yoga school kailas

「解説『ただ今日なすべきことを』」第一回(7)

【本文】

正中線で生きる

 ヨーガ等の修行が進んでくると、まず丹田に気が集まり、それだけではなくて、重心が丹田、そして正中線に落ち着くようになります。
 そしてそれはさらに中丹田(胸)、そして上丹田(眉間)へと上がり、最後には頭から抜けるようになります。

 これはどういうことかというと、体の中心に棒が一本刺さったような感じになり、その他の力は抜けます。肩の力が抜け、リラックスした状態になります。
リラックスしているのですが、正中線がぴんと張り、頭から上に引っ張られているような感じなので、常にしゃんとした感じになります。

 瞑想においても、普段の生活においても、このような体の状態を保てることが理想となります。

 多くの人の場合、たとえば正中線ではなく、肩で生きています。つまり肩に棒が刺さった感じで、いつも肩を張って生きるパターンです。
あるいは別の人の場合、背中に棒が刺さり、猫背の感じになります。

 リラックスといっても、ただ力が抜けているだけでは、ただの怠け者になってしまいます(笑)。
 しかし緊張していては、余計なところに力が入り、瞑想できませんし、気の流れも滞ってしまいます。

 瞑想中の精神状態も、緊張でもなく、ただ力が抜けているだけでもない、純粋な集中とリラックスの状態をつかまなければなりません。

 これは人生においてもそうですね。自分の中心に、天に向かって一本、中軸を入れ、それをピンと張りつつ、背筋を伸ばしつつ、肩の力を抜き、リラックスして生きることが、人生で全力を出す秘訣です。

