クリシュナ物語の要約(22)「クリシュナとゴーピーたちの再会」
(22)クリシュナとゴーピーたちの再会
クリシュナに会いたくて、ゴーピーたちは声高らかに歌い、とりみだし、悲しげに涙を流しました。
するとそんな彼女たちの真っただ中に、突然、クリシュナが姿をあらわしました。黄色い絹の衣を身にまとい、花の首飾りをかけ、蓮華のような御顔には優しい笑みを浮かべて、愛の神をも魅了する、そのお姿をあらわされたのでした。
最愛の主であるクリシュナが戻ってきたのを見ると、彼女たちは喜びのあまりに眼を大きく見開いて、立ち上がりました。
一人のゴーピーは大いに喜んで、合掌してクリシュナの手を握りしめました。また別のゴーピーは、クリシュナの腕を愛しく自分の肩に置いたのです。
そしてあるゴーピーは、クリシュナが噛まれたキンマを両手に受け取り、あるゴーピーはクリシュナの御足を自分の胸の上に置いたのでした。
またある者は、今まで思い続けたクリシュナのお顔を、瞬きもせずに眺めつづけて、少しも飽きることがなかったのでした。
さらに別のゴーピーは、目を通してクリシュナを心に導き入れ、その眼を固く閉じるや、体中のすべての毛を逆立てて、心の中でクリシュナを抱きしめたのでした。
その後、クリシュナはゴーピーたちとともに、喜ばしきカーリンディーの岸辺へと向かいました。そこではジャスミンとマンダーラの香りを含んだそよ風に、黒蜂が歓喜して集まり、白い砂浜が広がっていて、煌々とした秋の月光により、夜の闇は駆逐されていたのです。
クリシュナはそこで、ゴーピーたちがスカーフで作った座に座ると、ゴーピーたちに賛美されながら、美しく輝いたのでした。
そしてゴーピーたちは、クリシュナの御手と御足を、自分たちの膝の上に置くと、次のように言いました。
「ある人は、自分を愛する人を愛します。
ある人は、自分を愛そうと愛すまいと、見返りなく愛します。
ある人は、誰をも愛することがありません。
ああ、主よ、どうかこれらについて教えてください。」
クリシュナは答えました。
「自分を愛する人だけを愛する人は、本当は自分の利益だけを考えているのです。そこには善意も美徳も見られずに、自己本位の動機があるだけなのです。
自分を愛さない人をも愛する人は、慈悲深き人といえるでしょう。そこには罪が全くない、善意と美徳が満ちているのです。
誰をも愛することがない人は、真我のみを喜ぶ聖者か、すでに何らかの目的を遂げて満足している者か、またはただのバカな人か、または恩知らずな人といえるでしょう。
そしてこの僕は、ああ、愛する僕の友たちよ、僕を愛する人にも、見掛け上はすぐにこたえることはありません。
もし貧しき者が宝を見つけて、しかしそれをすぐに失ったなら、彼はその宝に心を奪われ、その宝のことだけを考えて、他のことを考えなくなるでしょう。
それと同じように、僕はそのようにすることで、その人が僕のことだけを思えるようにするのです。
そして僕は、僕のために因習や聖典も無視して、家族をも捨てたあなたたちを、ああ、美しき人たちよ、心の中では深く愛しながらも、あなたたちが絶えず僕に信仰を抱けるよう、あなたたちの前から姿を消して、あなたたちの祈りや行ないを見ていたのです。
あなたたちは、自分たちを束縛する家庭の足かせを断ち切り、僕に心を強く結びつけたのです。どうか僕への奉仕の報いとして、あなたたちが限りなく善良でありますように!」
つづく
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