yoga school kailas

「解説『スートラ・サムッチャヤ』」第八回(6)

◎自分の徳を見せびらかさない

【本文】

 また、同じくサーガラマティパリプリッチャーには、こう説かれている。

「大乗を求めるのに障害となるものが四つある。
 それは、自分の徳を他人に見せびらかすこと、
 他人の徳をバカにすること、
 名誉を得意がること、
 そして、人に怒りをぶちまけることである。」

 はい。これはね、シンプルな教えなのでしっかりと心にとめたらいいですね。
 大乗の障害となるもの。まず「自分の徳を他人に見せびらかす」。ね。
 そしてその対比として、「他人の徳をバカにする」と。
 つまり、他人がやった素晴らしい善いこととか、あるいは、まあ徳って広い意味でね、広い意味で徳を積んだこと。修行の進歩とか、それを馬鹿にすると。で、逆に自分が積んだ善いこととか修行のメリットとか、それはちょっと人にこう、宣伝したく思うと。
 菩薩っていうのはいつも言うように、縁の下の力持ちでなきゃいけない。その最高の理想が、何度も言ってるマンジュシュリー的な菩薩なわけだけども。だから逆の発想の方がいいですね。逆の発想っていうのは、まあこれも『入菩提行論』とかにありますけども、「おれの徳は――まあ陰徳って言うわけですけども――絶対にバレないようにしたい」と。変な話なんだけどね。「おれ、かなり徳積んだけど、誰にもバレないぞ」と。ちょっと今コミカルな感じで言ってるけどね。実際には皆さんそうする必要ないけども、一応皆さんの心を変えるためにちょっとコミカルなっていうか、極端な言い方しますよ。極端に言うと、「絶対おれは徳を誰にも気付かせない」と。ね。「能ある鷹は爪を隠す」じゃないけど、「おれは結構、徳積んだかもしれないが、これが誰にも気付かれないようにしたい」と。「誰もおれを褒めないでいてほしい」と。ね。逆に他人の積んだ徳、それをもし自分が気付いたなら、「みんな知ってほしい!」と。ね。「みんなにこれが明らかになって、みんながあの人を本当に、あの人の素晴らしさを称賛するようになってほしい」と。こういう気持ちが菩薩には大事なんだね。あの人っていうのは全員ですよ。分け隔てなく、この人はこういう徳を積んだと。「ああ、これはみんな本当に知ってほしいな」と。自分が徳を積んだと。「これは誰も知らないようにしてほしい」と。
 つまり『入菩提行論』の第八章にあるように、「自他転換の法」っていうんだね、こういうのはね。エゴの普通の働きを逆転させるんです。エゴは普通逆だからね。「自分が積んだ徳はみんな知って!」「自分が積んだ悪は誰も知らないでほしい」と。ね。で、他人が積んだ徳には嫉妬するから、「あんなの誰も知らないほうがいいな」と。ね。で、他人が積んだ悪は、「ばらしたい」と思ってる(笑)。これを真逆にするんです。
 もう一回言うよ。自分が積んだ徳は「絶対誰も知らないでほしい!」と。「やべえ」と。だから自分が悪を犯したときと同じようにしてください。悪を犯したとき、そういう気持ちになるでしょ? 「やっちゃった!」と。「もう誰も知らないでほしいな!」と。こういう感じです。「あ、徳積んじゃった!」と。徳積んじゃったっていうか、徳は積まなきゃいけないよ(笑)。積極的に徳積んで、積んだ徳を「誰も知らないでほしい」と。で、逆に自分が積んだ悪業は、「みんな知ってくれ!」と。「ここに悪人がいます!」と。
 で、逆に他人が積んだ徳に関しては、「もう誰か気付かないかな」と。「なんでみんな気付かないんだろう」と。「早く気付かれてほしいな」と。呼んできたりとかね。「Y君が二時間蓮華座達成したよ!」と。「早くみんな来て!」と。あるいは誰かがこれだけのお布施をしましたと。あるいはある人がこんなにも心が変わりましたと。もうみんな世界中の人が知ってほしいと。
 で、逆に、人が積んだ悪業は、できるだけ知られないでほしいと。もちろんそれを直すための、浄化するためのアドバイスはしなきゃいけないけども。それが、例えば別に、人に知られる必要はないからね。その、人が知ってほしいっていうのは完全にこれは阿修羅の働きです。この人、悪を積んだ。例えばY君こんな悪いことをやった。「なんでこれみんな知らないの?」と。「これは知られるべきでしょ」と。これ阿修羅です(笑)。そんなは必要ない。決してそれは誰にも知られないでほしい。だって本人も恥ずかしいだろうし、本人がそれは直せばいいだけの話だから。この心の働きが大事なんだね。
 だから今、ちょっと皆さんにショックっていうかな、心を変えるためにちょっと極端に言ったけども。まあ実際にはそこまで極端にする必要はないんだけども、決して自分の徳を他人に見せびらかさない。そして決して他人の徳を馬鹿にしない。否定しないということですね。

share

  • Twitterにシェアする
  • Facebookにシェアする
  • Lineにシェアする