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ジュニャーナスートラ

 ジュニャーナスートラ

 ジュニャーナスートラは、東インドのカマラシーラの東の町で生まれました。彼の父はシャーンティハスタ(平和の手)といい、母はカリヤーナチッタ(良き心)という名前で、シュードラ(奴隷階級)の家系でした。
 彼は基本的な学習を終えると、ブッダガヤーへ行き、そこで500人の学者と一緒に暮らしました。その中に、前世からの縁があるヴィマラミトラもいました。
 ある日、ジュニャーナスートラとヴィマラミトラは、ともに連れ立って、ブッダガヤーの西の方に歩いて行きました。すると2マイルほど歩いた頃、空にヴァジュラサットヴァがあらわれて、こう言いました。

「おお、良き家系の息子たちよ。おまえたちは過去世において500生もの間、学者として生まれた。しかしおまえたちはブッダフッドを得ていない。もしおまえたちが今生の内にそのけがれた身体を溶解させ、解脱したいならば、中国の菩提樹のそばにある寺院へ行け。」

 このヴァジュラサットヴァの言葉を聞いて、まずヴィマラミトラが中国へと行きました。そして彼は中国でシュリーシンハから外側と内側と秘密の口頭の教えを受け取って、インドへと帰ってきました。
 「至福の庭園」という町の近くでヴィマラミトラがジュニャーナスートラと再会したとき、ヴィマラミトラは彼が中国で会ったグル・シュリーシンハについて話しました。
 そこで今度はジュニャーナスートラが中国へと向かいました。通常なら9ヶ月かかるその距離を、ジュニャーナスートラは神秘的な力でたった一日でひとっ飛びしました。
 彼が菩提樹のそばの寺院に着いたとき、彼は、水のいっぱい入った瓶を持った美しい少女に出会いました。彼女はジュニャーナスートラに、タシティゴという寺院に行くようにと指示しました。彼がその巨大で素晴らしい寺院に到着したとき、ダーキニーは彼に、シルジンという火葬場に行くようにと指示しました。
 ジュニャーナスートラはそこへ行き、頭蓋骨でできた寺院の中にいるシュリーシンハを見つけました。ジュニャーナスートラはシュリーシンハを喜ばせ、三年間にわたってシュリーシンハに仕えました。そしてジュニャーナスートラはシュリーシンハに供物を捧げ、教えを請いました。
 シュリーシンハはジュニャーナスートラに九年間にわたって口頭の教えを与え、また、彼が菩提樹のそばの寺院に隠したテキストを、ジュニャーナスートラに託しました。

 シュリーシンハは、ジュニャーナスートラに尋ねました。

「満足か?」

 ジュニャーナスートラは、

「はい。私は満足です。」

と答えましたが、もしかすると重要な教えがさらにたくさんあるのかもしれないと考え、それらを与えてくれるようにシュリーシンハに頼みました。それに対してシュリーシンハはこう答えました。

「それにはイニシエーションが必要だ。」

 タシティゴ寺院の中で、シュリーシンハはジュニャーナスートラに、完全で精巧なイニシエーションを与え、最も難解な『最奥の教え』を、三年間かけて伝授しました。しかしシュリーシンハは、そのテキストはジュニャーナスートラに与えることなく、こう言いました。

「時が来たとき、この最奥の教えのテキストが、おまえの前に現れるだろう。」

 その後、ある寂れた町で、シュリーシンハはジュニャーナスートラにシンプルなイニシエーションを与え、シュリーシンハはコーサラ山にて、約一年間の準備修行をおこないました。そしてそれが終わったとき、シュリーシンハはジュニャーナスートラに、非常にシンプルなイニシエーションと教えを与えました。これによってジュニャーナスートラの中に、並々ならぬ確信が生まれました。
 その後、さらに一ヶ月ジュニャーナスートラが修行をした後、シュリーシンハはジュニャーナスートラに、最もシンプルなイニシエーションを与え、ジュニャーナスートラは、自らの心の完全なる調御を悟りました。

 このようにしてジュニャーナスートラはシュリーシンハのもとに16年以上とどまり、瞑想修行をおこない、またグル・シュリーシンハが与える難解な指示に従い続けたのでした。

 その後、ジュニャーナスートラは、少しの恐怖もなしに、ダーキニーや恐ろしい存在たちとともに、火葬場を放浪したり、奇妙な振る舞いをする修行の道を歩きました。

 その後、ジュニャーナスートラは、リの国のパルジン王を訪ねました。そして彼はそこで、ライオンに乗って空を飛び、六人の強力な若い鬼神たちが、彼の上に日傘をかざしました。
 彼がその国に着いて七日目の朝、空に大きな音がとどろきました。ジュニャーナスートラが空を見ると、そこにはシュリーシンハが、たくさんの光の中で座っていました。ジュニャーナスートラは、シュリーシンハが肉体を捨てたのだと悟り、祈りを捧げると、彼の手の中に、シュリーシンハの遺言である「ゼルウ・ドゥンパ(七つの釘)」が、空から落ちてきました。

 シュリーシンハはまた、ジュニャーナスートラに、次のような指示を与えました。

「最奥の秘密の教えであるニンティクのテキストは、タシティゴの柱の中に隠されている。それを取り出して、バシンの火葬場へ行け。」

 ジュニャーナスートラは指示通りにニンティクのテキストを取り出すと、それを持って、非常に美しく、恐ろしく、そしてパワフルな、バシンの火葬場へと行きました。それは、ブッダガヤーから東の方角に遠く離れた場所にありました。
 彼はそこに住み、難解な修行をおこないつつ、ヴィマラミトラやダーキニーたちに教えを与えました。ヴィマラミトラもまた、ダーキニーからの示唆を受けて、ジュニャーナスートラに会うためにこの地へやってきたのでした。
 ジュニャーナスートラはヴィマラミトラに、精巧・シンプル・非常にシンプル・最もシンプルという四つのイニシエーションと教えを与え、またそのテキストも伝授しました。

 ジュニャーナスートラが肉体を捨てたとき、ヴィマラミトラが哀悼の祈りを捧げると、ジュニャーナスートラは姿を現わし、ヴィマラミトラに「シャクタク・シパ(瞑想の四つの道)」という遺言を与えました。

 それは、以下のような教えを含むものでした。

 

 完全で純粋なる空性に礼拝いたします。・・・・・・

 素晴らしい! もしあなたがこれらを育むならば、至福は自然に生じるだろう。

 もしあなたが大いなる平等の境地を望むならば、次のような経験を常に積み重ねなさい。

【1】もしあなたがすべての難解な「行為」を育むことを望むならば、心の本性の瞑想状態を、日常のすべてにおいて維持しなさい。

【2】もしあなたがあなたの瞑想を強化したいならば、心の本性の瞑想による海のような見解を通して、心と現象を結合させ続けなさい。

【3】もしあなたがすべての見解からの自己解放を達成したいならば、山のような心の本性の瞑想の中に、すべての現象を持ってきなさい。

【4】もしあなたがすべての果報を達成したいならば、山のような見解を通して、修行におけるすべての過ちを解放しなさい。

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