パトゥル・リンポチェの生涯と教え(118)
◎パトゥルの野営地
一番最初は、パトゥルは小さな黒いヤクの毛のテントを一つだけもっていた。
時と共に、人々がやって来て、自分たちのテントを張った。徐々に、数張しかなかった野営地のテントは増えていき、物凄い数になった。一番多いときには、数百の黒いヤクの毛のテントと白い綿のテントが遊牧民のように集まって、パトゥルの教えを聞きに来た数千人のダルマの修行者たちの宿となっていた。この修行者たちの野営地は、パトゥル・ガルとして知られた。
パトゥルは、動機を純化する修行である「三つの機会」と称したものを、そこに滞在している皆に説いた。
一つ目は、目が覚めたとき――囲いの中の牛や羊のように、大急ぎで起き上がってはいけない。少し時間をとり、ベッドの中でじっとして、心をリラックスさせなさい。内側を見つめ、自分の動機をチェックしなさい。
二つ目は、教えを聞きに行く途中――人々は説法用のテントに向かう際、その途中にあるストゥーパの横を通り抜けるために狭い道を通らなければならなかった。そこを通り抜ける瞬間は、菩提心を培うことを思い起こし、悪行を避け、善行を実践することで他者を利したいと願うことに使われるべきである。
三つ目は、説法中――それは自分の目的を知り、動機を定めるさらなるチャンスである。
一瞬一瞬、全力であれ。
瞬間瞬間、自覚しなさい。
一秒一秒、自分自身をチェックしなさい。
昼夜、決意をし続けなさい。
朝、誓いを立て続けなさい。
瞑想のセッションごとに、心を微細に観察しなさい。
ダルマから決して離れてはならない。”うっかり”というのもだめだ。
一瞬たりとも、忘れてはならない。
パトゥル・ガルで暮らしている人々の中にそのポイントを理解していない者がいると、パトゥルは実際にその者たちを追放した。
「おまえたちはわたしを欺いていたのか、それともわたしがおまえたちを欺いていたのか。無意味なことだ!」
パトゥルはこう言った。
「出て行け。どこかへ行って、何か人生に役立つことでもしなさい! 出て行って、結婚するなり、ビジネスをするなり、子供を作るなりしなさい! 修行者でもなく世俗の人間でもない者など、何の価値があろうか? 世俗の人間になりなさい。善き心を持つことだけは忘れるなよ!」
七十一歳のとき、パトゥルは、一週間分の食糧を貯蓄するようになった。以前は一日分の食糧しか持たなかったのに。
それ以上の施物は、マニ壁の資金に使ったり、受け取るのを拒んだり、布施された場所にそのまま置いておいたりした。
これらの放棄された施物のせいで、乞食たちの一団がパトゥルに寄り付いてきた。彼らは、パトゥルが通ったあとをついて行って、パトゥルが置いていった食糧や施物を拾ったのだった。