yoga school kailas

カル・リンポチェの生涯(5)

◎弟子を待つ師匠

 十六歳になったカル・リンポチェは、伝統的な三年間の独居修行を成し遂げる覚悟を決めた。
 ツァドラ・リンチェンドラの独居修行のドルッペン (隠遁修行の師) は、ラマ・ノルブ・トンドゥプであった。ラマ・ノルブ・トンドゥプは、隠遁所の手前にある小さな丘に住んでいた。隠遁所へ行くには、ラマの住居に続く小さな小道のドアを開けて、通り抜けなければならなかった。このドアは彼の寂静を守っていた。よって、ラマの甥である二人の守衛役の僧の許可なしには、誰もそこを通り抜けることはできなかった。彼らは、新来者すべてに訪問の目的を尋ねていた。

 しかしある朝、ラマ・ノルブ・トンドゥプ は、特別な訪問者が訪れることを予期しており、彼の甥たちに、ドアを開けたままにしておくようにと指示した。そして、「彼が到着したら、すぐにわたしの所へ通しなさい」と指示したのだった。

 ラマ・ノルブ・トンドゥプは、甥たちにはそれ以上詳細を打ち明けなかったが、シトゥ・リンポチェにはその理由を明かした。その前夜、守護神チャドゥパ(六本の腕を持つマハーカーラ)が彼のもとに現われた。そしてチャドゥパは、明日、弟子が到着すると告げて、こう言った。

「すべての必要な資質を兼ね備えたその弟子は、のちに多くの衆生を利するだろう。」

 チャドゥパは、手に素晴らしいカタを持つ弟子を歓迎するつもりであると告げて、締めくくった。 そういうわけで、ラマ・ノルブ・トンドゥプは、ドアを大きく開けておくようにと指示していたのだ。

 二人の甥たちは、その特別な訪問者の到着を心待ちにしていた。そして彼らはその訪問者がデルゲの国王、もしくは大臣のような高き身分の人物以外ありえないと思っていた。だが、もうそろそろ日が暮れようというのに、いまだ誰一人として訪ねてくる者はいなかった。夕方四時か五時頃、ようやく彼らは、背中に荷を担いで運んでいる二人の連れを伴った、ごく普通の僧を目にした。甥たちはラマ・ノルブ・トンドゥプのところへ確かめに行った。

「遅いですね。あなたが待ち望んでいらっしゃる訪問者は、まだやってきません。しかし、僧と二人の連れがやってきました。彼らをこちらに通すべきでしょうか?」

「そうです。そうです。彼らを通してください」

とラマは答えた。

 二人の甥は、訪問者を案内したあと隠遁所へ下りていき、ラマ・ノルブ・トンドゥプは特別な訪問者を心待ちにしていたが、二人の連れを伴ったごく普通の僧が来ただけだったと、僧たちに話した。
 それを聞いて皆が笑った。

 だが、特別な訪問客は、たしかに到着したのだ。その訪問客こそ、カル・リンポチェであったのである。

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする