yoga school kailas

「日常の振舞い方」

【本文】

 公の前で楊枝を投げたり、痰を吐いてはならない。ことに、水の中に、あるいは食物の生育する土地を、尿等で汚すことは禁ぜられ、呵責せらるべきである。

 口いっぱいに食をほおばってはならない。物を言いながら食ってはならない。大口を開けて食べてはならない。足が直接地に接触しないところに座ってはならない。同時に両手をさすってはならない。

 ただ一人の他の婦人と共に旅行せず、寝床や座を一つにするなかれ。すべて聖典のうちに調べて、かつ問うて、世人の嫌悪することを避けよ。

 決して指をもって指図してはならない。道を教えるにも、恭しく右手の全体で教示すべきである。

 緊急の用でない限り、腕をあげて人に呼びかけるな。(人を呼ぶには)たとえば、指をはじいて音を出すことなどがなされるべきである。そうでなければ、正しい行状を破ることになる。

 世尊のニルヴァーナにおける臥し方のように、願わしき方向(北方)に頭を向けて臥せよ。(眠りから覚めたら)正智をもって、遅滞なく、規律にしたがって軽やかに立て。

 
【解説】

 この辺は日常における身の処し方が書いてありますが、時代と国の背景もあるので、現代の私たちとしては慎重に受け取るべきところですね。

 まず、公の前で、楊枝を投げたり、痰を吐いたり、川とか畑とかにおしっこをしたりすることを禁じています。これはもちろん守るべきことですね。他の人を嫌な思いにさせますから。
 食べるときは、口いっぱいにほおばって食べたり、しゃべりながら食べたり、大口を開けて食べてはいけないとあります。食事の理想は、師や三宝への供養を念じつつ、少しずつよくかんで食べることだということでしょう。
 足が地につかないところ云々というのは、要するに高いところに腰掛けて足をぶらぶらさせたりしてはいけないということですね。
 同時に両手をさすってはならないというのは、私たちにはぴんと来ませんが、これはその当事良くないとされた作法でしょうか。
 このような、本質的真理とは関係ない、時代背景に応じた決まりごとというのは、現代では無理に守る必要はないと思います。
 後で出てくる、人への指図や呼びかけ方もそうですね。腕をあげて人に呼びかけるのは駄目で、指をパチッとはじいて呼びかけるのが良いとされていますが、現代では逆に、指をはじいて人を呼んだりしたら、傲慢というか馬鹿にされているように感じるかもしれません(笑)。指で指図したり、腕をあげて人を呼んだりするのは、少なくともこの時代のインドほど、今の日本では失礼に当たることはないでしょう。だからこの辺はケースバイケースで、今の自分のいる社会背景を考えて、取り入れるべきところだけ取り入れたらいいと思います。

 異性と二人きりで旅行したり、一緒の部屋に泊まったりするな、とありますね。まあ、この入菩提行論全体が、出家修行者に向けて書かれた教えですから、異性と二人でいると、最初はその気がなくても、不邪淫の戒を破ってしまう危険性があるということが一ついえるでしょう。そしてもう一つは、実際そういうことがなかったとしても、修行者に対する周りの信用をなくしてしまうということですね。
 しかしもちろんこれも出家修行者向けの話であって、たとえば現代において、妻帯している修行者が配偶者と二人でいても、もちろんそれは問題ないでしょう。

 最後の部分は、お釈迦様がお亡くなりになるときに、北方に頭を向けて横になり、お亡くなりになった(涅槃に入られた)とされています。そこで仏教では、寝るときは頭を北側に向けるのが良いとされているんですね。日本では逆に北枕は縁起が悪いなどとされますが、これはこの通り、北向きに頭を向けて寝るのがよいと思います。しかしこれも、いろいろな家の状況に応じてケースバイケースで取り入れればいいことで、北向きにするのが無理ならばそれ以外でもいいでしょう。
 そして朝、眠りから醒めたら、正智をもって、遅滞なく、規律に従って軽やかに立て、とあります。
 つまり、普通、意識が目覚めてきても、「ああ、もう少し寝ていたいな」とかそんな感じでダラダラと寝床に入っていたりするものですが、そうではなく、眠りから醒めるや否や、真理に基づいた意識を即呼び覚まし、ダラダラすることなく、速やかに、軽やかに起き上がれ、ということですね。
 実は私はこの入菩提行論をかなり読み込んでいたので、この「眠りから覚めたら、正智をもって、遅滞なく、規律にしたがって軽やかに立て。」という一文も頭にあって、朝、起きるとこの一文を思い出し、ぱっと飛び起きる、ということがよくあります(笑)。まあ、朝のスタートは大事ですから、どちらにしろ起きるのですから、正智をもって、速やかに、軽やかに起きるのがいいでしょうね。 
 低血圧でなかなか起きられないという人は、ぜひヨーガ修行に励んでください(笑)。

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