アディヤートマ・ラーマーヤナ(11)「ラーマとナーラダの対話」
アヨーディヤーの巻
第一章 ラーマとナーラダの対話
◎ナーラダの賛美
ある日、さまざまな装飾で飾られ、宝珠がちりばめられた王座に座し、青ユリの色のような御顔を持ち、カウストゥバという宝石を首につけ、装飾の付いた扇で煽がれ、宮殿の中でキンマを噛みながらのんびりと座ってらっしゃるラーマの御許へと、神仙ナーラダが空から降りてきた。
白い水晶のように光り輝き、秋の月のように清らかに、神仙ナーラダは突然、ラーマの御前に現れたのだ。
彼を見て、ラーマはただちに座から立ち上がった。合掌して挨拶し、そして偉大なる信仰心に心動かされ、彼はシーターと共にナーラダの前で礼拝をしたのだ。そして非常に満足しながら、彼は聖仙にこう仰った。
「おお、大聖仙よ! 人は輪廻の生のサイクルに捕われているがゆえ、あなたとの交わりを得られたことは、間違いなく貴重な祝福であります。それに、世俗の中に浸されたわれわれにとっては、おお、聖仙よ、なおさらのことなのです。
ああ、聖なる者よ! 私が今いただいた祝福は、私が過去に行なった善行の果報に違いありません。なぜならば、そのような善行のみが、世俗に濡れた者が聖者との交流を得るための助けとなるのであります。
ゆえに、私はあなたに拝見することができて真に大きな満足を得ました。おお、大聖仙よ! 私があなたのために何かできることはありませんか? あるならば、どうか、それが何であるか私にお教えください。そして、私はそれを達成するように努めましょう。」
そこでナーラダは、一切の帰依者が愛するラーマにこう言った。
「ああ、ラーマよ、なにゆえにあなたは、まるでただの世俗の者のように振る舞って、そのような言葉で私を誤った方向へ導こうとなさるのですか?
ああ、すべてに遍在する御方よ! あなたが輪廻に巻き込まれた者であるというあなたの意見は、ある意味では確かに本当であります。なぜならば、全宇宙の第一原因であるマーヤーは、あなたのコンソートではありませぬか?
彼女がブラフマーををはじめとする他の子供たちを創造しているのは、あなたの存在によってなのです。三グナから構成されるマーヤーが存在するのは、支えとしてあなたと共に在るからであります。
彼女が絶えず衆生の三つのタイプ――サートウィカ(白)である者、ラジャサ(赤)である者、タマサ(黒)である者――に生を与えているのは、あなたの支えによってなのです。これら三界のこの巨大な家族の中で、あなたは真にその一家の主であられます。
あなたはヴィシュヌ、そしてシーターはラクシュミー・デーヴィー。
あなたはシヴァ、そしてシーターはパールヴァティー。
あなたはブラフマー、そしてシーターはサラスヴァティー。
あなたは太陽神スーリヤ、そしてシーターはプラバー(光輝)。
あなたは月神シャシャーンカ、そしてシーターは吉兆なるローヒニー。
あなたはインドラ、そしてシーターはインドラーニー。
あなたは火神アグニ、そしてシーターはスワーハー。
あなたは一切を破壊する時(カーラ)であるヤマ、そしてシーターはそのコンソートのサムヤミーニー。
あなたは、ああ、世界の主よ、ニッリティであり、シーターはそのコンソートのタマシーであります。
あなたはヴァルナ、そしてシーターはそのコンソートのバルガヴィー。
あなたは風神ヴァ―ユ、そしてシーターはサダガティー。
あなたはクベーラ、ああ、ラーマよ、そしてシーターは繁栄であられます。
あなたは破壊者ルドラ、そしてシーターはルドラーニー。
簡潔に申し上げますと、この宇宙に存在する女性の御姿はすべて、吉兆なるシーターであられるのです。そして、この世に存在するすべての男性の御姿は、あなたであられるのです。
おお、ラグ族の子孫よ! ゆえに、これらの三界においては、あなた方お二人以外に誰も存在していないのです。
不可分性(アヴィヤークリタ)は、真にあなたの反映から生じた無智の範疇であります。そこから、マハータットヴァ(大原因)が生じ、そこからストラートマン(無数の『私』という感覚)が生じ、さらにそこから、無数の微細な身体(リンガ)が生じるのです。
生、死、喜び、苦しみを経験するのは、『私』という感覚からなる観念、ブッディ(知性)、五つの生命エネルギー(プラーナ)、そしてインドリヤ(感覚)です。それは、学者がリンガ・シャリーラ(個々の微細な身体)と呼ぶものなのです。
