「チベット仏教のプロセス」
◎チベット仏教のプロセス
(M)『虹の階梯』を読んだんですけど、そこにクンダリニー・ヨーガのことがいろいろ書いてあって、それで、とりあえずそれが可能になるまでには全部の、なんていうんですかね、究竟第? 究竟次第の瞑想のプロセスを完全にマスターするまでの長い間の修行期間が必要とか……それはどういうことですか?
チベット仏教の修行のプロセスは簡単に言うと、まず前行があります。前行。五体投地10万回とか、それからまあ、ヴァジュラサットヴァのマントラ10万回とか、『虹の階梯』に書いてあるようないろんな前行があって。で、前行を終えた後に、本格的な修行に入るわけだけど、それもまあいろんな段階があって。
で、一般的に密教っていうのは4段階に分かれてるんだね。日本の密教、真言密教っていうのは、大日経と金剛頂経が中心なわけだけど、これは第2段階と第3段階のあたりです。で、チベット仏教のみが第4段階を持っている。これを無上ヨーガっていうんだね。無上っていうのは上がない。この上ないヨーガ。この無上ヨーガが二つに分かれるんです。それがまあ生起次第(しょうきしだい)とか生起次第(せいきしだい)って言われるものと、究竟次第って呼ばれるものですね。
で、この生起次第って呼ばれるものは、簡単にいうと、自分が神に変身する瞑想とか、そういうことをひたすらやるんだね。いろんなイメージの世界で、もう神の世界をガーッと作りあげてくような瞑想をたくさんやるんです。それが生起次第。
そして、その後に究竟次第が来る。究竟次第はそういう意味ではチベット仏教のシステムの中の一番最後の奥の奥なんだけど、これは言ってみれば、ある言い方をすれば、クンダリニー・ヨーガなんです。つまりその生命力と気道とかを利用したヨーガなんです。だからここで言ってるクンダリニー・ヨーガっていうのは、言い方を変えればチベット仏教の最後の究竟次第の説明をしてると言ってもいい。それはイコールと言っていい。チベット仏教も、今出ているいろんな本とかでは、その辺を知らないのか隠してるのか、曖昧なものが非常にある。すごくこう、ぼやけた書き方をよくしてる。もちろんそのやり方はいろいろあるけどね。
たとえばチベット仏教カギュ派の熱のヨーガ、さっき言ったトゥモってやつだね。熱のヨーガってやり方があって、これはすごく明確にクンダリニー・ヨーガのやり方を示している。これが代表的な究竟次第の修行法だね。その他にもいろんな究竟次第の修行法ってあるんだけど、なかなか意味が取りにくかったりするのが多い。いいですか。
まあ、ルンとか風っていうのは簡単にいうとエネルギーのことなんで、ルンのヨーガっていうのはエネルギーのヨーガのことだね。精妙なエネルギーの。それはクンダリニー・ヨーガに含まれる概念ですね。
ただもちろんチベット仏教には、それとはまた全然別の柱として、心だけを見つめた最高の修行がある。これがニンマ派でいうゾクチェン、カギュ派でいうマハームドラーですね。あるいはサキャ派とかではラムデっていうのがあるみたいだけど。これはもう心の奥底だけに、奥底っていうか心の本性だけに集中して、それで一気に悟ってしまうという技法がある。
チベット仏教っていうのはすごく、本質を大雑把に言うと、その二本柱と言っていいかもしれない。クンダリニー・ヨーガ的なエネルギーのシステムと、それから心の本性を直接悟る修行。その準備段階として、神に変身したりする瞑想がいろいろあります。で、さらにその準備段階として五体投地とかマントラとかいろんな修行があります。そういうシステムなんだね。
-
前の記事
「精神面と行法の両面から」 -
次の記事
心がすべて 2