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シュリーラーマチャリタマーナサ(10)「両仙人の問答」

「両仙人の問答」

 ガンガーとヤムナーが合流する地点に聖地プラヤーグはある。この聖地に道場を構えるバーラドヴァージャ仙人は、かねてからラーマ様の御足に限りない崇敬の念を寄せている。苦行、解脱、寂静の像、慈悲心の宝庫、真理の体現者である。冬のマーグ月に太陽が山羊座に来る頃になると、信者たちはこぞって聖地のなかの聖地プラヤーグに巡礼にやってくる。天人、魔神、歌神キンナラ、音楽神ガンダルヴァなどに加えて人間も敬虔な祈りを捧げながら山河合流の地点トゥリーベニを礼拝してから斎戒沐浴する。

 カルパの終末時にも枯れない不滅の菩提樹アクシャイヴァトに手を触れ、みな喜びに身をふくらませる。バーラドヴァージャ仙人の道場は神秘的な霊風に包まれていて、特に道士、隠者、仙人たちの心を魅きつける。プラヤーグで心ゆくまで斎戒沐浴した求道者たちは、一人も残らずバーラドヴァージャ仙人の道場に集まる。道場では誰もが嬉々として、時の経つのを忘れて過ごす。早朝、目覚めると、真っ先に沐浴をして心身を浄める。それから法会に参加して、各自ご神徳の偉大さを祝い称える。神性の確認、戒律の吟味、真理の分析などをとおして、哲学と科学の両面から信仰について論じあう。

 バーラドヴァージャ仙人の道場は、マーグ月の間じゅう、こうして求道者たちの精進潔斎と法論に明け暮れる。それが終わると、求道者たちは全員自分の道場に帰って行く。このような法会が毎年繰り返される。

 ある年のこと、マーグ月の法会をすべて完了した求道者たちがそれぞれの道場に引き揚げて行ったあと、バーラドヴァージャ仙人はヤージュニャヴァルキャ仙人の足に縋って、懸命に引き留める。尊敬をこめて足を洗い、最高に浄めあげられた座法に座らせ、うやうやしく礼拝を捧げて、聖者の徳を賛嘆称揚する。それから、甘く澄んだ優美な声で聖仙人に語りかける。

「聖仙人よ!わたしの心には、どうしても解けない一つの謎があります。あなたは自分の掌を見るように、宇宙の真理、ヴェーダ教典の哲学に精通しておられます。あなたこそ、わたしの積年の疑問を解明される尊者であられます。それなのに、あなたに問いを発しながら、一方では内心恥と恐れを感じております。恐れとは、わたしがあなたを試しているとお考えになりはしないか、ということです。恥とは、これほどの年齢になってもまだ真理を悟っていないことです。かといって黙っていれば、いつまでも無智の闇から逃れられません。

 尊師よ! 古代の聖賢、古書経典、隠者道士も、師匠に無智をかくしていたのでは正覚は得られないと教えます。そこで、恥を忍び無知をさらけ出して、あえてお尋ねします。奴隷に憐れみを施すおつもりで、なにとぞわたしの質問にお答えください。

 お尋ねしたいのは、ラーマ称名の功徳についてであります。

 聖賢も古書経典も、奥義書と呼ばれるウパニシャッドも、ラーマ様の御名の功徳は無限であると、言葉を極めて賛美します。智慧と徳行の根源、福相の具足者、自ら不滅の神であられるシヴァ様が、片時も休みなくラーマ称名を続けておられます。現世に生きる、卵生、湿生、実生、胎生の四種の生類も、聖地カーシーで身を捨てるものはみな、解脱を体得します。聖仙人よ!それもまた、ラーマ称名の功徳にほかなりません。なぜなら、シヴァ様はカーシーで命捨てるものを慈しんでラーマ称名という無上の神恵を授けられるからです。ラーマ称名の功徳によって、カーシーで身を捨てるものは、みな極楽世界に転生できます。これに疑いはありません。

 尊師よ! ところで、そのラーマとはいったい何者でありましょうか? あなたにお尋ねしたいのはこのことであります。わたしの知るラーマは、アワド国のダシャラタ大王の長子、勇者、聖王として名声があまねく天下に轟く人中の獅子王であります。妻をさらわれた怒りと悲しみから、魔王ラーヴァナと戦って敵を殺しました。シヴァ様が日夜称名しておられるラーマとは、そのラーマでしょうか? それとも別のラーマでしょうか? あなたは真理に明るく、万事に通暁しておられます。どうか、わかりやすくご説明ください。おお、尊師よ! わたしのこの深く重く大きい迷いの闇が晴れますように、なにとぞ真実を話していただけませんでしょうか?」

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