ハリダース・タクル(1)
ハリダース・タクル
「人は、自分は道端の藁よりも卑しいと考える謙虚な心で、主の聖なる御名を繰り返し唱えるべきである。
人は、樹よりも忍耐強く、偽りの名声の感覚をまったく持つことなく、いつでも、すべての尊敬を他者へ捧げるべきである。
そのような心で、人は主の聖なる御名を絶え間なく唱えることができるのである。」
――シュリー・チャイタニヤ・チャリタームリタ アンティヤ・リーラー
「ハレー クリシュナ ハレー クリシュナ クリシュナ クリシュナ ハレー ハレー
ハレー ラーマ ハレー ラーマ ラーマ ラーマ ハレー ハレー
――この32の音節で構成されたこれら16の御名が、カリユガの邪悪な影響に対抗するための唯一の手段である。すべてのヴェーダにおいて、主の聖なる御名を唱える以外に、この不可知論の海を渡るものはないと見なされている。」
――カリ・サンタラナ・ウパニシャッド
「ハリダースは、低い階級の家庭に生まれた。ちょうど、プラフラーダが悪魔の家に生まれ、ハヌマーンが猿の家族に生まれたように。半神たちはハリダースに触れるのを望み、母なるガンガー女神でさえ、ハリダースが彼女の水に浸ることを望む。彼の一触れを話すこと、ハリダースを見ることだけでも、人は行為の果報の束縛から解放される。実に、人がハリダースのもとに避難した者を見るだけでも、彼は物質的な束縛から解放されるのである。」
――チャイタニヤ・バーガヴァタ アディ・カンダ
◎出生
シュリー・ハリダース・タクルは、マハープラブ(チャイタニヤ)が最も愛した仲間の一人でした。
ハリダースは、ブラフマー神の化身、あるいはプラフラーダの生まれ変わりだといわれています。
彼の出生は謎に包まれていますが、わずかながら、彼の若年期についての信頼のおける情報があります。
彼はマハープラブの誕生の30~35年前に、東ベンガル(今はバングラデシュ)のジェソール地区のブダン村のイスラムの家に生まれました。
しかし、彼の両親の名前、彼の若年期の教育、どのように彼が少年時代を過ごしたかなどは、すべてが謎のままです。
◎出家とベーナポールの森でのサーダナー
非常に若いときから、ハリダースの心には絶え間なく、ナーマ・キールタンの神々しい川が流れ始めました。
彼は、ハリナーム(ハリの御名)に夢中になって、18歳の時に世俗を放棄し、ベーナポールの森へ行きました。
彼はその森のめったに人が訪れることがない場所に藁ぶきの小屋を建ててそこに住み、バジャンを歌っていました。
小屋の前にトゥルシーを植え、朝早くに起きると、沐浴してからトゥルシーに水をやり、その周りを歩き回りました。
それから座ってジャパを行い、毎日30万回、その内の10万回は声に出して、マハーマントラ――
「ハレー クリシュナ ハレー クリシュナ クリシュナ クリシュナ ハレー
ハレー ハレー ラーマ ハレー ラーマ ラーマ ラーマ ハレー ハレー」
を唱えたのでした。
そのような神の御名の詠唱は、ターラク・ブラフマ・ナーマ、すなわち「救済の神聖なる御名」と呼ばれています。
日が暮れると彼は森を出て、近くの村に托鉢に行きました。
ハリダースのキールタンの甘美な調べに魅了され、数百人の信仰者たちが彼の小屋に集まり、彼に果物を捧げました。
ハリダースは「ハリボロ!」と叫んでその果物を投げ、それを子供たちが拾いました。
また、彼は子供たちに「ハリボロ!」と叫ぶように言いました。
子供たちは果物が欲しいがために、嬉しそうに「ハリボロ!」と叫びました。
このようにしてハリダースは、ハリナーマの種子を、子供たちのハートに撒いたのでした。
まだそのハートが豊かなときにそこに撒かれた種は、容易に根をはり、芽を出すのです。
彼の聖者のような存在感、活動、実践は、その地域に住むバクタを魅了し始め、また彼の栄光は他の地域にも広まり始めました。