 はい。これは今度はいきなり、まあエネルギー的なっていうか、フィジカルな話になってきますが、まずヨーガ的な修行を進めていくと、まず丹田に気が集まってきます。つまり丹田っていうのは臍のちょっと下あたりに気が集まってきて、で、そこに、なんていうかな、重心っていうか、自分のその重心みたいなのが置かれるようになります。で、武道とか気功とかで、よくそういう話はするよね。丹田だと。で、そこまでしか普通言わないんだけど、実は丹田って三つあるんです。それがここに書かれてる――つまりここの臍下っていうのは下丹田っていうんだね。で、次に胸のところに中丹田ってのがあります。で、眉間にあるのが上丹田。つまりこれはヨーガ的にいうとマニプーラ・チャクラとアナーハタ・チャクラとアージュニャー・チャクラだね。
 で、つまりこれは、正しく武道なり、気功なりでもちゃんとやってたら、まず丹田、下丹田に気が集まって、それが上昇して中丹田、上丹田ってなるはずなんです。でも現代的なヨーガにしろ、仏教にしろ、気功、武道にしろ、あまりねえ、気を上げるってことはあんまりやらないんだね。でも本当は気をしっかり上げなきゃいけないんです。ためて上げるんだけどね。ためて上げることによって、自然にこれが生じます。自然に、エネルギーの中心が上に上にとだんだん上がっていきます。で、同時にここに書いてあるように、あの、棒がねえ、ちょっと刺さったような感じになるんだね。
 これはわたしの経験なんだけど、あの、だんだんその棒が上がってくるんです。あの、最初、この胸のあたりまでなんか棒が刺さってる感じがある。で、それがずーっと上がってきて、最終的には、もう頭頂まで棒が上がってる。だから人形劇の人形みたいな感じです。あの、棒がぐーっと刺さってて――言ってる意味分かるよね?――つまり、支えがこれしかないんです。正中線のこれしかなくて、ほかはただの布とかみたいな感じだから、ほかは全部、力が抜けてるんです。でも正中線でパッとなってるんだね。
 で、そうじゃなくて現代の人は、その、この棒が、つまり人形で考えたら分かるけど、棒が肩とかに刺さってる人が多い。これはまあちょっと、なんていうかな、怒りとかが強い人はもうこういう感じなんです。ちょっと極端にいうとね。こうやって生きてる。こういうおばさんとかよくいると思うけど。もう、もうレスラーみたいな(笑)、こういう。これは駄目だと。で、逆に、あの、背中の方でこう突っかかってる人はこう猫背になる。これもエネルギーが突っかかってる人。じゃなくて、スッとこう入るんです。これはだから「姿勢良くしなさいよ」っていう世界じゃなくて、自然にそうなるんです。自然にスッと入るんです。そうすると、歩いてたりしてても、なんか本当に頭がウッと上から引っ張られてるような感じになるんだね。だから、イメージでいうと、棒が突き刺さって、その棒を上から引っ張られてる感じ。でも、それは真ん中だけ引っ張られてるんです。真ん中だけ引っ張られてるから、何度も言うけど肩とかほかのところは力抜けてるんです。ただ真ん中だけ引っ張られて、こう操られて歩いてるような感じ(笑)。いや、本当にそうなるんです。
 で、それは結果的に本当にそうなるんだけど、普段からそういうふうなことを意識してもいい。意識するとそれは多分早くなるんです。つまり、棒が刺さってて頭が引っ張られてるような感じで、日々、瞑想したり歩いたり――立ってるときもそうだけどね。そういうのを心がけると、こういう修行はね、進むと思います。はい。
 ね、これ最後は、あの、ちょっと話が拡大して、瞑想中、そして人生にまで拡大してるけど(笑)。「人生においてもそうですね」っていうのは、これはつまり、ちょっとこれはまあ、なんていうかな、当てはめた話だけども、「天に向かって一本、中軸を入れ」っていうのは、さっきの話でいうと、常に心を神に合わせ――ただ、なんていうかな、そこにのみ自分の、正中線というか、人生の中軸を置き、ほかのことはリラックスできると。これがまあ人生の秘訣ですよと。全力を出す秘訣ですよと。つまりさっき言ったような、神にすべてを任すっていう考え方ができず、一つ一つ目の前のことに――まあ集中するのはいいことなんだけど、とらわれてしまうと力が入るんだね。それはつまり中軸ではなくて、肩とか背中とか腕とかに力が入る。力が入ることによって緊張し、失敗したり、あるいはうまく力が出なかったりする。それによって、より否定的になったり、あるいは逆にたまたま成功したら、ちょっと有頂天になったりしてしまう。
 じゃなくて全集中を神に――まあ神じゃなくてもいい。あの、正しい教えでもいい。正しい教えとか神とか、そういう部分だけにただ向けて、あとはリラックスなんです。つまり、つまり全力で正しく生きると。全力で神を思念して生きると。で、ほかの、その目の前に生じるいろんなことに関しては、とらわれないと。だから例えば何かやるべきことがあったとして、それが、まあいつも言うように、成功しようが失敗しようがとらわれない。重要なのは、神を意識していますかと。あるいは正しい教えを意識していますかと。それだけなんだと。でもそうじゃなくて、「あ、これ成功したらどうしよう。失敗したらどうしよう。成功したらおれはヒーローだな」と。「失敗したら、おれは生きていけない」とか、こういうことにとらわれるから力が入るんだね(笑)。だから一つ一つのことは、さっき言ったように、無常であると、さらっと流せばいい。じゃなくて大事なことだけは、しっかりとバーンとこう芯を入れるんです。これが人生の秘訣ですよということだね。
 前も何回も言ってるけどさ、わたし、前、こういうヨーガ教室とかいろんなところで、あの、こういう、なんていうかな、勉強会とか、レクチャーとかを最初し始めたときって、結構こう、なんていうかな、あの、肩に力が入ってたり、緊張してたこともあったんだね。つまり「おれ、今日うまく話せるかなあ」とか、まあ逆に、「よし、今日はこういうことを言って、みんなを感動させてやろう」とか、いろいろそういう、あの、すごく力が入ってたことがあったんだけど、あるときからちょっとバクティ的なのに目覚めてきて――あるときからね、これは現実的な話として、あるときから勝手にこう、なんていうかな、言葉が出てると気付き始めた。「あれ? ちょっと待てよ」と。例えばこの目の前にいる人に、最も利益があるかたちで自然に言葉が出てる。「あれ? これ、おれじゃねえな」と(笑)。
 つまり例えばですよ、その、U君が質問して、わたしが答えたとして、それはU君と、U君を見守ってくれてる神のやりとりなんだね。で、わたしはなんなのかっていうと、あの、まだU君は瞑想進んでないから、神と直接対話ができない。よって、ちょっとこう、ハード、ハードっていうか、アンプみたいな感じで、それをこう出力しているだけなんだね(笑)。ということはわたしはただのスピーカーであると。わたしが偉いんではないと。そこの音源が偉いんであると(笑)。そういう感じになってくると、「おれ、今日うまくしゃべれるかなあ」とか、そういうのは全然なくなってくるよね。「あっ、すべてはただ神のなすがままになされている」と。
 だからこれは、日常のさまざまなできごとも全部そうなんです。すべてはただ神がなさってる。わたしはその道具みたいなもんだから、道具が緊張するのはおかしいんです。
 例えばわたしがトンカチで釘を打とうとするときに、この金槌がね、ドキドキドキと。「おれはうまく打てるのだろうか?」と。「さあ、失敗したらどうしよう」と。でも、失敗するしないとか、うまく打つ打たないは、この手、手っていうかその人間が握ってるわけでしょ、その成功の鍵は。金槌が緊張してもしょうがないよね(笑)。それと同じような感じなんだね。
 だから、この世のいろんな現象にぶち当たるときも、もちろん全力でぶち当たんなきゃいけないんだけど、力抜いてリラックスしてぶち当たんなきゃいけない。しかし、この正中線っていうか神とか真理とか、そういうものに対する、あの、筋っていうかな、棒は一本ちゃんと通しておかなきゃいけない。これがまあ、人生で全力を出す秘訣ですよっていうことですね。

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