『釈迦牟尼如来』(15)
その後、ヤサの54人の友人も、お釈迦様に導かれ、出家し、解脱しました。こうしてこの世に、お釈迦様の弟子として出家し解脱した者は60人となりました。
お釈迦様は彼らにこう言いました。
『修行者達よ、遍歴せよ。
多くの人々の利益のために、多くの人々の安らぎのために、世間に対する哀れみのために、神々と人間の幸福・利益・安らぎのために。
一人で遍歴し、教えを説け。完全で清浄な修行を知らしめよ。
この世には、汚れの少ない人々がいる。もし彼らが教えを聞かなければ堕落するが、教えを聞いたならば、ダルマを悟る者となるだろう。
修行者達よ、私もまた、セーナー村へと教えを説きに行こう。』
こうしてお釈迦様は、出家して解脱した60人の弟子達に、ばらばらになってインド中に教えを説いてまわることを指示し、自らも弟子達と別れ、教えを説くための旅に出発しました。
そのとき、悪魔パーピマーが、お釈迦様のそばに近づいて、話しかけました。
『汝は神と人間のあらゆる絆に束縛されている。
汝は大きな束縛によって縛られている。
出家修行者よ。
汝は私から逃れられないよ。』
『私は、神と人間のあらゆる絆から解放されている。
私は、大きな束縛から解放されている。
悪魔よ、汝は敗れたのだ。』
『心の束縛というものがあり、
それは虚空を飛翔して動き回る。
出家修行者よ。
汝は私から逃れられないよ。』
『色・形と音と香りと味と肌に触れるものとは
心を楽しませるものであるが
それらに対して、私の欲は離れてしまっている。
悪魔よ、汝は敗れたのだ。』
これらの会話が為されたとき、悪魔パーピマーは、
『世尊は私を知り尽くしている。スガタは私をよく知っている』
と言って苦しみ憂いて、姿を消してしまいました。