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シュリーラーマチャリタマーナサ(1)

シュリーラーマチャリタマーナサ(トゥルシーダース・ラーマーヤナ)

ラーマの行いの湖

トゥルシーダース

 字義、語義、情調、韻律、吉祥を司るサラスヴァティー様と、ガネーシャ様を崇めたてまつる。
 その方の助けがなければ、聖者でも内面の神を体験できない、大神シヴァ様と奥方パールヴァティ様を崇めたてまつる。

 信じて帰依すれば、痩せ欠けた月でさえ福々しい満月に変わる、シヴァ神という名の大道師を礼拝する。

 シーター様、ラーマ様の大徳を見える形で表したような美しい園林を、愁然と散策する至純の碩学、詩聖ヴァールミーキー様と猿神ハヌマーン様を崇めたてまつる。

 生成、維持、破壊を司り、一切生類の苦悩を癒やし、無上の福楽を与える、ラーマ様の最愛の奥方シーター様に敬意を捧げる。

 創造神ブラフマー様をはじめとする諸精霊、天人、人間、悪魔などがみな、神の創造による幻影の魔力に惑わされて、愚者が縄を蛇と見紛うように、うたかたの現象世界の真実の存在と思いこまされる不思議な力、その御足の持つ救いを渡し舟として、信じる者が楽々と苦界を渡って彼岸に行くことができる宇宙の救済の原理――それらもろもろの理由によって、わたしは「ラーマ」と呼ばれるかの偉大な神を崇めたてまつる。

 かつてたくさんの古書、教典、教学によって検証され、ラーマ様王行伝『ラーマーヤナ』に詳述され、そのほかにも多くの著述で伝承される、ラグ族の主ラーマ新王の物語を、末世の詩人トゥルシーダースはいま、自分の魂の安静のために、考えうるかぎりの麗しい詞藻を集めてまとめてみたい。

 その御名を念ずるだけでいっさいの願行が成就すると讃えられる、美しい象面の持ち主、大知の泉、美徳の倉庫、諸善の根源、聖ガネーシャ様よ! どうか恩徳をお授けください。

 その慈しみの恩寵に浴するとき、口のきけない者が流暢に話しはじめ、歩行困難な者が険しい岩山を駆け登り、末世には特に浄めの火となって、もろもろの罪障を束ねて焼き尽くす慈愛深い宇宙の最高神よ! なにとぞわたしに恩寵をお授けください。藍色の蓮華にも似る黒褐色の肌、満開の赤蓮華かと紛う眼、乳海に龍王を寝床として休まれるナーラーヤナ・ヴィシュヌよ! どうかわたしの心の中にお宿りください。

 くちなしの花、満月の光の優美な白い肌の持ち主、慈悲心そのもの、弱者の味方、愛欲の神カーマデーヴァを調伏される福徳の大神、女神パールヴァティ様の最愛の伴侶、シャンカラ・シヴァ様よ! なにとぞわたしに恩寵をお授けください。

 慈愛心の海、御口から出る一語一句が迷いの闇を照らす限りない光明、人間の王子として世に出現された大宇宙の神の化身、三界の大導師、主ラーマ様の蓮華のような御足にうやうやしく礼拝を捧げる。

 香り高い甘露に例えられる主の御足と、御足に付く塵を崇め讃える。その塵は、いっさいの業病を癒やす霊薬である。徳行の神像シヴァ様のご尊体に飾られては明浄の珠となり、一切生類に崇められては歓喜法楽の母となる。善男善女には、心のガラスの曇りを拭き清める布となり、額を飾る聖染点とする者には、善い行いを容易にわがものとする福徳が恵まれる。

 御足の爪の輝きは、摩尼宝珠をも凌ぐ。念ずるだけで心眼が開け、実相浄土の荘厳世界が眼前に展開する。

 俗世間の闇に巣くう罪障や苦悩はたちどころに消えて散る。主の御足の輝きは、迷妄の闇夜を破る曙光である。その光明に照らされる者の功徳は計り知れない。ラーマ様の畢生のご功業を宝玉に見たてるとき、主の御足を念ずる信者には、地表に露出する珠玉はもとより、坑底にひそむ摩尼宝珠や紅玉にいたるまですべて、見とおせるようになる。大導師の御足の塵は、眼に塗れば地底の秘坑がすべて見透せるという神秘の眉墨に似る。眼疾を癒やし、諸法実相の真理を直視する心眼を開かせる効能をもつ。行者や徳道者たちは、あたかも野山を散策するごとくに、気軽に宝の山に分け入って無数の秘玉を発見するのである。

 わたしもまた、大道師の御足の塵という名の霊薬で心眼を洗い清めながら、俗世の呪縛からすべてを解放する、ラーマ神王の伝記(行伝)について、心ゆくまで語りたいと願う。

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