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「ヴィヴェーカーナンダ」(29)

 1898年八月の初め、ヴィヴェーカーナンダの熱心な信者であったミュラー嬢からの多額の布施によって、現在のラーマクリシュナ僧院の広大な土地が購入されました。他の信者たちも気前よく布施をし、僧院の建物が建てられました。

 ラーマクリシュナの遺骨が納められたラーマクリシュナ寺院は、ヴィヴェーカーナンダのアイデアにより、「すべての宗教はひとつ」というラーマクリシュナの教えをあらわすため、見る角度によってヒンドゥー教の寺院、イスラム教のモスク、キリスト教の教会などにも見える、珍しいデザインで建設されました。

 その頃、西洋でヴィヴェーカーナンダに感化された弟子や信者たちも、続々とインドにやってきて、ヴィヴェーカーナンダと一緒に旅をしたり、救済の仕事を手伝い始めました。

 ニューヨークでヴィヴェーカーナンダのクラスに参加していたジョセフィーン・マクラウド嬢は、ヴィヴェーカーナンダの生涯の献身者でした。あるときヴィヴェーカーナンダは彼女に、一週間、聖音オームについて瞑想するようにと指示しました。一週間後、ヴィヴェーカーナンダが彼女に何を感じたか尋ねると、マクラウド嬢はこう答えました。
「それは心の中の真っ赤な輝きのようでした。」

 ヴィヴェーカーナンダは彼女に言いました。
「常に覚えておきなさい。あなたは、たまたま一アメリカ人であり、一女性でありますが、常に神の子なのです。昼も夜も、自分が何者であるかを自らに言い聞かせなさい。このことを決して忘れてはなりません。」

 マクラウド嬢がインドに来て間もないころ、ヴィヴェーカーナンダ一行の一人としてカシミールを旅していたおり、彼女は、宗派を示すしるしを額につけている一人の僧を見て、笑い出しました。彼女にはそれがグロテスクなものに見えたからでした。すると前を歩いていたヴィヴェーカーナンダは、振り返り、まるでライオンのような鋭い目で彼女をひるませると、厳しくこう叫びました。
「干渉するな! あなたは自分を何様だと思っているのか。あなたは何をしたというのか!」

 マクラウド嬢は自分の行為を後悔し、うなだれました。のちに彼女は、自分が笑ったその僧が、かつて托鉢をしてヴィヴェーカーナンダのアメリカ行きの費用を集めた弟子の一人であったことを知りました。

 ある時、ヴィヴェーカーナンダの私用のためのお金がほとんど底をついていることを知ったマクラウド嬢は、ヴィヴェーカーナンダが生きている限り、毎月資金を援助し続けることを約束し、そしてその手始めとして、半年分のお金をヴィヴェーカーナンダに布施しました。それは多額のお金でしたが、ヴィヴェーカーナンダは冗談半分に、
「これだけで自分は大丈夫だろうか?」
と言いました。それに対してマクラウド嬢もユーモアたっぷりにこう答えました。
「毎日、生クリームをたくさん食べていたら足りませんね!」

 

つづく

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