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ゴキブリ


 ヨーガ・スートラの八段階ヨーガの第一は、非暴力である、ということは、少しヨーガを勉強した人なら誰もが知っていることでしょう。

 また、仏教の戒律の第一番目が不殺生である、ということもまたご存知の方は多いでしょう。

 このヨーガの非暴力も、仏教の不殺生も、同じアヒンサーという言葉で表されているものです。単に日本語に訳される段階で、それぞれ不殺生、非暴力という訳語が定着したのだと思いますが、要は、暴力、殺生はもとより、悪口や、心で憎しみを持ったり、陥れたりすることも含めて、他者を害することをやめるということです。

 ヨーガにしろ仏教にしろ、これが第一に来ているわけですが、最初はここで「ええっ?」とつまずく人が、日本人には多いようです。それにはさまざまなパターンがあるようですが。

 たとえば現代では多くの人が行なっている中絶も、自らの子供を殺生するわけですから大変な罪になります。ただし、よく言う水子霊とか水子供養などというのは何の意味もありません。そうではなくて、因果の問題、そしてもう一つは心の傷の問題ですね。だからその解決策は水子供養とかお祓いではなくて、慈愛の心の訓練や、懺悔など、カルマを浄化する修行に励まなければなりません。

 あるいは現代では、虫や小動物を殺すのはあまり悪いこととはされていないようですが、どんな小さな虫にも我々と同じ生命、魂があるわけですから、それらも悪業となり、修行の妨げとなります。いや、修行を志さなかったとしても、殺生のカルマは、自らの心を殺伐とさせ、体に苦痛を生じさせ、来世は地獄に落ちるとされています。
 
 昔、チベットを描いた映画で、チベットの建築風景で、土を掘り返して虫が出てくるとみんなそっと外に逃がしてあげるので、なかなか作業が進まない、というシーンがありましたが、チベットやインドのまじめな仏教徒やヒンドゥー教徒は今でもそんな感じみたいですね。
 私のヨーガ教室でも、ヨーガのスタートの一つとして日々の生活における不殺生を勧めているわけですが、今まで不必要に行なっていた殺生に関しては、多くの人がやめられるようです。まあ、虫などが怖かったとしても、殺すまでもなく逃がしてやればいいわけですからね。また、できればそういう虫などに対しても、慈愛を持って接する訓練が必要です。

 多くの人はそのようになるのですが、それでも多くの人、特に女性が、なかなか超えられない一線があるようです。

 それは「ゴキブリ」です(笑)。

 いろんな虫や動物に対しても親愛を持って接せられるようになったけど、ゴキブリだけはどうしてもだめだというわけです(笑)。

 不思議なもんですね(笑)。なぜゴキブリはそこまで嫌われるのでしょうか(笑)。
 まあ、あともう一つあげるとすれば蜘蛛なんかもそうですね。蛇とかもそうかもしれません。

 ゴキブリに関して考察すると、一つはあのすばやさがだめなんでしょうね(笑)。たとえばカブトムシなんかは人気がありますが、カブトムシがもしゴキブリみたいにすばやかったらやっぱり気持ち悪いでしょう(笑)。あとはあの油っぽさですかね。

 まあとにかく、ゴキブリや蜘蛛は、多くの人が、見ただけで嫌悪感を抱きます。それはゴキブリや蜘蛛自体に、嫌悪されるカルマがあるからであるといえます。それは正しいでしょう。
 しかしですよ、その嫌悪されるカルマがあるゴキブリや蜘蛛に対して、嫌悪する人はどうなるのでしょうか? 来世、今度はその人がゴキブリとなり、嫌悪されるかもしれません(笑)。
 だからこのカルマの輪をどこかで断ち切らなければいけませんね。嫌悪されるゴキブリ。嫌悪する自分。どちらも嫌悪のカルマの輪の中にいるわけです。嫌悪の縁があるわけです。断ち切らなければなりません。もしそれをゴキブリの側に期待できないなら、自分がやるしかないでしょう(笑)。自然に嫌悪がでてしまう。その「自然」に逆らって、愛を発するのです。もし自分がそこで嫌悪でなく愛を発するなら、その嫌悪の輪に化学変化が生じ、ゴキブリも救われる可能性が出てくるかもしれません。

 ところで私は、今はヨーガ教室をやっているのできれいにしていますが、昔は非常に汚い部屋に住んでいました。だからゴキブリもいっぱいいて、食事中など、おかずにゴキブリがよくたかってきていました。たまに友人が来たときなど、友人との間でこんな会話がよく交わされました。

友人:皿の上にゴキブリがいるよ。
私:そうだね。
友人:そうだねじゃないよ。汚いから早く追っ払えよ。
私:ゴキブリの食事を邪魔するのはかわいそうだろ。そっとしといてやりな。
友人:それもそうだな。

 
 まあしかし現実的には、ゴキブリがいたら近所づきあいなども大変でしょうし、病気のおそれもありますから、そもそもゴキブリが出ないように普段から清潔にしているのが一番いいんでしょうけどね(笑)。

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