パトゥル・リンポチェの生涯と教え(23)
◎修行の極めて重要なポイント
グルに帰依いたします。
私は、全智者、霊性の父、霊性の息子たち、系統の保持者たち、
そして、私にゾクチェンの真意、想像を超えた裸のエッセンス、原初の自由を説いてくださった、輝ける我が師の前で
礼拝いたします。
善き性質を培い、悪しき性質を排除するということを超越した
見解と瞑想の実践の完全なる合一とは、
それ自体で現われる、この不変で、改訂されることなき意識の
直接の存在のもとにある
覚醒状態、ありのままの自由の中に
とどまり続けること。
瞑想修行について少しばかり知っていても、
思考を自由にする方法を知らなければ、
それは、神々(デーヴァ)のサマーディをもたらすだけ。
悟りの確信の獲得は、
思考を、それが生じてくると同時に解放する方法の技術を
得ることで生じる。
寂静の瞑想によって、彷徨う心に集中することは、
しばらくの間、否定的な精神状態を抑えることはできるかもしれない。
しかし、状況が変わるとすぐに
通常の想念が、再び首をもたげるだろう。
あなたが、その微細で決定的なポイント――
思考を、それが生じると同時にして解放する方法――を本当に理解するまで、
それは、毒のように潜伏している。
水の上のさざ波のように、
これが欲しい、これはいらないというような通常の想念は、
不意に現われる。
しかし、思考が生じると同時に思考を解放する方法をひとたび学べば、
思考は根を下ろすことができなくなり、ゆえに消えてなくなる。
これが、理解されるべき極めて重要なポイントである。
”悪しき”思考が生じても、それらは悪しきカルマを生じさせない。
なぜなら、とりとめもない思考は
生じると同時に解放され
その時点では根を下ろしていないからである。
単に思考がパッと浮かんだだけで、誰が救われ、誰が害を受けるだろうか?
この、思考が生じると同時に思考を解放する方法という極めて重大なポイントを
あなたが習得しない限り、
あなたの習慣的な心のおしゃべり、
絶えず流れ続ける思考の底流は、
否定的感情の氾濫へと発展する。
もし、念(マインドフルネス)を使って思考に気づくだけならば、
肯定的な思考は希望を生み出し続け、
否定的な思考は恐怖を生み出し続けるだろう。
これを行なうことで、あなたはカルマをより一層作り、強め続けるのである。
このプロセスが、サンサーラ(輪廻)の源なのだ。
だから、思考をそれ自らの状態の中に解放するということを
一瞬でも認識することは、
一千の寂静の瞑想の経験よりも優れている。
原初の解放、ありのままの解放、
生起における解放、直接的解放などは、
それぞれがすべて、見解、瞑想、行為の重要なポイントである。
「思考をそれ自らの状態の中に解放する」というこの重要なポイントを実践して、
瞑想を発展させなさい。
この重要なポイントを実践しなさい。
そうすれば、他の見解や他の瞑想は何も必要なくなる。
有益な思考が生じると同時に、
あなたは、それらへの執着から解放される。
まだ功徳を積もうと努力していても、あなたは自惚れから解放される。
否定的な思考が生じると同時に、
それらは自然に解放される。
まるで、絡まっていた蛇がほどかれるように。
たとえ五毒が生じても、
瞬間で、それらはそれ自らの状態の中に解放される。
中立的な思考も、自然とひとりでに静まり、
意識の広がりの中に消えてゆく。
思考が生じると同時にそれらを解放することで、
思考は、空翔ける鳥の飛翔のように、何も後に印象を残さないのだ。
迷妄なる思考は、サンサーラ(輪廻)のまさに根である。
ひとたび、あなたがこの「自然なる解放」によって、
浮かんでくる想念を「道」にする方法を確実なものとしたならば、
それは、「サンサーラ(輪廻)とニルヴァーナを絶対の広がりへと解放すること」である。
この重要なポイント――想念を自然に解放する方法を確実なものとし、そのようにして、すべての状況を「道」にすること――を習得しない限り、
たとえ、あなたが空性についてべらべらと語ることができたとしても、
あなたのその「悟り」は、ただの理屈に過ぎない。
あなたの隠れた悪しき性質は、自然と暴かれるであろう。
しまいには、誤って、一見真実かのように見える五毒を、真実のものと見なしてしまい、
あなたは、五毒に征服されてしまうだろう。
なぜであろうか?
それは、「思考が生じると同時にそれらを解放する方法」を知らないという過ちを犯しているからに他ならない。
ゆえに、悟りの確信をもたらす、
見解、瞑想、行為についての最も重要なポイントは、
「自然なる解放(思考を、生じると同時に解放すること)」の方法を習得するということに要約されるのである。
人生のあらゆる状況でこれを実践し、
常に、すべてを「悟りへの道」に変容させなさい。
私自身は、まだこれを極めてはいないが、
ブッダそのものであられる全智の師の言葉からヒントを得て
これらの言葉を書き下ろした。
これらの言葉を心に深く刻みなさい。
なぜなら、これは最も重要な、修行の神髄だからである。
すべてに吉兆あれ!