去生では実は自分の母親であったことがあり、彼らから受けた無私の愛を想い、彼らに幸福と悟りをもたらしたいという渇仰の心を培った。その結果として、一切の衆生に対する本当の慈愛、慈悲、菩提心が、ルントクの心に生じた。
ルントクは師のもとに帰り、瞑想で経験したことを話した。
「それだ!」
パトゥルは喜びながら言った。
「それが、必要不可欠なものなのだよ! 心の訓練が適切に為されたら、特定のサインが心に現われるのだ! シャーンティデーヴァは、修習によってすべては容易くなると言った。みんな、ただ修習を十分にしていないだけなんだ。もし修習をすれば、みんな、間違いなく進歩するはずだ。」
それから間もなくして、パトゥルはルントクにこう言った。
「今まで、お前には一切の供養を受けることを禁じていたが、今からは、与えられるものすべてを受けるようにしてほしい。さあ、家に帰って、しばらく母親に会ってきなさい。それからまた戻って来るのだよ。」
ルントクは、師に言われた通りにした。まず最初に、ちょうどその頃亡くなったパトゥルの母親の葬儀に参加し、そして種馬と十枚の銀貨の布施を受けた。
家に帰る途中、ルントクは托鉢をして、茶葉の塊をいくつかもらい、そしてなんと数頭の牛をも布施されたのだった。そして家に着くと、布施されたものをすべて、母親への手土産としたのだった。