アディヤートマ・ラーマーヤナ(34)「シーターの探索」
第八章 ジャターユの救済
◎シーターの探索
変幻自在の能力を持っていたマーリーチャを滅ぼした後、アシュラムへの帰路を急いでいる途中、ラーマは、浮かれない顔をして、惨めそうに彼のいる方向に向かってくるラクシュマナと会った。彼を見ると、偉大なる御方ラーマは、このようにお考えになった。
「ラクシュマナは、私が幻影のシーターを創って、本物とすり替えたことを知らない。私は真実を知っている。しかしそれでも、私は無智なる世俗の者の悲しみに打ちひしがれた態度を装って、彼を騙そう。
仮に私が平静のうちにアシュラムにとどまるのであれば、無数の悪魔の滅亡の機会はありえないであろう。
ゆえにこの時に当たっては、私は嘆きに打ちひしがれた愛人のように振舞おう。これはシーターの探索に着手するきっかけとなり、最終的には、われわれを悪魔共の生息地へと導いてくれるであろう。
ラーヴァナを一族諸共滅ぼした後、私は本物のシーターを私が彼女を隠した炎から連れ出し、最高の喜びの中、アヨーディヤーに帰還しよう。ブラフマー神の懇願により、私は人間の姿と方便をとった。そしてもうしばらくの間、そのようにし続けよう。これらの人間を装った私の活動は、未来において信仰の道を歩む者たちにとっての学びの対象となり、解脱の成就のための容易い方便をもたらすであろう。」
ラーマはこのように心を決め、ラクシュマナに会うや彼にこう仰った。
「なぜ私の愛しき妻を一人残して来たのだ? 悪魔共が彼女を連れ去ってしまったか、あるいは食ってしまったかもしれない。」
ラクシュマナは眼に涙を浮かべながら、謙虚に合掌して礼拝し、シーターに言われた非常に不作法な言葉についてラーマに報告した。
彼はこう言った。
「悪魔があなたのような声で『ああ、ラクシュマナ!』と叫んだときでした、シーター様が一刻の猶予も残さずにあなたを助けに行くようにと、私に仰せ付けられました。泣いているシーター様に、私は慰めようと、『善良なる女性よ! これはラーマ様の言葉ではなく、悪魔の言葉であります。どうか落ち着いていてください』と申し上げましたが、あの貞淑な御方は、口にできないような罵りの言葉で私を非難されたのです。それらの言葉をあなたの御前で申すことはできませぬ。私は耳を閉じながら、あなたに会いに急いだのです。」
そこでラーマはラクシュマナにこう仰った。
「そうだとしても、女の言葉を真面目に受け取り、私の美しき妻を一人残してきたお前は正しくなかった。われわれの不在中に、彼女は間違いなく悪魔にさらわれるか、食われたであろう。」
ラーマはひどく心配しながらこのように語り、アシュラムへと急いだ。そこにはシーターはおらず、ラーマは悲しみで完全に気が動転し、突然このような悲嘆に暮れた言葉を語り始めたのであった。
「ああ、愛しき人よ! お前は何処へ行ってしまったのだ? 前のようにアシュラムの中でお前を見ることができないなんて・・・・・・。もしかして、お前は人騒がせに私をからかおうと思ってどこかに隠れているのではないか?」
このように嘆きながら、彼は森の至る所を隈なく探し、森の神々や鳥、獣たちに『私のシーターが何処にいるか知っていますか? 森の鳥や獣や木々が、私を妻のもとに導かんことを』と言って尋ね回ったのだが、シーターはどこにも見つからず、ラーマはより一層彼女のことを嘆いたのだった。ラーマは全智者であるにもかかわらず、彼女をどこにも見つけられなかった。彼は生来至福であるにもかかわらず、彼女が理由で悲しみに支配されていた。彼は遍在者であり、動きのない存在であるにもかかわらず、彼女を探しに走り回った。彼は「私」という感覚、つまりエゴがなく、不滅の至福の本性であるにもかかわらず、シーターを妻として見なしていたゆえにひどい悲しみを経験し、嘆き悲しんだ。
一切の執着から解放されているにもかかわらず、その偉大なるラグ族の王子は、執着がある者のように、そしてマーヤーの御業の犠牲者であるかのように見えたのであった。しかし真の智者は、真実はそうではないということを知っている。
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