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「菩提行の補助者」

【本文】

 また、これらの称賛等は、私の安穏と、(輪廻の苦しみを)厭う気持ちを滅ぼす。そして徳ある者にねたみを生じ、その幸福に怒りを起こさしめる。

 だとするならば、称賛等を破るために、私に対して立ち上がった人々は、私が悪趣に落ちるのを守るために、努めているのではないか。

 解脱を求める私が、所得と尊敬に束縛されるのはふさわしくない。その束縛から私を解放する人々に、どうして怒りを生ずべきであるか。

 苦しみに落ちようとしてる私に対し、仏陀の加護によって、いわば遮蔽の扉となってくれた人々に、どうして私の怒りがあるべきか。
 

【解説】

 ここも読んだだけでも理解できると思いますが、とてもすばらしい部分ですね。

 称賛を受けることによって、我々の心は慢心に陥り、また、もっと称賛されたいという期待や、非難されたくないという恐怖、そういう二元の世界に引きずり込まれ、心の安穏が崩れます。
 そして、我々は修行の基本としてこの輪廻の苦しみを認識しなければならないのに、称賛されることによって実体のない喜び、現世への執着が生じ、輪廻を厭う気持ちが弱まってしまいます。
 さらには、今まで書いてきたように、称賛から生じる慢心によって、他者へのねたみや、他者の幸福を嫌う心まで生まれてしまう危険性があります。
 これらによって、私は真理の道から外れ、悪趣に落ちてしまうかもしれません。

 だとするならば--たとえば、ある人が、称賛されている私の悪口を言ったり、私への称賛を否定したりする人が現われたりしたとしたら--この人は、この人はまさに、私を悪趣から救うために立ち上がった人だと、考えられるのではないか、ということですね。

 私の所得を奪ったり、私への尊敬を破壊する人が現われたら--これも大変な恩人といえます。なぜなら、私は解脱を目指しているのであって、所得や尊敬への執着は、解脱の妨げとなるからです。そのように私の解脱の手助けをしてくれているともいえる恩人に対して怒りを発するとはどういうことだということですね。

【本文】

 また、「彼は善を行なうのを妨げる」といって怒りを起こすのも正しくない。忍辱に等しい苦行はない。これはまさにその機会ではないか。

 そこでこれに、自己の過ちによって私が堪忍を行なわなければ、功徳の因が到来しているのに妨害するのは、まさしく私自身である。

 それがなければあるものが存在せず、またそれがあればあるものが存在する--このようなものが、あるものの因である。どうしてそれが妨害と言われうるか。

 実に適当なときに現われる乞食は、布施の妨害とはせられない。また出家を志しているところに出家が到来しても、それの妨害とはいえない。

 世に托鉢の行者はいたるところに見受けるが、私に害を加える者は得がたい。なぜなら、私が害を加えなければ、誰も私に害を加えないからである。

 そこで、努力しないで得られた私の敵は、あたかも家の中に現われた宝のようなものである。それはまさに菩提行の補助者であるから、親しまれねばならない。

【解説】

 私に害を加える人に怒りを発するのを肯定する考えとして、
「彼は私に害を与えることで、私の修行の邪魔をするから、怒ってもいいのだ」
というエゴの言い訳が生じるかもしれません。しかしそれも間違いだということですね。なぜなら、害を与える人こそ、忍辱の修行に必要なパートナーだからです。彼こそが、忍辱の修行の貴重な機会を与えてくれるのですから。
 「害を与える人」の出現を無視し、そこで忍辱の修行を行なわず、ただ彼を排斥することに専念するなら--貴重な修行の邪魔をしているのは、その相手ではなく、自分自身ではないか、ということですね。

 そもそも、私が教えにのっとり生き、修行をしている以上、周りに害を与えることはほとんどないし、修行が進むほど、周りから称賛されたり、やさしくされるようになっていくでしょう。そう、修行をし、徳を積み、戒を守っている人にとって、普通は、自分に害を与える人というのは、現われにくいはずなのです。
 しかし、菩薩の修行をするには、自分に害を与えてくれる人というのは必要なのです。それは忍辱の修行というだけではなく、菩薩の器を広めるためにも、四無量心を深めるためにも、自分に害を与えてくれる人の出現は必要なのです。
 だから、突然現われたそのような「自分に害を与える人」の存在は、あたかも貧乏な家に、突然、宝物が現われたようなものなのです。だから彼を排斥するのではなく、修行を進めてくれる最高の友として、親しみを持って愛さなければならない、というわけですね。
 
 非常に深く、正しく、心の広い見解ですね。しかしこれは比喩ではなく、実際にこのようであらねばならないと思います。

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