真にジーヴァと呼ばれるものは、彼(リンガと呼ばれる上記で述べた観念の中の意識の反映)なのです。個々の感覚の中で、それが個々の肉体的身体と共にあるジーヴァである間、身体(ジャガンマーヤー)として宇宙を有しているヒランニャガルバとして顕現するのは、無数の感覚の中の同様の観念の構造なのであります。言葉では表すことができない、無始なるアヴィディヤー(・マーヤー)は、純粋意識が映し出される媒体であるコーザルの付属物(カーラノーパーディ)と呼ばれているものなのです。
純粋意識には、三つの付属物――粗雑、アストラル、コーザル――があります。それらを自分と同一と見なしてしまったとき、それはジーヴァと呼ばれます。無限と個々、それらを持たぬ者、彼が至高者であります。
ああ、ラグ族で最も気高き者よ! あなたは、純粋意識、そして、覚醒、夢、睡眠の三つの状態の性質を持つ輪廻の生とは反対のものであられる目撃者であります。全宇宙はあなたから創造され、あなたの中で維持され、あなたの中に消えていくのです。ゆえに、あなたは真に、一切の顕現の原因であられます。
純粋意識(真我)を個々の自己(ジーヴァ)であると誤解することによって、まるで縄を蛇と見間違えてしまうように、恐怖が生じます。ゆえに、「『私』(真の本性における自己)は至高なる真我である」と理解すれば、人は一切の恐れと苦悩から解放されるのです。
純粋意識の光であられるあなたが一切の身体と関係があるブッディを輝かせるがゆえに、あなたは一切者の自己であられるのです。
まるで無智から、人が蛇を縄に重ね合わせてしまうように、そのように一切の実在物はあなたの上に重ね合わされています。その要因であられるあなたが知覚されるならば、それら一切の重ね合わせはあなたの中に溶解していきます。ゆえに、人は常にこの叡智の鍛錬を実践すべきなのです。
あなたのへの信仰心を授かった者たちにおいて、この叡智は経験として、ステージに応じて現われてくるでしょう。ゆえに、解脱(ムクティ)を得るのは、あなたへの信仰心を持つ者のみなのです。
私はあなたの帰依者とあなたの帰依者に献身を捧げる者たちのしもべです。ゆえに、どうか、私に祝福をお与えください、おお、主よ! そして、あなたのマーヤーによって私を迷妄になさらないでください。
私は、おお、主よ、あなたのお臍の蓮華から生じたブラフマーの子、つまりあなたの孫であります。ゆえに、ああ、ラーマよ! あなたの帰依者である私をどうか、お救いください。」
◎ナーラダの出発
そのように言うと、ナーラダは何度もラーマの前で礼拝し、眼から歓喜の涙を溢れさせながら、このように続けた。
「ああ、ラーマよ! 私はブラフマー神によってここに遣わされました。おお、ラグ族で最も気高き御方よ、あなたは、ラーヴァナを滅ぼすためにこの世にお生まれになられました。今、あなたの父君はこの国を守護するための支配者としてあなたを即位させようとなさっています。あなたが国の事柄で多忙になるならば、ラーヴァナの滅亡はおそらく行われないでありましょう。しかし、あなたは世界の重荷を取り除くという誓いを立てられました。どうか、あなたがその誓いを成就されますように。なぜならば、あなたは真理に献身しているからであります。」
これらの言葉を聞くと、ラーマは微笑みながらナーラダにこう言った。
「ああ、ナーラダよ! 私の言うことをお聞きなさい。私の叡智の中にないものはこの世に存在しない。私がかつて約束したことは、間違いなく成就されよう。それについて疑う必要はない。私は悪魔族すべてを滅ぼし、世界の重荷を取り除こう。少しずつ、時の流れと共に影響を及ぼすプララブダ(動いているカルマ)に従って、私はこれを為すであろう。
ラーヴァナの滅亡のために、私はダンダカの森に向けて旅立とう。私はそこで、ムニ(聖者)の身なりで十四年の月日を過ごすであろう。シーターの外観を誘因として、私はラーヴァナの仲間共を、奴の知人、一族諸共に滅ぼしてみせよう。」
そしてナーラダはラーマの周りを三回回り、彼に完全な礼拝を捧げると、許可を得て、自らの神聖なる住居へと旅立って行ったのだった。
このラーマとナーラダの対話を、不断の信仰心を持って毎日学び、あるいは聞き、あるいは思い出す者は誰でも、天人によってすらほとんど獲得することのできない、解脱によって生じる放棄の恩寵を受けるであろう。