「三苦」
◎三苦
【本文】
『パリナーマターパ・サンスカーラドゥフカイルグナヴリッティヴィローダーッチャ ドゥフカメーヴァ サルヴァン ヴィヴェーキナハ
現象の転変と現実の悩みとサンスカーラは苦しみであり、さらにはグナの働きは互いに相反するので、すべての存在は苦しみである。正しく識別する人にとっては。』
はい。これはまさにさっき言った、お釈迦さまが説いた第一の真理ですね。現象の転変――つまりカルマによって全ては無常であり、すべては移り変わっていくと。そして現実の悩み――これは現実世界において、いろんな苦しみが生じますよと。そしてサンスカーラ……――これは今説明していて気がついたけど、これは仏教でいう「三苦」だね。「三苦」っていうのは、無常による苦しみ。それから、苦しみの苦しみ。それから、サンスカーラ――つまりわれわれの経験の素因、残存印象みたいなものがもたらす苦しみ。この三つを「三苦」って仏教では定義してるんですよ。これはまさに同じですね(笑)。『ヨーガ・スートラ』も仏教ですね(笑)、完全にね。
これはまさにその時代、おそらくヨーガと仏教というのはお互いに、あるときは切磋琢磨し合い、あるときは反目し合いながらも同じ道を歩んでたんだろうね。これは読む人が読めば分かる、仏教でいうこところの三苦です。全ては無常であるということ。それから現実的にいろんな苦しみが生じるっていうこと。それからサンスカーラっていうのは、われわれの心の奥にある情報――ここでいっているのは、苦しみの情報だね。苦しみの情報がたくさん自分にあることによって、われわれは何もしないでも苦しいんです。で、これはすべて苦しみだよと。
で、グナの働き――ここはちょっとヨーガ的だけど――この世を構成しているものを「グナ」といって、それはサットヴァ、ラジャス、タマスっていうのがあるわけですが、サットヴァは光を与えようとする。タマスは闇を与えようとする。ラジャスはとにかく動こうとする。この三つの相反するエネルギーが、ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぶつかり合ってるのがこの世界です。だから調和がないんだね。この調和が取れた状態を「シャーンティ」っていうわけだけど、調和がないから、われわれの世界っていうのは非常に不安定で、確固たるものもありませんよと。よって、すべての存在は苦しみですよと。正しく識別する人――つまりお釈迦様みたいに、すべてをありのままに見れる人にとっては、この世は苦しみでしかないよっていうふうにみえるっていうことだね。