アディヤートマ・ラーマーヤナ(21)「ヴァールミーキーの過去の物語」
◎ヴァールミーキーの過去の物語
「おお、ラーマよ! あなたの御名の偉大さを、誰が適切に述べることができるでしょうか?――私をブラフマーリシの境地に導いてくださったその御名の力を・・・・・・
昔、私はある地域の部族の中の狩人の国に住んでおりました。生まれながらにしてブラーフマナであった私は、最も生まれの卑しい人々の行状に耽ったのです。
私は淫らな者でしたゆえ、低いカーストの女から子供たちが生まれ、彼らを支えるために泥棒や追剥と付き合い、生計を立てる手段としてそれらの職業に専念しました。毎日弓矢を装備して、すべての生き物を破滅させるために、死神の化身のように森を歩きまわりました。そうしている間に、あるとき私は深い森の中で七人のムニたちを見つけたのです。
私は彼らが炎や太陽のように光り輝いて見えました。強欲に動かされて、私は彼らから彼らのすべての所有物を奪いたいと思い、彼らを尾行し、彼らに止まるように命じました。私を見て、彼らはこのように言いました。
『おお、堕落したブラーフマナよ! なぜ私たちについて来るのだ?』
私はこう答えました。
『俺の家には腹を空かしたガキたちがたくさんいるのだ。俺は必要なものを手に入れるためにお前たちの持っているものを奪いに来た。
家族を支えるために、俺は山や森を歩き回っているのだ。』
しかし彼らは非常に優しい声で、私にこのように話したのです。
『家族のところへ行って、彼らにあなたが自分の信用のために毎日積んでいるその罪を進んで共有してくれるかどうか、一人一人に尋ねてみなさい。あなたがそれを聞いて帰って来るまで、われわれはここにいよう。』
ゆえに、私は家に帰り、妻と子供に、聖仙が仰ったことを伝えました。しかし彼らの返答は、私の稼ぎは進んで共有するが、私の罪は共有しないということだったのです。
彼らの言葉は私を途方もなく大きな後悔の気持ちに駆り立てました。私は急いで、慈悲深い聖者方が私の帰りを待っていた場所に向かいました。
私の心はそれらの聖者方を見ることによって浄化され、私は弓矢のような武器を捨て去り、彼らの前に礼拝してひれ伏しました。
私は彼らにこのように祈りました。
『おお、大聖者様方! 私が行くことを運命づけられている恐ろしい地獄から私を救ってください。』
このように彼らの前に礼拝してひれ伏した私に対して、聖者方はこう仰いました。
『起きなさい! 起きるのだ! あなたは救われるだろう。聖者たちとの接触は必ずや実を結ぶ。われわれはあなたにいくつかのアドヴァイスを与えよう。それによって、あなたは解脱を得るだろう。』
そして聖者方は集まって話し合いました。
『彼は間違いなく悪の道の者です。非行によって堕落したブラーフマナは、すべての善人から敬遠されるのが世の倣い。しかし彼はわれわれの下に庇護を求めてきた。ゆえにそれが困難であろうとも、われわれは彼を明智の解脱を得るための適切な助言によって救われなければならない。』
このように言うと、おお、ラーマよ、彼らはあなたの御名を『マラー(殺した)』という逆読みで私に伝授してくださり、心を集中させて絶え間なくそれを唱えなさい、と私に助言されたのです。
彼らは言いました。
『われわれが再びここに戻って来るまで、われわれがあなたに伝授したその御名を唱え続けなさい。』
このように指示されると、神のような聖人方は去って行かれたのでした。
私はすぐに至誠を持って彼らの助言を実行に移し始めました。私は一切の外界の意識を失ってしまうくらい集中して、その御名を唱えたのです。
一切の世俗的な執着がなくなり、私は少しも身体を動かすことなく長い間、この実践をし続けると、結果として、アリ塚(ヴァールミカ)が私の周りにできて、それは私の頭より高くなったのでした。
神の世界での千年の終わりに、私に教えを与えてくださったそれらの聖者方が、そのアリ塚で覆われならが座っている私の元へと戻って来ました。その状態にある私を見て、彼らは私にそこから出てくるようにと叫び、そして私はすぐに座から立ち上がりました。
太陽が雲から現れるように、私は土から出てきたのです。そこで聖仙はこう言いました。
『この土からの出現は、あなたの第二の誕生である。おお、聖者よ! あなたはこれから先、ヴァールミーキー(アリ塚から生まれた者)として知られるだろう。』
そのように言うと、彼らは天界へと去っていきました。
おお、ラグ族で最も気高き御方よ! あなたの御名『ラーマ』の力により、私はこの境地に達したのです。今私はこの人間の眼でシーターとラクシュマナと共にあなたを見るという恩恵を得ました。それによって、私は確実に解脱を果たしました。来てください、おお、ラーマよ! すべての善いことがあなたに起こらんことを。では、あなたが住むに適した場所をお見せしましょう。」
そう言うと、聖仙ヴァールミーキーは、ラーマとラクシュマナと彼の弟子たちと共に、ガンガーとチトラクータ山の間の地域へ行った。そこには広大な土地が広がっており、世界全体が真の住居であられるラーマは、二軒の広々としたわらぶき屋根の建物を建てた。そのうち一軒は東から西へと広がっており、もう一軒は南から北へと広がっていた。
こうしてラーマとシーターとラクシュマナは、それらの家に住居を定めたのだった。
聖仙ヴァールミーキーによって礼拝され、ラーマはシーターとラクシュマナと共に、まるでインドラがサチと大聖仙たちがいる天界に住むように、歓喜のうちにそこに住んだのだった。
-
前の記事
クリシュナ物語の要約(13)「大蛇カーリヤの救済」 -
次の記事
『アサンガ』