クリシュナ物語の要約(24)「スダルシャナとシャンカキューダの救済」
(24)スダルシャナとシャンカキューダの救済
ヴラジャの牛飼いたちは、あるとき、シヴァ神を礼拝する巡礼を行なおうと思い、パールヴァティー女神の聖なる森であるアンビカーヴァナへと向かいました。
その聖地を流れるサラスワティー河で沐浴した後、彼らはシヴァ神とアンビカー女神に、さまざまな供物を捧げて礼拝しました。
そしてナンダやナンダの弟のスナンダなどは、水だけを口にする誓戒を守りながら、サラスワティー河の岸辺でその夜を過ごしたのでした。
すると神の意思により、腹を空かせた大蛇がそこへやってきて、寝ていたナンダを飲み込もうとして襲いかかってきました。
大蛇に捕まったナンダは、大声でこう叫びました。
「ああ、クリシュナ、クリシュナ、大蛇が私を飲み込もうとしている! ああ、愛しい息子よ、庇護を求めるお父さんを、どうかこの蛇から助けておくれ!」
この叫び声を聞くと、牛飼いたちは眠りから覚め、大蛇に捕まったナンダの姿を見ると、非常にうろたえながら、松明を手に持ってその大蛇を叩きました。
しかし大蛇は、松明の火で焼かれても、ナンダを放そうとはしませんでした。するとそのとき、クリシュナがそこにやってきて、大蛇に近づくと、自らの蓮華の御足で、その大蛇に触れたのでした。
その瞬間、その大蛇はただちに罪から解放されて、大蛇の姿を捨て、光り輝く最高に美しい姿に変わりました。
それを見たクリシュナは、このようにたずねました。
「このように壮麗に光り輝く素晴らしい姿をしたあなたは、いったい誰なのですか? またあなたはどのような理由で、あのような忌まわしい姿になっていたのですか?」
それに答えて彼はこう答えました。
「私はスダルシャナ(見るに美しきもの)という名の神だったのです。私はその昔、眩しく輝く美しい姿をして、空飛ぶ車に乗り、自由に空を飛んでいたのでした。
そんなあるとき、私は自分の美しさを誇り、アンギラスの一族に生まれた、身体が変形した聖仙たちを見て、彼らを嘲笑してしまったのです。するとその聖仙たちは私に呪いを発せられて、私は大蛇の姿に変えられてしまったのです。
けれども私は今、あの方たちが呪いを発したのは、本当は私への慈悲だったのだとわかりました。なぜならそのおかげで、私は宇宙の父であるあなたの御足に触れられて、こうして罪を浄化していただけたからです。
ああ、悲しみを癒すお方よ。あなたの御足に触れられただけで、私は呪いから解放されたのです。
ああ、偉大なるヨーギーよ。あなたは最高の魂、そして正しき者の守護者なのです。私はあなたに永遠に庇護を求めます。
あなたの姿を目にしただけで、私は呪いを消されたのです。あなたの御名を唱えたなら、それはその者ばかりか、それを聞く者も浄化されるでしょう。ならばその御足に触れられた私が、こうして罪を消されたことに、何の不思議がありましょうか!」
そしてスダルシャナは、クリシュナの許しを得ると、恭しくその周りをまわって礼拝した後、天の世界へと帰っていきました。
このような偉大なクリシュナの栄光を目にすると、ヴラジャの人々は非常に驚き、敬意を持って皆でそのことを話しながら、自分たちの家へ帰って行ったのでした。
その後のある夜、クリシュナとバララーマは、ヴラジャの女性たちとともに、森の中で遊戯にふけりました。
女性たちは白檀を体に塗り、花輪を飾り、清らかな衣を身につけて、御子たちに心からの愛を捧げて、美しい声で歌ったのでした。
夜空には月と星が輝き、そよ風が睡蓮の香りを運ぶ、この素晴らしい夜の到来を歓迎して、二人の御子は声をそろえて、すべての音階にわたる歌を歌い、衆生の耳と心を喜ばせたのでした。
二人の御子が美しく歌うのを聞くと、ゴーピーたちは恍惚となってわれを忘れ、服がすべり落ちることにも、華の冠が落ちることにも、少しも気づかなかったのです!
そのとき、富の神クベーラの家来であるシャンカキューダがそこへやってきて、泣き叫ぶゴーピーたちを、クリシュナとバララーマの目の前でさらい、北の方角へと逃げて行ったのです。
御子たちはすぐにその後を追うと、「こわがらなくてもいいよ!」と言って彼女たちを安心させ、すぐにシャンカキューダに追いつきました。
あっという間にクリシュナとバララーマに追いつかれた愚かなシャンカキューダは、恐怖で身を震わせて、ゴーピーたちをそこに置いて、あわてて逃げ去っていきました。
しかしクリシュナは彼の後をどこまでも追っていきました。その間、バララーマはゴーピーたちをしっかりと守り続けました。
クリシュナはすべてに遍満しているものの、シャンカキューダの後を追いかけ、ついに彼の頭を、強烈な拳の一撃で切断したのでした。
そしてシャンカキューダが頭につけていた宝石を奪うと、クリシュナはゴーピーたちのところへ戻ってきて、それを兄バララーマに、愛をこめて贈ったのでした。
つづく