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クリシュナ物語の要約(26)「カンサ王の策略」

(26)カンサ王の策略

 

 それからしばらくたったあるとき、悪魔アリシュタが、大きな身体と瘤を持った牡牛の姿になって、大地を激しく振動させつつ、ヴラジャにやってきました。

 その悪魔は荒々しくうなり声を上げると、尾をまっすぐに立てて、蹄で大地を削り、角で土を掘り返しては、あたりに便と尿をまき散らすのでした。

 雷鳴のようなその咆哮を聞くと、牛や女性や牛飼いたちは恐怖に身を震わせ、遠くへと逃げていきました。

 そして彼らは全員で「クリシュナ! クリシュナ!」と叫び、クリシュナに助けを求めました。するとクリシュナは彼らに「こわがらなくていいですよ」と言って安心させると、悪魔アリシュタに向かってこう言ったのでした。

「ああ、愚か者め。牛や牛飼いたちをこんなにも恐怖させて、お前はそれで何を得られるというのだ? ああ、卑劣な奴め!
 邪悪なるお前が持って生まれた自負心を、僕が叩き潰してやる!」

 このようにクリシュナに挑発された悪魔アリシュタは、いまや完全に激怒し、クリシュナめがけて突進してきたのでした。
 しかしクリシュナは、突進してきた悪魔アリシュタの角を両手でつかむと、そのまま押し返し、地面に押し倒しました。
 悪魔アリシュタは怒り狂ってすぐに起き上がると、再びクリシュナに向かって突進してきました。
 クリシュナは再び悪魔アリシュタの角をつかんで放り投げ、倒れた悪魔アリシュタの上に飛び乗ると、何度も殴り続けたのでした。
 こうして悪魔アリシュタは、口から血を吐き、糞尿を垂れ流して、非常な苦しみを味わいながら、主クリシュナの手によって、生命を終えたのでした。そしてそれを見た神々は、クリシュナに拍手喝采を贈り、無数の華でクリシュナを覆いつくしたのでした。

 さて、神の眼を持つ神仙ナーラダは、悪魔アリシュタがクリシュナに簡単に始末されたのを見ると、カンサ王のもとへ向かい、次のように告げました。

「デーヴァキーの八番目の子であるあの女の子は実はヤショーダーの娘であり、クリシュナこそがデーヴァキーの八番目の息子なのです。そしてローヒニーの息子とされるバララーマも、実はヤショーダーの息子なのです。そしてあなたの家来の悪魔たちは皆、この二人に殺されたのです!」

 これを聞いたカンサ王は激しく憤慨して、悪魔ケーシーを呼び、
「バララーマとクリシュナを殺せ!」
と命じました。

 また、強力な格闘家であるムシュティカやチャヌーラ、シャラ、トーシャラ、また大臣や象使いたちを全員招集すると、カンサ王は彼らにこのように命じました。

「ヴァスデーヴァの息子であるクリシュナとバララーマは、今、ナンダが支配するヴラジャに住んでいる。そして彼らの手によって私は死ぬ定めにあると予言されたのだ。
 お前たちは格闘技大会において、彼らを殺してしまうのだ。そして国中の者をそこに招待して、この正当な戦いの目撃者とするのだ。
 そして、象使いたちよ、お前たちは強大な象クヴァラヤーピーダを闘技場の入口に配置して、クリシュナとバララーマが入ってくるなり、二人を踏みつぶしてしまうのだ。」

 このようにしてクリシュナとバララーマを殺害する指示を家来たちに与えると、カンサ王は次にヤドゥ族の最高者であるアクルーラを呼びだして、こう告げました。

「ヴラジャに住むクリシュナとバララーマを、弓供養の盛大な祭りがあると言って、この都に連れてきてほしいのだ。
 私はクリシュナによって殺されると予言されているのだ。よって彼らをここへ呼びよせて、強大な象クヴァラヤーピーダによって、踏みつぶしてしまうつもりだ。
 もしそれが失敗したとしても、強力な格闘家であるムシュティカたちが、奴らを殺すだろう。
 奴らを殺したならば、ヴァスデーヴァをはじめとするヴリシュニ族、ボージャ族、ダーシャーラ族などの者たちを、また王に返り咲かんとするわが父ウグラセーナとその弟子デーヴァカなども、すべて滅ぼすつもりだ。
 そして私は神々に味方する王たちをすべて滅ぼし、全地球を統治するに至るであろう。」
 
 こう言われて、アクルーラは答えました。

「あなたが考えられたその対策は、身近に迫るご自身の危機に対して、よく考えられたことでしょう。しかし、人の努力に報いられるのは、ただ至高なる神お一人なのです。
 神の手により挫かれると知りながらも、人は愚かにも野心を抱いて、喜びと悲しみを経験する羽目となるのです。しかしそれでも私は、あなたの命令に従うでしょう!」

つづく

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