ハリダース・タクル(2)
◎ラーマチャンドラ・カーンの嫉妬
ハリダースのバジャンは日に日に熱を帯び、彼はマハートマ(偉大なる魂)として知られるようになりました。
その地域のマハーラージャであるラーマチャンドラ・カーンをはじめとした一部の人々は、彼に嫉妬心を抱きました。
そして彼らは手を組んで、さまざまな方法を使って彼を困らせ、無理やり彼にサーダナーをやめさせようとしましたが、そのすべての努力が、太陽に塵を投げかけるように無駄に終わりました。
最終的にラーマチャンドラ・カーンは、悪友たちの助けを借りて、ある計画を立てました。
彼は、ヒラーという名の娼婦に、ハリダースの面目を失わせ、彼をバジャンの道から逸脱させるという任務を課しました。
ハリダースのただ一つの目的は、熱狂的なクリシュナの賛美を絶え間なく唱えることでした。
それにもかかわらず、ハリダースは、その不運な計画が進められるその瞬間に、カーンの目的の全容にはっきりと気づいていました。
◎売春婦の改心
その夜、その娼婦は、闇夜の中、ベーナポールの森の中に入り、ハリダースの庵に近づいて行きました。
彼女は、自分の若さと美しさ、そして流し目を使って、彼に性的衝動を起こさせ、愛欲を満たさずにはいられない気持ちにさせるという自信がありました。
彼女が庵に入ると、ハリダースは座に座って、ナーマ・ジャパ(御名を繰り返し唱えること)をしていました。
彼女は彼に向かって、情欲を刺激するような身振りをしましたが、彼は子供のように、無関心に、動じることなく座ったまま、ジャパを行なっていました。
そして遂には、彼は笑って、彼女にこう言いました。
「30万回ナーマ・ジャパを唱えさせてください。
そのときまで、お座りになって、どうぞ聖なる御名の詠唱をお聞きください。
それが終わったら、あなたの望みを叶えましょう。」
娼婦は喜んで、承知しました。
しかし、ジャパはその夜の間には終わりませんでした。
彼は彼女に、翌日に来るように言いました。
そしてさらに二夜が同じようにして過ぎていきました。
ジャパは終わらず、そして彼女の望みも果たされませんでした。
そして、ハリダースと三夜一緒にいたこと、そしてハリの御名の力によって、彼女に予想外の変化が起きました。
三日間、彼女は、ハリダース・タクルが完全に没頭してナーマ・ジャパを行ない、眼から涙を流しているのを見ていました。
彼の顔には、この世を超越した輝きが表われていました。それは、彼が常に神に触れていたことを示しています。
彼の体は震え、心はナーマ・ラサ(神の御名を唱えることにより生じる至福)の中に飛び込んでいました。
そして彼女の心に、燃えるような懺悔の思いが生じました。
彼女はハリダース・タクルの足下に平伏し、性欲で彼を誘惑するためにラーマチャンドラ・カーンに送り出されたことを彼に打ち明けました。
自分の為した向こう見ずな行動に怯えた少女は、ハリダースに庇護を希いました。
彼女は、聖者に誓いを破らせようと企てたことで大きな罪を犯してしまったと感じ、救いを懇願しました。
ハリダースは答えました。
「デーヴィーよ! ラーマチャンドラ・カーンの計画のことはすべて知っていた。
ラーマチャンドラ・カーンがわたしに対する陰謀を企てていたまさしくその日に、すぐにわたしはこの場所を去ろうとしていたが、あなたが私のもとにやってきたので、あなたを救済するためにここに3日間とどまったのだ。
あなたは心配する必要はない。
売春をやめなさい。すぐに家に帰って、あなたが売春で稼いだ財産をすべてブラーフマナに布施しなさい。
ハリの御名の下に庇護を求めなさい。
わたしはすぐにこの庵を去る。
あなたはここに住み、ハリの御名を唱え、永遠にクリシュナ意識に留まりなさい。
絶え間なくハレークリシュナ・マントラを唱え、水を撒いてトゥルシーに奉仕し、トゥルシーに祈りを捧げなさい。
そうすれば、慈悲深き主は、あなたに慈悲をお垂れくださるだろう。」
娼婦は言われた通りに、すべての財産をブラーフマナに布施しました。
そしてそれから彼女は一生、ハリダースの住んでいた庵に住み続けたのでした。
彼女は髪を剃って、一枚の衣をまとい、毎日30万回ハリの御名を唱え、托鉢で得たものを食べました。
ハリダース・タクルは、心の中にいらっしゃる主の内なる指示によって、ラーマチャンドラ・カーンが計画していたことがはっきりとわかっていましたが、心の芯が純真であるこの若い女性を救うために、チャンスを伺っていたのでした。
そしてラーマチャンドラ・カーンも同様に後悔し、ハリダースに許しを請いました。
ハリダースは許しましたが、シュリー・ハリは彼を許しませんでした。
強盗団から身を隠すために、ラーマチャンドラ・カーンはしばらくの間、地下室に住まなければならなくなりました。
そしてそこで彼は死んでしまったのでした。
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