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アディヤートマ・ラーマーヤナ(48)「ハヌマーンの捜索」

第二章 ハヌマーンの捜索

◎シーターの発見

 小さな姿で、ハヌマーンは眩く輝くランカーに入り、街中をくまなく歩き回った。
 シーターの捜索に従事しながら、彼はラーヴァナの住居に入り、至る所を探したのだが、どこにもシーターを見つけることはできなかった。そして彼はランカーシュリーの言葉を思い出し、アショーカの林へ向かった。
 ハヌマーンが入っていったそのアショーカの林の中には、天の樹木の深い茂みがあり、その中には至る所に宝珠がちりばめられた段のある溜め池があった。そこに住む多種多様な鳥や動物たちは、果実の重みで枝が地面に触れている木々の中を彷徨い、そしてあちらこちらには黄金のように光り輝く建物が連棟していた。風の子は、そこのあらゆる木の下を探し回ったが、シーターを見つけることはできなかった。それから彼は、丘の上の空にも届くかのように見える非常に高くそびえ立つ建物の場所へ行き、その巨大建築の中の貴石で造られた幾多の柱を見るや、驚嘆したのだった。
 さらにそこからしばらく進むと、葉が深く生い茂り過ぎていて完全に太陽の光を遮っているシンシャパーの樹を偶然見つけた。
 その枝は広範囲に渡って伸び、多くの金色の鳥たちがそこで羽を休めていた。その木の下で、ハヌマーンは、女悪魔が警護をする中に、大地の女神のように見えるジャナカの娘シーターを見つけたのだった。彼女の髪の房はほどけ、彼女の身体は極度に痩せて、弱っているように見えた。ひどく汚れた衣をまとい、極度に悲しみに打ちひしがれて、ときどき『ラーム、ラーム』と泣きながら、裸床に横たわっていた。すべての吉兆な身体的特徴があるにもかかわらず、彼女は、この苦境から助かる方法を見い出せないことと、断食のゆえに、身をやつしていた。
 シンシャパーの樹の葉を盾にして座すと、その偉大なる猿はシーターを見つけ、心中にこう思った。

「おお、遂に目的を果たしたのだ! 私は目的を果たした! 至高者ラーマ様からさずけられた使命を完遂したのである。」

◎ラーヴァナ、シーターを誘惑する

 すると、ラーヴァナの女性居住区の外から、ジャラジャラという音が聞こえてきた。ハヌマーンは不思議に思い、木の葉の中からその方向を見た。すると驚いたことに、ラーヴァナが大勢の女に囲まれながらこちらにやってきたのだ。十の頭と二十の腕を持つ彼は、白銀の山のように見えた。
 ラーヴァナはその間中ずっと、このように考えていた。

「ラーマの御手によって下されるわが死に、何が拍車を掛けておるのだ? ラーマはいまだシーターを探しに来ていないゆえに、わしはラーマと出会ってはおらぬ。何ゆえにそのようになるのであろうか?」

 常にラーマのことを考えていたため、ラーヴァナは前夜にある夢を見た。その夢は、ラーマによって遣われた変幻自在の猿が、たいそう小さな姿に変身して、木の上から自分を見ているというものであった。この不思議な夢を見て、ラーヴァナはこのように心中に思った。

「夢はときに真実となる。ゆえに、かくのごとく為そうではないか。わしは辛辣な言葉でシーターを傷つけて、彼女をズタズタに打ちのめしてやろう。そしてあの猿にそれを見せ、それをラーマに報告させるのだ。」

 このように考えつつ、彼はシーターが監禁されている場所に向かったのであった。
 足輪と小さな鈴の音が聞こえると、シーターは恐怖から縮こまってしまった。その美しき女性は今、涙を流し、心を完全にラーマに集中させながら、うつむいていた。
 そしてこのような様子のシーターを見るや、ラーヴァナは彼女に向かってこう言った。

「おお、美しき女! なぜわしを見るや、恐れて縮こまるのだ? ラーマは弟のラクシュマナと共に、森の部族たちの中に住んでおる。奴は見つかるかもしれぬし、見つからないかもしれぬ。わしは奴の居場所を突き止めるために多くのスパイを送った。至るところを精力的に探し回ったにもかかわらず、奴はまだ見つかってはおらぬ。
 お前に対してなんの切望も抱いてはおらぬそのラーマと共に、お前は何をしようというのだ?
 お前は常に奴を抱擁しながら、奴の傍に座っているのだろうが、あのラーマはそれでも、お前に対して決してなんの切望心を抱かないのだ。
 お前が奴に与えられるあらゆる喜びやお前のあらゆる美徳など、奴はとうに知っているが、それでも、奴はお前に対してなんの感情も抱いてはおらぬのだ。奴などなんの美徳もない、恩知らずの愚か者なのだぞ、おお、徳高き女よ!
 わしは己の住処にお前を連れ去った。お前はそのせいで、極端なほどの悲しみに打ちひしがれておる。それでも、奴はお前を救いに来ない。
 ならば、なにゆえにお前は、そのようなお前を愛してもいない男のことを思うのか? 奴は強さも自尊心も己の者たちに対する義理の心も持ってはおらぬ。
 無知な愚か者であるにもかからわず、奴は自分のことを偉大なる学者であると思っている。おお、素晴らしき美よ! お前に気のないあの見下げた人間を思って、何になるのか?
 だが、この悪魔の中の最高者であるわしは、お前に完全に夢中になっておるのだよ。ならば、なにゆえにお前はわしの告白を受け入れないのか?
 わしを受け入れるならば、お前はデーヴァ、ガンダルヴァ、ナーガ、ヤクシャ、キンナラなどのようなさまざまな種の存在の女の中の女王となるのだ。」

