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パトゥル・リンポチェの生涯と教え(31)

◎パトゥル、祝福を受けるために列に並ぶ

 パトゥルが独りで歩いて旅をしているときのこと、パトゥルは、大規模なダルマの集会へ向かう途中のラマたちの一団の野営地を見つけた。パトゥルは托鉢をしにそこへ向かい、共に旅をしても良いか尋ねた。彼らは同意して、パトゥルを一行に加えてくれた。

 パトゥルは、普通の放浪修行者の一人として見なされた。彼らはそのみすぼらしい放浪ラマに、茶作り、薪集め、茶入れといったような、召使いの仕事を与えた。粗末な召使いとして一生懸命働くパトゥルを連れて、一団は、辺ぴな地帯を通りながら、数週間かけて旅をし、遂に目的地に到着した。

 とある著名なラマが、ヴァジュラヤーナの重要な伝承を授けようとしており、その重要な儀式に即して、その集会は非常に厳粛であった。あらゆる面で、それは素晴らしい光景であった。――最上の衣を身にまとった一般の人、高僧とその家族、シルクの衣を身につけ、磨き上げられた銀合金の馬勒、精巧な鞍、飾り立てられた鐙、色鮮やかな鞍下パッドをつけた馬に乗った、風采のよい貴族で構成された大群衆が集まっていたのだ。

 そこには、背の高い儀式用の帽子、ブロケード、その他の正装を身にまとった高僧のラマや非常に有力な僧たちがいた。

 丈の長い儀式用の角笛と法螺貝のラッパが、天界の交響曲のように鳴り響いていた。有力なラマたちはそれぞれが、各階級に従って正確に定められた高さの特別な玉座に座っていた。

 儀式が始まり、それは数日間続いた。儀式が終わると、すべての僧たち、裕福な後援者、在家信者たちは、個々の供物を最高指導者の師に捧げ、祝福を受けるために、一列に並んで順番を待った。

 パトゥルは、儀式の始まりから終わりまでずっと群集の後ろに座っていたので、長蛇の列の一番後ろに並ぶことになり、祝福を受けるために、立ったまま根気よく自分の番を待っていた。列が徐々に進んでゆくと、人々は偉大なる師の玉座の前で一人ずつ五体投地し、白いシルクのスカーフを捧げて、祝福を受けた。

 初めのうちは、その偉大なる師は、祝福を与えるために、両手で彼らの頭に触れていたが、しばらくすると、大勢の人々が列を作っているという理由から、手を使うのをやめて、長いクジャクの羽で彼らの頭を撫でるようになった。

 そして、遂にパトゥルの番がやって来た。パトゥルは偉大な師の祝福を受けるために、前に進み出た。そしてクジャクの羽でその「信者」の頭を撫でる前に、偉大な師は高座から、その汚い格好をした人物を覗き込んだ。彼の眼は、その放浪者の正体を知って、驚きと共に見開かれた。それは偉大なるパトゥル・リンポチェであり、実にその偉大なる師の師匠であったのだった。

 その高僧は、非常に高い位置にある玉座から何とかしてはい降りて、パトゥルの前に立つと、両手を合わせて額の前に掲げ、五体投地をし始めた。

 パトゥルの旅の道連れだった者たちを含む、そこに居合わせた者たち全員が、言葉を失い、呆気に取られて呆然とその様子を見つめていた。パトゥルはただ笑っているだけだった。

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