 これらのラーヴァナの言葉に憤慨して、シーターは草の葉で彼と自分の間を遮り、うつむきながらこのように話し始めた。

「ラーマ様への恐れから、あなたはラーマ様とラクシュマナが留守のときに苦行者を装ってやって来て、ああ、低い生まれの者よ! 雌犬が供物を盗むように、私をさらっていったというのに。
 すぐにあなたは、ラーマ様の矢によってバラバラにされることで、その報いを受けるでありましょう。
 あなたはラーマ様をただの人間だと思っているようですね。すぐにあなたはヤマの世界に送られて、その愚かさに気づくでしょう。
 あの矢で海を干上がらせるか、あるいは橋を架けるかして、ラーマ様はラクシュマナと共に、ここにあなたを滅ぼしにやって来られます。それには全く疑いはありません。
 ああ、見下げ果てた悪魔よ! あなたは今にも、如何にしてラーマ様があなたを息子と軍隊諸共に滅ぼし、私を都に連れて帰還されるかを知るでありましょう。」

 シーターのこのような辛辣な言葉は悪魔の王を激怒させた。彼は目を真っ赤にするほどの強烈な怒りに駆られて、剣を手に取り、それをシーターに振りかざそうと近づいていった。
 しかし、ラーヴァナの妻であるマンドーダリーがその間に割って入って、彼の軽はずみな行動を抑えると、こう言った。

「この苦しみに打ちひしがれ、飢え死にしそうな人間の女を手放したまえ。御身は数え切れぬほどのデーヴァやガンダルヴァやナーガの美しい天女たちを従えているではありませぬか。彼女らはいつも御身を寄る辺なき愛の目で見つめております。」

 するとラーヴァナは、歪んだ顔の見張りの女悪魔たちの方へと向かっていき、彼女たちにこう言った。

「この女をわしに惹きつけ、わしの支配下になるように、脅すでも、優しく説得するでもして、厳しくこの女を扱え。
 この女が二ヶ月以内にわしの支配下になろうものなら、この女はわしと共にこの国の可能な限りの快楽を味わうのだ。
 二ヶ月以内にわしの妻になることに同意しないならば、お前たちはこの人間の女を殺し、わしの朝食にこの女の肉を運んできなさい。」

 このように命じると、ラーヴァナは侍女たちと共に住居の中へと戻っていったのだった。

◎悪魔の脅しとトリジャターの夢

 女悪魔たちはただちに、辛辣な言葉でシーターを脅し始めた。その中の一人は彼女にこう言った。

「お前の若さなど、何の目的も果たさぬまま衰えていくのじゃ。しかしラーヴァナ様と共に生きるなら、それは果たされるであろう。」

 また別の悪魔は、怒った様子でこう言った。

「おお、ジャナキーよ、今すぐにでも、われわれにお前の手足を切り離して、バラバラにさせておくれ。」

 また別の悪魔は、あたかもシーターを殺すかのようにして剣を掲げ、さらにまた別のものは、すごい顔をしながら恐ろしい口を開けてシーターを脅かせたのだった。
 しかし、トリジャターという老いた悪魔は、他の悪魔にシーターを脅えさせることを止めさせ、こう言った。

「おお、非情な女たち! 自分らの身のためにこの言葉を聞きなさい。
 泣いているシーターを脅かしてはならないよ。むしろ、彼女の前でひれ伏しなさい。わしは今日、このような夢を見たのだよ。
 ――蓮華の目をされたラーマがラクシュマナと共にランカー全土を焼き尽くし、戦においてラーヴァナ様を殺される。そして彼はシーターを膝の上に乗せて、山の上に座しておられる。一方、ラーヴァナ様は裸で、全身油にまみれておられた。そしてご自分の頭でできた花冠を手にもって、ご子息とお孫方と共に、糞だらけの深い穴の中に入っていかれたのだ。
 ヴィビーシャナは逆に、偉大なる信仰心を抱きながらラーマの御足に礼拝し、ラーマに仕えておった。
 ラーマはすぐにも、ラーヴァナ様を一族諸共に滅ぼし、ヴィビーシャナを王として任命され、シーターと共にご自身の国へと帰還されるであろう。これは間違いなく起こることだよ。」

 トリジャターのこの言葉を聞くと、恐怖に脅えた女悪魔たちは無言になり、あちらこちらで眠り始めた。

◎絶望的な様子のシーター

 悪魔たちにかくのごとく告げられ、シーターはまるで何も救い手を見つからないかのようにして泣き崩れた。極度に嘆き苦しみ、彼女は眼から涙を流しながらじっくりと考えて、こう言った。

「この悪魔たちは、翌朝にでも私を食べてしまうでしょう。それには全くの疑いがありません。ならば、今すぐにでも死んでしまえる方法は何かないでしょうか?」

 このように悲しみに浸って、泣き叫びながら、何もそこを抜け出す術を見いだせないシーターは自ら命を断つことを心に決め、木の枝を手に持ちながら、しばらくそこに座っていたのだった。
 

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